※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

「日本の包装資材の技術は世界一」。そう力強く語るのは、和洋菓子のパッケージング事業を展開するANZEN・PAX株式会社代表取締役の尾関勇氏だ。広告代理店を経て家業を継ぎ、単なる「包む」役割を超え、商品のリブランディングや海外展開まで支援している。なぜ同社は老舗から小規模店まで多様な菓子店から絶大な信頼を集めるのか。あえてフランスに法人を設立し中小企業の海外進出を後押しする理由とは。そこには顧客に寄り添い、共に商売をつくり上げる熱い思いがあった。

広告代理店時代に学んだ「企画する楽しさ」と家業への思い

ーーまずは、貴社に入られるまでの経緯を教えていただけますか。

尾関勇:
もともと高校生の時から、将来は家業を継ぐと決めていました。しかし最初から家業に入るのではなく、さまざまな業種をマーケティングの視点から経験したいと思い、広告代理店に入社したのです。当時はバブル期の終わり頃で、自分なりに徹底して企画書をつくるのがとても楽しく、非常によい経験をさせてもらいました。商品のプロモーションを一から考えたり、現場の売り場でどう反応があるかを見たりする仕事は、今の事業にも大きくつながっています。

ーーそこから入社されたきっかけはなんだったのでしょうか。

尾関勇:
バブル崩壊後の大変な時期でしたが、家業が非常に困っている状況だったので、入社を決意しました。当時は震災や金融不安も重なり、まさに混沌としていた時期です。

入社後、全国各地のお客様であるお菓子屋さんを回って驚いたのは、お菓子屋さんがいかに地域に根ざしているかということでした。町の角の、一番良い場所にお菓子屋さんがあって、土地の文化を代弁している。グローバル化が叫ばれていた時代でしたが、私はむしろ、この地域に根ざした「ローカルを代表するいい産業」に、大きな可能性と素晴らしさを感じました。

菓子に特化し「内から外まで」をトータルプロデュース

ーー現在の事業内容と貴社ならではの強みについて教えてください。

尾関勇:
私たちは、和菓子や洋菓子のパッケージングに特化しています。特に和菓子のパッケージに関するノウハウについては、日本で一番持っていると自負しています。お菓子を包む内装材から、そこに被せる箱、そして手提げ袋まで、「内から外まで」をトータルに提案できるのが弊社の最大の強みです。

ーーどのような流れでパッケージ提案を行っているのでしょうか。

尾関勇:
お菓子を一つずつ綺麗に包み、品質を保持しながら、持った時に崩れないように設計するには非常に高度な技術が必要です。弊社では、お客様の商品のストーリーやバックグラウンドをお聞きし、それに合ったオリジナルのパッケージをオーダーメイドでゼロから形にしていきます。また、つくった後の在庫管理も得意としており、お客様の製造の手配状況を見ながら、在庫を切らさないようにデリバリーも含めてサポートしています。

ーー商品の売り方やリブランディングに関するアドバイスもされているとうかがいましたが、詳細をお聞かせください。

尾関勇:
ただ包むだけでなく、その商品をどうやったら売れるのか、リブランディングや商品のポジショニングのアドバイスを行っています。たとえば、「うちの自慢はどら焼きだから」とおっしゃるお客様に対しても、他社との差別化が難しければ、別の商品を主力として打ち出すよう提案することもあります。商品の見せ方をリポジショニングすることは、とても重要です。

売上高よりも客数やリピート率を重視し顧客に徹底して寄り添う姿勢

ーーコンサルティングではどのような点を重視し、企業を支援されているのでしょうか。

尾関勇:
六本木ヒルズにある菓子セレクトショップ「菓子の記録帖」は、私にとってマーケティングの実験場でもあります。そこで得た知見を支援に活かし、具体的には、売上高よりも「客数・リピート率・回転数」を重視した、データに基づくアドバイスを行ってきました。さらに月に一度の企業訪問を通じて、データ分析にとどまらず社員教育や組織の対話の場づくりにも踏み込み、現場スタッフが気持ちを込めて商品をつくれる環境づくりまで総合的にサポートしています。

ーー今後の展望についてお話いただけますか。

尾関勇:
日本の包装資材の技術は、圧倒的に世界一です。これは、私がどこへ行っても確信していることです。そして、和菓子をはじめとする日本の食文化も、世界トップクラスの評価を受けています。その両者をつなぐために、弊社はフランスに法人を設立しました。ヨーロッパでは日本のコンテンツへのリスペクトが非常に高いにも関わらず、パッケージングや輸出のノウハウがなく、海外進出に踏み出せないお菓子屋さんがたくさんいるのです。

そこで弊社では、EUの厳しい食品表記規制の調査から、物流の手配、現地の倉庫管理まで、フランス法人を拠点にして海外進出を志す日本企業を積極的に支援しています。素晴らしい日本の食文化と世界一の包装資材の技術をセットにして、世界中の人々に届けるための「懸け橋」として、これからも支援を全うしていきたいと考えています。

編集後記

菓子産業の黒子として存在しながらも、「日本の包装資材の技術は世界一である」と自負する尾関氏。その言葉からは、パッケージ産業への深い誇りと愛情が伝わってきた。尾関氏の強みは、広告代理店で培ったマーケティング思考と、自ら店舗を運営する実践力にある。単なる資材調達にとどまらず、商品のポジショニングから海外展開まで、顧客と伴走して商売をつくり上げる姿勢は、もはやコンサルティングファームのようだ。世界へ羽ばたく日本の食文化を、その最前線で支え、彩りを与える。ANZEN・PAX株式会社の確かな技術と情熱が、和菓子の未来を世界へと広げていくに違いない。今後のさらなる飛躍が楽しみだ。

尾関勇/1966年生まれ。1989年立教大学社会学部卒。株式会社I&S(現I&SBBDO)に入社。1992年12月、株式会社アンゼン・パックス入社、2010年同社代表取締役社長に就任。菓子業界の活動でも数社事業を立ち上げてきた。