※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

メガバンクからIT業界へ転身した株式会社ネソルワークスの代表取締役社長、橋本研氏。同社はITインフラ領域で、未経験からプロを育てる独自の仕組みを持つ。エンジニアへの「単価75%還元」や個人のライフスタイルを尊重する評価制度など、業界の慣習にとらわれない環境づくりを徹底している。なぜ嘘のない組織を作り、「笑顔」を追求するのか。その独自の経営手腕と今後の展望に迫った。

震災を機に銀行員からIT業界へ「働く環境」を守るため社労士資格も取得

ーーまずは、社会人としてのキャリアの歩みからお教えいただけますか。

橋本研:
1990年に大学を卒業後、株式会社住友銀行(現・株式会社三井住友銀行)に入行しました。バブルの余韻が残る時代で同期は550名ほどいましたが、私はラグビー部出身ということもあり、体力と気力には自信がありました。ただ、心のどこかで「30歳までには独立して自分の事業を手がけたい」という思いを抱いていました。その後、神戸の支店に勤務していた際、阪神・淡路大震災を経験します。当時進んでいたレジャー施設開発のプロジェクトが頓挫するなど大きな転機となり、銀行員としてのキャリアを見つめ直すことになりました。

ーーその後、どのような経緯でIT業界へ転職されたのでしょうか。

橋本研:
ITと人材派遣を掛け合わせた新規事業を立ち上げるという話があり、未知の領域でしたが、そこに大きな面白さと可能性を感じて転職を決意しました。入社後は22年間にわたり、営業や事業運営の最前線に立ちました。

事業を牽引していくなかで、現場で働くスタッフの権利や労働環境を守るためには労働基準法をはじめとするルールの深い知識が不可欠だと痛感したのです。そこで転職から2年ほど経った頃、実務と並行して社会保険労務士の資格を取得しました。新しく入社してくれた仲間に法令を遵守した安心できる環境を提供し、嘘のない組織の土台を作ることが、他社にはない強みになると考えたからです。

現場主義のインフラ事業と個人の「ライフスタイル」を尊重する評価制度

ーー貴社の事業内容と、人材育成の仕組みについて教えてください。

橋本研:
私たちは、ネットワークやサーバーの設計・構築・設定・保守といったITインフラ領域を専門としています。AIの台頭でプログラム開発の姿が変わっても、物理的なインフラ構築には必ず人の手が介在するため、需要が残り続ける領域と考えたからです。採用面では、ITの知識がない未経験者も広く受け入れています。まずはデータセンターの運用業務や製品の検証テストなど、専門知識がなくても取り組める業務からスタートし、現場で経験豊富なエンジニアとチームを組んで実務を学びます。半年ほど経てば勘所も養われ、確かな戦力へと成長できる仕組みを整えています。

ーーその他、社員のモチベーションを高めるために工夫されていることはありますか。

橋本研:
エンジニアの単価の約75%を給与として還元しています。無理に高い単価の案件を押し付けることはせず、本人の意思を最優先しています。たとえば、今の収入で満足し、趣味やプライベートの時間を大切にしたいという社員がいれば、そのライフスタイルを全面的に尊重し、画一的なスキルアップを強要せず、それぞれの価値観を認め合える環境を作っています。これは、誰もが無理なく長く働き続けられる環境を守ることが大事だと考えているためです。

昭和の温かさとAIを駆使する未来志向「全ては笑顔のために」次世代へつなぐ展望

ーー貴社の組織文化について、何か特徴はありますか。

橋本研:
オフラインでの人と人とのつながりを非常に大切にしています。頻繁な懇親会やBBQ、カラオケ、そして直近では道後温泉へ行ったような良い意味で令和らしさのない会社です。またお客様先以外ではネクタイをしないなど、フランクな空気感を大切にしています。

一方で、ビジネスの進め方は徹底して未来志向です。AI関連で起業を検討している私の息子が、AIを駆使して弊社の課題を解決するフローを構築してくれました。この仕組みを活かし、営業活動やパートナー企業の開拓において、最新テクノロジーを「使い倒す」ことで合理性を追求しています。人間臭い温かさと、最先端の効率化を両立させている点が弊社の特徴と言えますね。

ーー貴社の企業理念についても教えてください。

橋本研:
「全ては笑顔のために」という理念を掲げています。仕事は65歳前後まで続く長い道のりです。楽しくなければ、到底続けられません。楽しくない環境で無理して働いていると、人はごまかしたり、嘘をついたりするようになります。だからこそ、全員が笑顔で、決して嘘をつかずに働ける組織であることが重要です。息子が幼稚園のころ、ちょっとした夫婦喧嘩で険しい顔をしていた私が何かの拍子で笑った時に「パパが笑ってたら安心する」と言われた言葉が私のその後の人生にずっと残っています。

リーダーが常に笑顔でいれば、メンバーも安心感を抱き、些細なことでも相談や報告がしやすい風通しの良い組織になります。

ーー最後に、今後の展望と社長が描く「夢」を教えてください。

橋本研:
今後は、社員の中から年収1000万円を超えるプレイヤーを一人でも多く輩出したいと考えています。また、沖縄や北海道など、社員が希望する場所に拠点を展開していくのも面白い試みです。また頑張りたくても頑張り方がわからない若者がネソルワークスに入社して、頑張り方を見つけて成長して幸せだと感じてくれればネソルワークスの存在意義を感じます。そして最終的な目標は、下の世代のメンバーが自ら事業計画を立て、自律的に経営判断ができる組織を作ることです。私はその決断を笑顔で承認する立場に徹し、次世代へスムーズにバトンを渡すことが、経営者としての最大の夢です。

編集後記

「楽しくなければ続かない」。橋本氏の言葉には、数々の現場と人を見てきた経営者ならではの深い人間理解が表れている。エンジニアへの高い還元率や、個人の生き方を尊重する姿勢は、働き方の多様性が求められる現代において一つの最適解を示しているように感じられた。社員旅行や懇親会といった昭和的な温かいコミュニケーションを重んじながら、ご子息の知見も取り入れてAIを徹底活用する柔軟さも併せ持つ。嘘のない笑顔あふれる株式会社ネソルワークスの挑戦は、これからも業界に新しい風を吹き込み続けるに違いない。

橋本研/1967年大阪府生まれ。1985年大阪府立八尾高等学校卒業。1990年甲南大学卒業後、株式会社住友銀行(現・株式会社三井住友銀行)に入社。1996年株式会社テイジイエルに入社。1998年社会保険労務士資格取得。2018年株式会社ネソルワークスに入社し、2025年2月、同社代表取締役社長に就任。現在に至る。