※本ページ内の情報は2026年5月時点のものです。

世界的なCX(顧客体験)プラットフォームを提供する株式会社Zendesk。日本法人のトップとして同社を牽引する代表執行役社長の森太郎氏は、就職氷河期の厳しい時代を泥臭く生き抜き、10年間で1000冊の本を読破し、それを自身の血肉とすることで、ビジネスの確固たる基盤を築き上げた。スタートアップの「0から1」の立ち上げから、大企業での「10から100」への拡大まで、あらゆるビジネスフェーズを経験してきた森氏。就任後に注力した組織づくりや、AIと人が協働して社会の課題を解決する未来図について話を聞いた。

泥臭い原点と「0から100まで」を知る強み

ーーまずは、ご自身のキャリアの原点についてお聞かせいただけますか。

森太郎:
就職活動をしていた時代は就職氷河期にあたり、非常に厳しい環境でした。私自身も苦労を重ねましたが、なんとかIT業界のシステムエンジニアとしてキャリアをスタートさせます。その後、20代半ばごろから始めたのが読書です。周りの優れた先輩の勧めでビジネス書を読み始め、年間100冊、それを10年間続けて約1000冊の本を読破しました。紙の本を読みながら自分と対話する時間を持ち、思考を深める。その積み重ねで培われた思想や知識が、私のビジネスの確固たる基盤となっています。

ーーそこからはどのようなご経験を積まれたのでしょうか。

森太郎:
その後、システムエンジニアから営業へとキャリアチェンジし、外資系企業などで実績を積みました。その後、スタートアップの立ち上げフェーズである「0から1」にも創業メンバーとして参画しました。その後、事業が10、100と拡大していくあらゆるフェーズを経験できたことは大きな財産です。ITからDX、そしてAIへと時代のトレンドが移り変わっても顧客目線、ビジネス目線という仕事の本質は変わりません。お客様のビジネスがいかに変革するかを考え、伴走して価値を提供し続けること。今もこのブレない信念を大切にしています。

「働きがいのある会社」への進化と選ばれる理由

ーートップに就任されてから、どのようなことに注力されてきましたか。

森太郎:
私が就任した当時のZendeskは、確立されたビジネスをさらに大きく飛躍させる「10から100」の成長フェーズの過程でした。そこでまず着手したのが、社内のチームビルディングです。従業員が増加していく中で、全員がワンチームとして機能するような環境づくりを進めていきました。具体的には、心理的安全性やオープンなフィードバックカルチャーの定着を図りつつ、従業員エンゲージメントを高める活動にも注力しています。こうした取り組みの結果、外部機関からも「働きがいのある会社」としての認証を取得でき、強い組織の土台ができたと感じています。

ーー貴社が国内外でここまで支持されている理由を教えてください。

森太郎:
グローバルにおいて、日本は最優先マーケットの一つであり、米国以外で国内にデータセンターが2つあるのは日本だけという異例の投資を受けています。

その戦略的な投資も背景に、弊社のプラットフォームは、大企業から中堅中小まで、あらゆる業種で広く受け入れられています。他社との大きな違いは、多様な顧客接点に対応できる機能面に加え、画面の使いやすさや立ち上がりの速さです。こうした現場のユーザーに寄り添った使い勝手のよさが、日本市場でも高く評価されています。

AIとの協働でわからないことを解決する社会インフラへ

ーー今後のビジネス展開と、目指す未来像についてお話いただけますか。

森太郎:
弊社は毎年2桁成長を継続させるという目標を掲げており、日本市場でのビジネスをさらに加速させるため、現在3つのテーマに注力しています。

1つ目は、新規市場の力強い開拓です。具体的には通信や公共、金融といった重要インフラ領域への展開を強化していく考えで、旧来のオンプレミス型コールセンターから、AIを搭載したクラウド型コンタクトセンター(CCaaS)への移行を推進していきます。

2つ目は、「ワンチーム」の組織文化をより深めていくこと。従業員のエンゲージメントをさらに高めて、シリコンバレーならではの自由な気風を日本法人にも取り入れていきたいんです。そうすることで、事業拡大を力強く牽引できる強固な組織体制をつくっていきます。

そして3つ目が、AIによる顧客体験の変革です。現在3割ほどであるAIを活用した自動解決率を、将来的には8割へと引き上げることを目指しています。これは単なる問い合わせ対応の自動化にはとどまりません。AIが自律的に問い合わせを解決に導く「エージェンティックAI」の領域まで踏み込んでいくつもりです。

ーーAIへの期待値は、市場全体でも高まっているのですか。

森太郎:
AIへの期待は非常に高く、弊社の調査でもその傾向は明らかです。具体的には、日本のCXリーダーの71%が、過去1年のカスタマーサービス関連のAI投資に対して「プラスの投資対効果があった」と実感していることが判明しています。また、消費者側のデータを見ても、同じく71%が「AIの導入による、24時間365日利用可能なカスタマーサービス」に期待を寄せています。

これから5年後、10年後の未来では、人とAIが高度に協働することが当たり前になっていくでしょう。消費者や従業員が抱えるモヤモヤや課題を気持ちよく解決し、すべての人が快適な体験を得られる社会インフラとなること。それが、CX業界のリーディングカンパニーとしてZendeskが目指す、ワクワクする未来の形です。

編集後記

Zendeskが牽引するAI時代のカスタマーサポート変革。最先端のテクノロジーを語る森太郎氏。その根底にあるのは「10年間で1000冊を読破した」という泥臭くも確かな人間力だ。どんなに技術が進化しても、最終的に価値を生み出すのは顧客に寄り添う「人」の力である。グローバル企業ならではの革新性と、泥臭い原点を持つリーダーの信念が見事に融合した同社。日本のCX市場にどのような変革をもたらすのか。その飛躍から目が離せない。

森太郎/1972年石川県金沢市出身。立命館大学卒業。新卒で株式会社日本総合研究所に入社後、日本オラクル株式会社へ入社。その後2011年にサクセスファクターズジャパン株式会社(現・SAPジャパン株式会社)に入社し、SAPによる買収を経て日本事業を牽引。2025年7月、株式会社Zendeskの代表執行役社長に就任。社会貢献活動にも注力している。