※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

AIの台頭により、IT開発の常識は根底から覆された。そう語る歌川英之氏は、元製造業向けシステム開発会社のプロジェクトマネージャーとして、多様なシステム開発を牽引してきた経歴を持つ。しかし彼は、AIの波を肌で感じて独立を決意し、2024年にBS Code株式会社の創業メンバーとして新たな道を歩み始めた。同社は現在、スマートグラスを活用し、介護や農業といった現場が抱える深刻な人手不足や技術継承の課題解決に挑んでいる。特別な知識がなくても、テクノロジーの力で誰もがベテランのノウハウを活用できる社会へ。徹底した現場主義と圧倒的な開発スピードで突き進む同社の軌跡と今後の展開に迫った。

AIの波を肌で感じ管理側から「つくる側」へ

ーー貴社を創業した経緯を教えてください。

歌川英之:
自らAIを活用して新しいものをつくり、社会に価値を提供したいと考えたからです。前職ではプロジェクトマネージャーとして、主に進行や人員の管理を担っていました。転機となったのは、AI技術が台頭し始めた頃に研究開発に関わったことです。AIがコーディングなどを支援してくれるようになり、これまで十数人を要した規模の開発が少人数でも可能になりました。一人で生み出せる価値の範囲が劇的に広がるのを目の当たりにしたことで、管理側に留まるべきではないと決意したのです。

ーーその気づきから、どのように起業へとつながったのですか。

歌川英之:
AIを活用して社会に新しいものを提供したいという、同じ志を持つ仲間と出会ったことが契機です。現在の代表である中内と、CTOの横治と意気投合し、2024年10月に4名のメンバーで会社を立ち上げました。当初はAIを用いたシステム開発から事業を開始し、その後、スマートグラスの技術が実用段階に入ってきたことを見据え、現在の主力事業へ舵を切りました。

「使われなければ意味がない」 徹底した現場主義と爆速の開発

ーー現在の主力事業であるスマートグラスの活用背景は何でしょうか。

歌川英之:
私たちは音声認識AIを搭載し、介護や農業の現場へ向けたスマートグラスを提供しています。装着して話しかけるだけで記録作業が完了するため、両手を塞がずに業務を効率化できることが特徴です。これらの業界に注力している背景には、人口減少に伴う深刻な人手不足と、スタッフの高齢化という課題があります。

ーー製品開発において、大切にしている姿勢を教えてください。

歌川英之:
できない理由を探すのではなく、まずはやってみるという姿勢です。代表の中内は、保守に走らずリスクをとって挑戦する圧倒的な行動力を持っています。最初から完璧なものを目指すのではなく、まずはつくって現場に出し、課題があれば直すという開発手法をとっているのです。

また、CTOの横治は「使われなければ意味がない」という強い信念の持ち主です。実際に顧客の現場へ足を運び、試していただきながら意見を吸い上げる超・現場主義を貫いています。たとえば、展示会で操作が難しいという声を聞いた直後に議論を重ね、翌日にはAIがサポートする新機能を実装して提供したこともありました。

ベテランの「暗黙知」をデジタル化しあらゆる産業へ

ーー今後の事業展開として、どのような目標を掲げていますか。

歌川英之:
私たちが本当に解決したいのは、ベテランの方々が持つ暗黙知やノウハウが失われていく問題です。直近の目標は作業の効率化ですが、最終的にはスマートグラスなどを通じて熟練者の視点や判断基準をデータ化したいと考えています。蓄積したデータをAIが若手や外国人スタッフへ提供し、業務を支援する仕組みです。技術開発のコアとして、現在はその研究開発に非常に力を入れています。

ーーその技術は、他業界への応用も可能なのでしょうか。

歌川英之:
可能です。たとえば、建築や製造業など、目視判断や属人的な知見が求められる業界との親和性は非常に高いと考えています。まずは介護や農業で実績を構築し、そこから得た技術やノウハウを応用。あらゆる異業種へと横展開していくことを目指しています。

未経験でも活躍できる時代 テクノロジーを駆使する組織

ーー今後の成長に向けて、求める人材像を教えてください。

歌川英之:
AIを使いこなし、顧客の課題解決に熱意を持てる人ですね。実際に弊社には、接客業出身でIT未経験のスタッフが在籍しています。AIを徹底的に活用することで、わずか1ヶ月でシステムを扱えるようになり、数ヶ月後には単独でプロジェクトを任されるまでに成長しています。技術的背景がなくても、対話力や要望を汲みとる力が大きな価値を生み、顧客に喜ばれています。AIがスキルを補完するこれからの時代は、サービス精神が何よりも重要になります。

ーー最後に、読者へ向けたメッセージをお願いします。

歌川英之:
私たちは常に新たな挑戦をし続ける組織でありたいと考えています。たとえば、オフィスには犬が駆け回っていたり、海外のインターン生を積極的に受け入れたりなど、従来の枠にとらわれないベンチャーマインドを持った会社です。できない理由を並べるのではなく、「どうすればできるか」をともに面白がれる方。私たちの目指す方向に共感し、一緒に新しい歴史をつくっていきたいという方は、ぜひ一度お話しできれば幸いです。

編集後記

AIという最先端のテクノロジーを駆使しながらも、同社の眼差しは常に現場の最前線へと向けられている。歌川氏をはじめとするメンバーが持つ、失敗を恐れず迅速に改善を繰り返す実行力こそが、最大の武器であると感じた。少子高齢化という日本社会が直面する大きな壁に対し、彼らの生み出すソリューションがどのような変革をもたらすのか。熟練者の知恵を未来へつなぐ、飽くなき挑戦はこれからも続く。

歌川英之/早稲田大学卒業、大手Slerにてアプリケーション開発に従事し、製造業向け大規模案件をはじめ数多くのプロジェクトマネジメントを経験。組織運営・品質管理・顧客折衝の実務力を培う。その後、BS Code株式会社に参画し、取締役に就任。介護・農業の現場課題をテクノロジーで解決すべく、スマートグラス型介護記録システム「NAS Glass」や介護看護記録請求システム「NASRECO」、農業管理システム「Vegetania WORKS」など、現場起点のプロダクト開発を推進している。

中内奈々/米国大学卒業、パナソニックの経営企画室にて、海外戦略の企画立案を担う。独立後、中堅〜大手企業のクロスボーダー経営支援事業を開始。近年は複数のスタートアップ支援に携わり、上場へ導く。2024年10月IT企業としてBS Codeを創業。