
外資系コンサルティング会社や前職のIT企業で、プラットフォーム事業やマーケティングの責任者を務めてきた高山俊治氏。同氏が率いる株式会社スイッチメディアは、かつてデータ提供会社という立ち位置だったが、現在は企業のマーケティングの内製化を支援するクラウドサービス企業へと変貌を遂げている。広告業界の不透明な情報構造を紐解き、企業に透明性のあるデータをもたらす軌跡、2026年3月にリリースした新サービス「In-House Drive(インハウスドライブ)」の全貌。そして同社が誇る「人」と「組織文化」について迫る。
データ提供会社からの脱却 購買と視聴データの融合がもたらした転換
ーー現在の事業を牽引する、その根底にあるご自身の原体験について教えてください。
高山俊治:
前職のグリー株式会社でマーケティング責任者を務めていた際、月に数億円規模のテレビCMを出稿していました。しかし、広告代理店とのやり取りの中で、私の知識不足やリテラシー不足もあり、提示された明細や枠の価格が本当に適正なのかを判断できない、圧倒的な情報の非対称性を痛感したのです。この「不透明なブラックボックスを解消し、広告主が適正な価値を把握できる環境をつくりたい」という思いが、今の事業の出発点となっています。
ーーそこから現在の事業モデルへ至るまでの大きな転換期は何だったのでしょうか。
高山俊治:
2020年頃から、テレビ視聴データを提供するだけでなく、CMを打つことで実際にどれだけ売上高が上がるのかを検証し、効果を可視化するSaaSへとビジネスをシフトしました。最大の転機は株式会社インテージとの資本業務提携です。同社の購買データと弊社のテレビ視聴データをかけ合わせることで、売上高への波及効果の可視化や統合的なデータ基盤の開発が可能になりました。
広告主の内製化を支える新サービス「In-House Drive」の狙い

ーー現在、事業として最も注力されているサービスについて教えてください。
高山俊治:
2026年3月に発表した「In-House Drive」という、企業のデジタル広告運用の内製化(インハウス化)を支援する新サービスに最も力を入れています。生成AIの進展などにより、デジタル広告を自社で運用するインハウス化が加速しており、日本でもGoogleのP-MAXのようなツールの普及によってその動きが広まっています。
ーーあえて外部の代理店に頼らず、企業の内製化を推進する最大のメリットは何でしょうか。
高山俊治:
ブラックボックス化を解消し、自社にデータやノウハウを蓄積できることです。また、コスト構造を大きく変えられる点もメリットです。代理店に依頼する場合、出稿金額に比例して手数料が増加するマージン型の料金体系が一般的ですが、自社で運用体制を構築すれば、これを固定費化し、変動費を大幅に削減できます。さらに、弊社のコンサルティングとデータ基盤の整備によって運用を透明化することで、納得感のあるマーケティング投資が可能になります。
ただし、すべてを自社で完結させようとするのは非常に大変で、リソースやノウハウの不足に悩む企業が多いのが実情です。そのため、外部を完全に排除するのではなく、弊社が伴走して実務やデータ基盤の整備をサポートする「ハイブリッド型」の支援を行っています。
最強の武器はシステム以上に「人」 成長を加速させる組織文化
ーー高度なデータ分析基盤を持つ貴社において、事業を支える最大の強みは何だとお考えですか。
高山俊治:
私たちの最大の武器は、お客様の課題に真摯に向き合う「人」です。単なる自社商品の説明ではなく、お客様の課題を汲み取り、課題解決のために我々のソリューションを組み合わせてフルオーダーメイドで提案を行っています。難易度は高いですが、それに向き合える人材が揃っていることが強みです。
ーー多様な専門人材が同じ方向を向くために、組織としてどのような仕組みを取り入れていますか。
高山俊治:
ベースとして「One Team, Respect for All」という共通のバリューを掲げ、言葉だけでなく組織の文化としてしっかり根付くよう継続的に発信しています。当社の事業は高度な専門人材が集まっている分、職種によって視点やアプローチが異なるのは当然のことです。その違いを強みに変えるため、営業、プロダクト企画・データサイエンス、エンジニアという事業の柱となる3部門のマネージャー以上が集まる「三部定例」を隔週で実施しています。お互いの課題や依頼事項を共有し、部門を超えた相互理解を深める仕組みを構築しています。
若き幹部候補の推進力 株式公開と企業買収で見据える次なる展望
ーー採用活動において工夫されていることはありますか。
高山俊治:
前職のグリー時代、私と同時期に入社した新卒社員が、短期間で子会社の社長や事業統括を任され、中核メンバーとして活躍していく姿を目の当たりにしました。年齢やこれまでのキャリアに関係なく、優秀な若手と同じ目線で戦友として切磋琢磨しながら働けたことは私にとって非常に良い経験でした。この時の原体験を現在の組織づくりにも活かしており、優秀な新卒人材を将来の幹部候補として採用し、若いうちから大きな裁量をもって挑戦できる環境を用意しています。
ーー最後に、会社としての今後の展望をお聞かせください。
高山俊治:
お客様にとって、広告代理店とは異なる客観的な立ち位置から、実務まで含めて真っ先に相談していただける伴走型のビジネスパートナーになることが私たちの目標です。その実現に向けた重要なステップとしてIPOを見据えており、上場後はM&Aを通じてAIや広告領域のソリューションを持つ企業を積極的にグループに迎え入れたいと考えています。これにより、私たちの顧客のマーケティング課題に対して提供できる価値をさらに広げていく予定です。
編集後記
今回最も印象的だったのは、同氏が掲げる「透明性」への強い意志だ。広告業界の仕組みを不透明な情報構造と捉え、それをデータと技術で紐解こうとする姿勢は一貫して論理的である。その根底には、広告主の不利益を解消したいという熱い思いを感じた。また、最新のクラウドサービスを武器にしながらも、「最大の強みは『人』である」と言い切るバランス感覚も同社の魅力だろう。合理的な戦略と地道に顧客に寄り添う組織文化。この両輪があるからこそ、同社は急成長を遂げているのだと確信した。2026年の「In-House Drive」リリースを経て、広告の在り方をどう変えていくのか。同社のさらなる躍進が楽しみだ。

高山俊治/大阪大学大学院修了後、外資系コンサルティング会社に入社。 戦略コンサルタントとして9年間従事し、事業戦略、新規事業立上げ等をプロジェクトマネージャーとして推進。 2012年グリー株式会社に入社し、プラットフォーム部長、アナリシス部長、マーケティング部長等を歴任。その後、事業部長として社内新規事業の立上げを経験。2020年当社入社。2021年6月より現職に就任。