
東和株式会社を率いる代表取締役の田中真樹氏は、化学系専門商社での経験を経て、水や空気を浄化する活性炭を主に扱う専門商社を立ち上げた。コロナショックという波乱の幕開けを乗り越え、現在は国産品の輸出支援やアップサイクル事業など、次々と新たな展開を見せている。自身が過酷な労働環境を経験したからこそ、社員には「残業ゼロ」のホワイトな環境を徹底する田中氏。環境にも人にも優しい経営を貫く同氏に、起業の経緯や今後の展望をうかがった。
インド国境付近で出会った少女の瞳が原点に
ーーまずは、起業の経緯から教えていただけますか。
田中真樹:
前職の化学系専門商社で、水や空気を綺麗にする際に必要な原料である活性炭の取り扱いを担当したことがきっかけです。当時、海外のサプライヤーから「日本で会社をつくりたいので代表になってほしい」と相談を受けていました。しかし、万が一事業がうまくいかなくなったときに、「とりあえず日本人を置いておけ」というような無責任な形になるのは避けたいと思ったのです。それなら、自分で責任を持って会社を立ち上げ、活性炭や環境改善に繋がる商材を自ら広げていきたいと、考えたのが一つのきっかけです。
決定打となったのは、インド国境付近への出張です。そこで、10歳くらいの少女が重そうな水瓶を頭に乗せて歩いているのを見かけました。車の中から彼女と偶然目が合ったとき、何とも言えない表情をしていたのです。私たちは水を綺麗にする原料を求めてここに来ているけれど、目の前には日々の水汲みで苦労している人たちがいる。せっかく環境によい商品に携わっているのだから、自分で責任を持ってこの事業をやっていきたい。そう強く思い、起業を決意しました。
ーー創業当初はご苦労もあったのでしょうか。
田中真樹:
まさにコロナ禍の真っ只中での船出でした。世界的な物流の遅れにより、海外に先払いでお金を支払っても、商品が日本に到着してお客様から代金をいただけるまでに数ヶ月かかることもあり、手元にキャッシュがない本当に苦しい時期を過ごすことになります。しかし、お客様や金融機関の方々をはじめ、たくさんの方々に助けていただき、なんとか乗り越えることができました。当時の感謝は今でも忘れません。
あらゆる活性炭を網羅する専門商社の強み
ーー貴社のメイン事業と、強みについて教えてください。
田中真樹:
私たちは主に、活性炭の原料を海外から輸入し、国内の加工会社やメーカー様に販売する専門商社です。仕入れ先は中国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、インド、スリランカなどから多岐にわたります。最終的には、官公庁が運営する浄水施設やゴミ処理施設、民間の工場などで環境を改善するために役立てられています。
弊社の最大の強みは、活性炭の原料を幅広く網羅している点です。特定の原料を指定していただく形だけでなく、「解決したい課題に合う最適なものが欲しい」といった用途ベースの要望に対しても、世界中のネットワークを駆使して最適なものを探し出し、提案することができます。有力なサプライヤーとの強いパイプがあるからこそ、お客様の細かなニーズにお応えできるのです。
ーー他に注力されている事業はありますか。
田中真樹:
現在注力しているのは国産品の海外輸出支援事業です。私たちが長年培ってきた貿易のノウハウを活かし、パートナー企業と協業しながら、地方の素晴らしい農作物やメーカーの商材を海外へ届けるお手伝いをしています。
たとえば、高い機能性を持つインナーウェアや、米粉を使った商品など、海外で需要が見込まれる日本の優れた品はたくさんあります。大手商社では扱いにくい規模の案件でも、私たちが伴走することで、生産者の方々の新たな挑戦をサポートしていきたいと考えています。
またアップサイクル事業にも取り組み始めています。食品会社などから排出される、本来なら価値が下がってしまった素材や食品残渣を集め、ペットフードの原料などに再利用するビジネスです。排出企業様に対し、本来廃棄されるはずの副産物を「価値ある資源」として再利用するためのコンサルティングやサポートを行い、環境負荷の軽減と新たな価値創造の両立を目指しています。
残業ゼロの「ホワイト企業」としての矜持

ーー社内の働き方について表彰を受けられたそうですが、どんな取り組みをしているのですか。
田中真樹:
ありがたいことに、本社のある千葉県から『千葉県優秀企業経営者表彰』に選んでいただきました。弊社の社員は基本的に残業をせず、定時で帰宅しています。また、業務で語学力が必要になるため、英語学習のサポートなども積極的に導入しています。
私は過去に、連続で長時間働くような過酷な労働環境の企業に勤めていた経験があります。だからこそ、自分の会社では絶対に社員に同じ思いをさせたくないと考えました。社員が心身ともに健康で、やりがいを持って働ける環境を整えることが、経営者の何よりの務めだと思うのです。
ーー最後に、今後の展望をお話いただけますか。
田中真樹:
お客様から「東和に任せれば間違いない」と頼られる存在であり続けたいです。商品を右から左へ流すだけでなく、私たちならではのプラスアルファの提案をしていく。そして、日本の生産者やメーカーさんに貢献し、日本を元気にする一助となれるよう、社員一同、これからも挑戦を続けていきます。
編集後記
田中氏の話からは、過去の過酷な経験を糧とし、自社の社員には最高の環境を提供するという強い信念が感じられた。インドでの原体験から生まれた環境への思いは、活性炭事業のみならず、アップサイクル事業という新たな芽を育てている。周囲への感謝を忘れず、誠実に商いと向き合う東和株式会社が、今後どのような事業の広がりを見せていくのか非常に楽しみだ。

田中真樹/1982年山口県生まれ。2005年大手総合人材サービス会社に入社。その後、大手医療機器メーカー系販売会社や化学系専門商社を経て、2021年、東和株式会社を設立。「未来のすべての生命のために」という企業理念のもと、環境関連商材の輸出入や日本が誇る国産品の海外輸出事業を通じて、持続可能な社会づくりに挑戦している。