※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

ライブコマースを起点に確かな実績を重ねる株式会社Tailor App。独自の「消費感情AI」ツールや、ライブ配信で蓄積した消費者の本音を武器にしている。企業の販促支援から、再生医療を活用した一般消費者向け美容ブランドの展開、さらには地方中小企業へのデジタル化推進まで、その事業領域は多角化を続けている。「利益の追求より、世の中の課題を解決したい」と語る代表の松村夏海氏に、起業に至る原体験や成果を生む組織文化、そして次世代の広告会社を目指す今後の壮大な展望を聞いた。

祖父の呉服店閉業が原点 日本のものづくりと接客をデジタルで復活させる

ーーまずは、起業に至った原体験についてお聞かせいただけますか。

松村夏海:
コロナ禍での祖父の呉服店閉業が、起業の直接のきっかけです。私の家系は全員が異なる事業を営んでいました。中でも祖父はデジタルを一切使わず、自らの手でつくって対面で売るという、昔ながらの職人でした。しかし、地域の過疎化やコロナの影響が重なり、長年続けた商いを畳まざるを得なくなったのです。

その光景を目の当たりにし、日本の素晴らしい対面接客やものづくりへの思いをデジタルで復活させたいと強く感じました。そこから接客のデジタル化として、現在のライブコマース事業に行き着いたのです。利益の追求以上に、この世の中の課題を解決したいという思いが私の原動力です。

数多くのライブ配信と独自AIで売れる仕組みを構築

ーー現在の主力事業における強みは何ですか。

松村夏海:
これまで数多くのライブ配信番組を制作し、そこから膨大なお客様の声を蓄積している点です。従来の広告は、テレビなどのマス媒体を通じてメーカーが伝えたいことを一方的に発信する側面がありました。しかし、メーカーの意図と消費者の本当の要望は全く異なることが多々あります。

私たちはライブ配信のコメントから、リアルタイムに消費者の感情や声を抽出します。商品をつくってから売り方を考えるのではなく、顧客が本当に求める本音から逆算して売れる仕組みをつくるのです。これが、多くの企業から選ばれて確かな成果を出せている理由です。

ーーAIは活用されているのでしょうか。

松村夏海:
自社開発の「消費感情AI」というツールを活用して、ライブ配信で取得したデータやSNSの口コミをAIで詳細に分析しています。これは顧客像の設定から広告の文案作成、さらには画像出力までを自動で行うことができます。このツールにより、消費者の本質的な要望を迅速かつ的確に戦略へ落とし込めるようになりました。

美容ブランド展開から地方企業のデジタル化支援まで 多角化する事業領域

ーー広告支援の枠にとどまらず、多角的に事業を展開されている狙いは何ですか。

松村夏海:
日本の優れた技術を販促力と掛け合わせるためです。その試みとして、自社での一般消費者向けブランド展開も行っています。代表的なものが、再生医療の技術を基盤とした美容ブランドです。これは外部の有力企業から出資を受けて始まりました。日本の高品質なものづくりを、自社の販売促進力で高単価かつ高付加価値な商品として消費者に届けるという明確な軸を持っているのです。今後はこのノウハウを活かし、日本の商品を海外へ進出させる支援にも注力していきます。

ーーそのほか、独自の取り組みについてもお聞かせください。

松村夏海:
地方の中小企業に向けた支援を行っています。未だにデジタルへの抵抗感が強い企業が少なくありません。そこで私たちは、パソコンの基礎や生成AIの使い方から教える研修をはじめ、企業内にAIチームを創設する支援を試みています。これも世の中のデジタル化に対する課題を解決するための重要な取り組みの一つです。

挨拶を重んじる姿勢が次世代の広告会社をつくる

ーー事業を推し進める上で、どのような組織文化を大切にされていますか。

松村夏海:
根本にあるのは、礼儀礼節を重んじる体育会系の姿勢ですね。私たちは「共感を企業の力に変える」という価値観を掲げており、採用ではスピード感や当事者意識を持って結果を追求できる方を求めています。スタートアップでありながら、挨拶などの基本的な姿勢を非常に重要視しているのは、事業を大きくする過程において、一人でできることには限界があるからです。周囲を力強く巻き込んでいけるような、応援される人であることが不可欠だと考えています。

ーー最後に、今後の展望をお話しいただけますか。

松村夏海:
既存の大手広告代理店に代わるような、次世代の広告会社へ進化していくことが私たちの目標です。今後は自社開発のAIツールに加え、独自のライブコマース媒体を活用し、消費者の本音を起点としたこれまでにない広告の形をつくり出していきます。

3〜5年後には売上高30億〜50億円、将来的には100億円規模の企業へと成長していく考えです。最終的には、消費者が本当に望んでいるものを届け、眠っている資産を動かし、ひいては日本の消費を加速させたいという思いがあります。それによって、日本社会全体を元気にしていきたいと本気で願っています。

編集後記

祖父の呉服店閉業という原体験から始まり、日本の接客文化とものづくりを復活させる使命感に燃える松村社長。ライブコマースの枠を超え、独自の「消費感情AIツール」の開発や一般消費者向けブランドの展開など、次々と新たな一手を打ち出している。将来的には売上高100億円規模へと企業を成長させ、次世代の広告会社を目指すという明確な展望を持つ。その根底にあるのは、消費者が本当にほしいものを届け、日本の消費を加速させて社会全体を元気にするという熱い思いだ。日本のマーケティング業界に変革を起こし、世の中をどう変えていくのか。同社の今後の躍進から目が離せない。

松村夏海/株式会社Tailor App代表取締役社長。1997年生まれのZ世代経営者。法政大学(在学中にフォントボン大学に留学)卒業。ベンチャーPR会社へ入社後、ライブコマースシステム会社へ移籍。同社が2019年にIT一部上場企業に事業譲渡。2020年に株式会社Tailor App設立。主な著書に『売れる「ライブコマース」入門』がある。(新着マーケティング本ランキング1位)