※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

日本の労働力不足や高齢化が深刻化する中、ロボットの力で社会課題の解決に挑むugo株式会社。同社は「社会実装ファースト」を掲げ、警備や点検業務を中心に業務DXロボットの普及を牽引している。代表取締役CEOの松井健氏は、これまで高額だったロボット導入のハードルをサブスクリプションモデルという逆転の発想で打破し、人とロボット、そしてAIが融合する未来を描く。日本発の新しいロボット産業を創出すべく変革を続ける松井氏に、これまでの歩みと今後の展望をうかがった。

現場の課題解決を最優先する「社会実装ファースト」の精神

ーーまずは、起業された経緯を教えていただけますか。

松井健:
大学でソフトウェア工学を学んだ後、システムインテグレーター(SIer)に就職しました。その後、先輩から誘われて1社目のITベンチャーを共同創業し、2社目では約9年間にわたりIoTの受託開発に取り組みました。IoTを通してあらゆるモノがスマートになっていくのを実感する一方で、労働力が減少していくこれからの日本には、モノとモノをつなぐ「動くIoT」としてのロボットが必要不可欠になると考えたのです。そこで、2018年に3回目の起業として弊社を立ち上げました。

ーー事業を展開する上で、最も大切にしていることは何でしょうか。

松井健:
「社会実装ファースト」という考え方です。私自身エンジニアですが、技術は人の役に立ち、社会課題の解決につながってこそ初めて意味があると考えています。そのため、創業当初から現場に足を運び、現場の人と一緒に考える姿勢を貫いてきました。私自身も夜中の警備現場に同行し、生の声を聞きながら、ロボットがどのように業務改善へ貢献できるかを探りました。技術の目新しさにとらわれず、現場で確実に役立つ形へと落とし込むことを何よりも重視しています。

逆転の発想から生まれた「サブスクリプション型」のプライシング

ーーロボットの導入は高額なイメージがありますが、どのようにして普及を叶えたのですか。

松井健:
従来のロボットは機体だけで1台数千万円かかり、さらに自社の業務に合わせてSIerにカスタマイズを依頼すると開発費が何倍にも膨れ上がり、費用対効果が合わないという大きな課題がありました。そこで弊社はこの課題を解決するため、現場で本当に必要な機能に絞り込んだ機体を開発。専門知識がなくても、お客様自身が「ノーコード」で簡単に業務に合わせてカスタマイズができる仕組みを構築したのです。これを売り切りではなく、月額制のサブスクリプションモデル「RaaS(Robot as a Service)」として提供することで、導入時の初期費用を劇的に抑えることに成功しました。

これまでコスト面で断念していた現場でも、人件費の一部を充てるような感覚で、手軽にロボットを導入いただける環境を整えています。たとえば、月給40万円の警備員が行う業務の半分をロボットが代替できるのであれば、月額20万円前後であれば予算として成り立つはずです。

ーー技術的な面での強みやAIとの連携について教えてください。

松井健:
近年は、ロボット向けのAIエージェント開発に力を入れています。社会でロボットが当たり前のように使われるようになると、人間が何台ものロボットを同時に管理するのは困難になるでしょう。そこで、AIエージェントにロボットの稼働状態を分析させ、より稼働率が上がる最適なオペレーションを人間に提案してもらう仕組みをつくっているところです。

また、ロボットが物理世界を理解して自律的に行動できるようになる「フィジカルAI」の活用も進めてきました。現場のデータを収集してAIを学習させ、その賢くなったAIを現場にフィードバックすることでロボットの自律性をさらに高めていく方針です。人間とロボット、そしてAIを「融合」させ、これら三者が三位一体となって進化していくエコシステムをつくること。それこそが、社名である「ugo(ユーゴー)」の由来となりました。

「日本発の新しいロボット産業」を共につくる仲間へ

ーー今後、どのような人材を求めていますか。

松井健:
今後のさらなる事業拡大に向けて、経営陣候補やソフトウェアエンジニア、ソリューション営業など、さまざまなポジションで優秀な方を募集しています。スタートアップという環境柄、状況は目まぐるしく変化していく環境です。そのため、指示を待つ受け身の姿勢ではなく、自ら課題を発見して行動・実装できる方、そして何よりその変化を楽しめる方と一緒に働きたいと考えています。

特に営業面においては、全く新しいソリューションをお客様と一緒に考えながら提案していくという、非常に難易度が高く、やりがいのあるフェーズと言えるでしょう。新しい市場を自らの手で切り拓き、事業を広げていく経験は、ビジネスパーソンとしての大きな成長につながるはずです。

ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。

松井健:
かつて日本は産業用ロボット分野で世界シェアを牽引しましたが、これからのサービスロボット市場はそれを遥かに凌ぐ規模に成長します。しかし、技術を現場で叩き上げ、真の社会実装を実現する取り組みはまだ始まったばかりです。これは弊社一社だけで成し遂げられるものではありません。日本全体で積極的にロボットを活用して現場のノウハウを蓄積し、そのパッケージを海外へ輸出していく。そんな「日本発の新しいロボット産業」を、政府や多様な企業と連携しながら私たちが力強く引っ張っていきたいと考えています。

編集後記

「技術は社会で役に立ってこそ意味がある」と語る松井氏の言葉からは、日本の深刻な社会課題解決に対する強い使命感がにじみ出ていた。高価でハードルが高かったロボットを、現場視点の逆算プライシングと月額制のRaaSモデルによって身近な存在へと変えた実行力は圧倒的だ。人とロボット、そしてAIが三位一体となって進化するシステムは、まさに次世代の社会基盤と言える。日本発の新たなロボット産業を牽引するugo株式会社のこれからの飛躍が、非常に楽しみである。

松井健/2006年よりIT・IoT分野で複数の企業を創業し、スマホアプリやIoTデバイス開発・量産を経験。その後、2018年に3回目の起業としてugo株式会社を設立。AIロボットによる警備やインフラ点検業務のDXを推進。ロボット大賞やインフラメンテナンス大賞 総務大臣賞を受賞し、経済産業省の「J-Startup」にも選定され、日本のロボティクス市場を牽引。