
神奈川県を拠点に国産フルーツを使用したゼリーなどの企画・販売を手がける株式会社ナチュレ。大曽根一成氏は、実家である漬物製造業の丸イ食品株式会社などを経て、2013年に同社を創業した。フルーツ加工品の販売会社としてスタートしたが、「湘南ゴールド」との出会いを機に、地産地消、国産フルーツゼリーの販売へ舵を切った。そして、コロナ禍を製品開発の研究期間と捉え、主力商品「グミ」を生み出した。手軽さだけでなく店舗とのつながりや商品との出会いを大切にする独自の信念を持ち、いかなる環境下でも生き残れる強い企業基盤づくりに奔走する大曽根氏に、歩みと未来をうかがった。
人と人のつながりを原点に 販売会社としてのスタート
ーーまずは、創業までのご経歴を教えていただけますか。
大曽根一成:
私は実家が漬物製造業の丸イ食品なのですが、高校卒業後はオーストラリアの学校へ進学しました。帰国後、父の知り合いの梅干し屋さんで3年間勉強させていただき、その後、実家の丸イ食品に戻りました。そして2013年に、株式会社ナチュレを立ち上げたのが当社の始まりです。
ーーそこからどのように現在の事業へと展開していったのでしょうか。
大曽根一成:
創業当初は、海外産のパイナップルなどのフルーツ加工品を販売していました。転機となったのは、神奈川県産のフルーツ「湘南ゴールド」との出会いです。「これでフルーツのゼリーをつくってみませんか」とお声がけいただいたことを機に、地元のフルーツを扱うようになりました。ちょうどその頃、「地産地消」という言葉が強くなってきた時期とも重なり、国産フルーツを使ったゼリーの販売が弊社の基盤となりました。現在では、国産のフルーツしか取り扱っていません。

季節を問わない主力商品「グミ」の誕生とコロナ禍の試練
ーーグミの開発にも注力されているそうですが、どのような背景があったのでしょうか。
大曽根一成:
ゼリーは暑い時期によく売れる半面、寒い時期には売り場から減ってしまいます。真夏に鍋を食べないのと同じです。そこで、学生時代をオーストラリアで過ごした経験から、「年中暑い国に売ればいい」とひらめき、海外への売り込みを始めました。
それと並行して、季節を問わず売れる新商品として2018年頃からグミの開発を進めていたのですが、いざ本格的に販売しようとした矢先に、新型コロナウイルスが流行してしまったのです。
ーー厳しい時期だったと思いますが、どのように乗り越えられたのですか。
大曽根一成:
人の動きは止まりましたが、逆にその期間を製品開発の研究期間と捉えました。一つひとつ検証を重ねながら、じっくりと準備を進めました。
また、神奈川県の支援による紹介で、海外拠点とオンラインで情報交換を行うこともできました。特にアメリカのお客様などで大きな注文をいただくことができ、大変助けられました。時間があったからこそ、じっくりと製品の検証や準備に注力できたのだと思います。その結果、今ではグミが売上高全体の50%ほどを占める主力商品へと成長しました。

店舗での出会いと ファンを裏切らない味へのこだわり
ーー販売において、どのようなことを大切にされていますか。
大曽根一成:
お客様が実際にお店に足を運び、商品に出会う体験をとても大切にしています。たとえば、わざわざ神奈川に来て弊社のゼリーを美味しいと感じてくれた方がいるとします。そうしたお客様には、ぜひもう一度お店に足を運んでいただきたいのです。大手メーカーの商品ならどこでも買える利便性が大切だと思いますが、私たちは中小企業だからこそ、商品を置いてくださる小売店様との関係性を重んじています。ネット上の情報だけでなく、実際にお店で見て、手に取って、「このお店に行ってよかった」と思っていただけるような出会いを提供していきたいと考えています。
ーー味や商品へのこだわりについてはいかがでしょうか。
大曽根一成:
実は過去に、「美味しくない」という厳しいご意見をいただいたことがあります。正直ショックでしたが、同時に「味の好みは人それぞれなんだ」と改めて気づかされました。
厳しいお声も真摯に受け止めつつ、一方で私たちが一番大切にすべきなのは、今この味を「美味しい」と支持してくださるお客様です。その方々の期待を脇に置いて、一部のご意見に合わせて安易に味を変えてしまうことは、今応援してくれているファンの方々に対して誠実ではありません。「美味しいと言ってくれる人を裏切りたくない」。それが、私の強い信念です。
自社工場の新設と産学連携変化に強いレジリエンスの追求
ーー今後の新たな挑戦について教えていただけますか。
大曽根一成:
現在新しい自社工場を建設しており2026年の7月末を目安に完成し、9月から10月頃にはゼリーとグミの製造ラインを稼働させる予定です。これからの時代はお客様が口にするまで安心できる「ものづくり」が最も大切です。そのため、さらなる品質向上と生産体制の強化を図っています。
また、女子短期大学の学生たちと産学連携を結びました。秋口には彼女たちのアイデアを取り入れた新商品を発売する予定です。私自身はSNSのセンスがあまりないのですが、だからこそ産学連携を通じて、若い感性を取り入れたいです。学生たちがTikTokなどで発信してくれることにも大きく期待しています。私の知らない価値観を受け入れ、彼女たちの力を借りながら成長していきたいです。
ーー最後に、今後の展望をお話いただけますか。
大曽根一成:
特定の市場に依存しない、強い企業基盤を構築したいと考えています。コロナ禍で実感したように、スーパーが好調でも飲食店が厳しいなど、状況は常に変化するからです。
そのため、現在は香港やシンガポールなどのアジアやアメリカへの海外展開も進めていますが、海外市場での売上高を年商の20%にしていきたいと考えています。「何があっても生き残れる」よう、国内の多様な販路も開拓していくつもりです。まずは売上高5億円を目標に、一歩一歩、確実に成長していきたいと考えています。
編集後記
コロナ禍という未曾有の危機を製品開発の好機と捉え、主力商品であるグミを生み出した大曽根一成氏。手軽さだけでなく、店舗での商品との出会いや小売店とのリアルなつながりを重んじる姿勢には、自社の利益だけでなく関わる全ての人を大切にする商売の信念が滲んでいた。自社工場の新設や若い世代とのコラボレーションを通じ、特定の市場に依存せず、どんな環境でも生き残れる強い企業へと歩みを進める株式会社ナチュレの未来が楽しみだ。

大曽根一成/1979年、神奈川県小田原市生まれ。高知明徳義塾中高等学校を卒業。その後、オーストラリアのブリスベンへ留学し、ケリービジネス学校を卒業。株式会社ウメタ、丸イ食品株式会社を経て、2013年株式会社ナチュレを創業し、代表取締役社長に就任。