※本ページ内の情報は2026年5月時点のものです。

広島県を拠点に、美容室をはじめ、飲食店や託児所など多角的な事業を展開するタカ・エンタープライズ有限会社。中学校卒業後に職を転々としていた代表取締役の小池隆司氏は、後輩との別れという出来事を機に美容の世界へ進む。独立後、多忙を極める中で辿り着いたのは「楽しい人生にしよう」というシンプルな理念だった。美容業界の新しい働き方を切り拓き、広島で福利厚生ナンバーワンを目指す小池氏。独自の視点で進める多角化経営と、スタッフの幸せを追求する組織づくりの核心に迫る。

後輩との別れを機に美容の世界へ 「石の上にも三年」で掴んだ独立

ーーまずは、美容師を目指した経緯を教えていただけますか。

小池隆司:
もともと美容師志望だったわけではありません。私は中学校を卒業して高校へ進みましたが、すぐに中退してしまったんです。20回ほど職を転々としました。ただ、中学生の頃にロックンロールが流行しており、友人のリーゼントをよくセットしてあげていたことが、今思えば原点だったのかもしれません。

決定的な転機は19歳の時です。美容師をしていた後輩が亡くなり、後日、彼が勤めていた美容室のオーナーから「あなたの話がよく出ていたから、お別れ会に来てくれ」と声をかけられました。当時、大工として働きながら将来に迷っていた私に、オーナーは「美容師をやってみないか」と誘ってくださったのです。この出来事が、私の美容師人生の始まりです。

ーーその後、独立を果たされるまでの道のりはどのようなものでしたか。

小池隆司:
最初は東京へ出て、ヘアメイクの仕事をしたいという夢がありました。しかし、オーナーから「まずは石の上にも三年だ」と諭されたのです。そこで「3年頑張り、一つ上の先輩を抜こう」と明確な目標を立てました。夜も休日も惜しまず練習に打ち込んだ結果、22歳で新店舗の店長に抜擢され、24歳の時にその店舗を買い取る形で独立を果たしました。当時は「ポルシェに乗る」といった分かりやすい夢が原動力になっていましたね。

「楽しい人生」に必要な5つの要素を満たすための組織づくり

ーー独立後、事業を拡大される中で、価値観に変化はありましたか。

小池隆司:
独立直後は非常に多忙で、ふと「自分は何のために仕事をしているのか」と考え込みました。その時、「楽しい人生には何が必要か」を突き詰めて考えたのです。行き着いた答えは、お金、時間、健康、やりがい、そして家族や恋人、仲間という人脈の5つでした。これらすべてが揃って初めて、楽しい人生と言えます。この気づきが、現在の「楽しい人生にしよう」という弊社の理念につながっています。

ーー美容室の枠を超えて、多角的な事業を展開されている理由をお聞かせください。

小池隆司:
理念にある「楽しい人生」を、お客様やスタッフにも実現してほしかったからです。たとえば2店舗目を出店した際、100坪ほどの物件を半分は美容室、もう半分は飲食店にし、中央に託児所を設けました。女性が出産後も気兼ねなく美容室へ通える環境を整備するためです。また、過去にはクラブや花屋を運営していた時期もありますが、これらはすべてスタッフの「やりたい」という声を形にしたものです。

現在は、それらの事業を希望するスタッフへ譲渡して独立を支援するなど、グループ内外で彼らの夢をサポートしています。さらに、自社製品のシャンプーやトリートメントの開発にも力を入れており、サロンの枠を超えた価値提供を目指しています。

広島で福利厚生ナンバーワンを目指し、スタッフの「やりがい」を最大化する

ーー人材育成や環境づくりにおいて、こだわっているポイントを教えていただけますか。

小池隆司:
会社の目標として、まずは「広島で福利厚生ナンバーワン」になることを掲げています。時間とお金、やりがいを両立させるため、弊社では営業時間内に練習や勉強ができる制度を導入し、プライベートも確保できる環境を整えています。

また、「売上高が上がれば、自身の人生も楽しくなる」という本質をスタッフには伝えています。売上高が上がることは支持してくださるお客様が増えることであり、それは美容師にとって最大のやりがいに直結するからです。結果として、現在弊社のリピート率は90%を超えています。

ーー今後の展望をお聞かせください。

小池隆司:
弊社では、数値目標よりも「スタッフが楽しめるかどうか」を最も重視しています。スタッフが「自分の店を出したい」と希望すれば、その夢を全力で支援します。現在は5年後の事業承継を見据え、後継者の育成に注力しています。店長たちが将来経営を担えるよう、外部講師を招いた勉強会を毎月実施しており、彼らが自立した段階で社長の座を次世代へ譲る計画です。ただ、現場でハサミを握る仕事は心から好きなので、長年担当させていただいているお客様のカットは、生涯続けていく所存です。

編集後記

多角的な事業展開や、社員の自主性を尊重する社風の根底には、小池氏自身の経験から導き出された深い人間愛があった。美容業界の慣習にとらわれず、常に新しい価値と働き方を創造し続ける同社の取り組みは、広島の美容業界に新たな風を吹き込んでいくだろう。

小池隆司/1966年大阪生まれ、広島県理美容専門学校卒。株式会社サロンド・ヒロへ入社し、5年間修行期間後、1990年に独立。翌1991年に法人を設立。メーカー講師・東京コレクション、パリコレクション等々でヘアーメイクを担当。1999年より店舗を展開し、現在は飲食店含め10店舗まで拡大。今年創立35周年。