※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

若くして現場の重圧を乗り越え、実家の土木建築業を継ぐべく家業に戻った、株式会社ウィンゲートおよび愛ホーム(株式会社高屋組)代表取締役の高屋博文氏。大阪の現場で培った経験を武器に、公共事業から民間住宅へと事業を大きく転換させた。その後、マレーシアでの出会いをヒントに開発したのが、結露を防ぐ「ウレタン遮熱工法」だ。特許を取得したこの画期的な技術を、あえて大手ハウスメーカーには売らず、地域の中小工務店にのみ提供し続けている。その裏側には、どんな信念があるのだろうか。「熱の三原則」に着眼した圧倒的な性能と、ウィンゲートの社名に込めた「勝利への入り口」という真意に深く迫る。

現場主義から生まれた「疑う力」と方向転換

ーーまずは、起業に至るまでの経緯を教えていただけますか。

高屋博文:
実家が土木建築業を営んでおり、幼い頃から職人さんたちが身近にいる環境で育ちました。自然と建築の道へ進むことになり、高校卒業後は大阪の建築関係の専門学校へ進学し、大阪の建築会社に就職します。その会社は就職してすぐに現場を任せる方針で、右も左も分からない私もいきなり現場監督に抜擢されたのです。責任感の重さから、初めてご飯が喉を通らないほどのプレッシャーを経験しました。しかし、負けず嫌いな性格なので、分からないことは周囲に聞きながら、必死に食らいついて一つずつ現場を完遂させていきました。こうした経験の積み重ねが、実地での確かな技術となり、徐々に自信につながっていきました。

ーーそこから、どのような経緯で家業へ戻られたのですか。

高屋博文:
3年ほど経った頃、父から「人手不足で大変だから帰ってきてくれ」と声がかかりました。私自身、現場での自信がついていた時期でもあり、家業を支える上で良いタイミングだと思い、実家に戻ることを決めたのです。

当時は公共工事がメインでしたが、国が公共予算を削減するという時代の流れを察知しました。「この先、公共工事を頑張っても未来は暗い」と考え、公共事業メインから民間住宅へと大きく舵を切る決断をしたのです。やるからには地域ナンバーワンを目指す。そのために、「よい品質のものをどこよりも安くつくることができれば、必ず選ばれる」という簡潔かつ本質的な答えに行き着いたのです。

常識を覆す「ウレタン遮熱工法」の誕生

ーー貴社独自のノウハウである「ウレタン遮熱工法」はどのような経緯で生まれたのでしょうか。

高屋博文:
当時、「よいものを安く提供し、地域ナンバーワンになる」ということを目指して、マレーシアでの資材調達に着手していました。現地の国際的な住宅展示場を訪れた際、灼熱の常夏の国であるにもかかわらず、その駐車場が涼しかったのです。見上げるとアルミのシートが張ってあり、太陽から降り注ぐ電磁波(輻射熱)を反射するアルミの優れた性能に、初めて着目しました。

しかし、これをそのまま日本の気候で使うと、冬場に結露が起きてしまいます。その課題を解決するために、ある経験を応用しました。かつて鉄筋コンクリートの建物を手がけていた際、壁の内側に直接「発泡ウレタン」を吹き付けて結露を防止していたのです。この手法とアルミシートを組み合わせることで、日本の住宅でも結露を防げるのではないかというアイデアを考案しました。

ーー外気温との差が激しい環境下でも、結露を防ぐことは可能なのですか。

高屋博文:
もちろんです。独自の性能を証明するため、かつて特殊な実証実験を行いました。「マイナス4度の外気温」と「室内環境を室温30度・湿度80%の空間」という非常に過酷な条件を再現したのですが、結果として結露は一切発生しませんでした。

多くの建築現場では、いまだに「伝導熱」や「対流熱」への対策に留まっており、熱自体の仕組みについて深く理解している人は決して多くありません。しかし、建物に最も大きな影響を与えるのは太陽からの「輻射熱」です。私たちはこの「熱の三原則」に着目し、なかでも建物が受ける熱の約75%を占める輻射熱を、アルミの特性を活かして遮断します。弊社の遮熱シートは、太陽からの輻射熱を95%以上(純度によっては97%以上)も跳ね返す圧倒的な反射性能を誇ります。さらに、内部の湿気を通さない「独立気泡」構造のウレタンを組み合わせることで、結露の発生源を根本から断ち切ることに成功したのです。

この科学的根拠に基づいた家づくりで、特許を取得しました。一般的なグラスウールなどの断熱材は、結露で濡れてしまい木材が水分を吸って腐っていくため、日本の住宅寿命は50〜60年と言われています。しかし、木材は適切に湿気から守りさえすれば、驚くほど長期間その強度を維持できる素材なのです。結露を防ぎ、木材の腐食を抑え、新築時の強度を維持することで、日本の住宅寿命を劇的に延ばすことができるのです。

地域工務店への「勝利への入り口」

ーーどのような企業に向けてこの技術を提供されているのでしょうか。

高屋博文:
現在は全国でセミナーを開催し、「ウレタン遮熱工法」を広めていますが、提供先は地域の中小工務店に限定しています。かつて大手企業が地方に進出した際、ブランド力に押され、地域の工務店が苦境に立たされる場面を多く目にしてきました。だからこそ、この技術を「圧倒的な差別化商品」として武器にしていただき、大手と対等に渡り合える力をつけてほしいと願っています。

地元の工務店が潤えば、地域の職人の雇用や経済が守られ、地域経済の循環が生まれます。「地域経済の基盤を守る」という強い信念を持ち、あえて提供先を絞る戦略をとっているのです。

ーー最後に、今後の住宅業界における課題や貴社の展望をお話いただけますか。

高屋博文:
現在、国が定める断熱の等級基準がありますが、弊社の強みである「熱を反射する性能」や、建物の隙間を表す「気密性」の実測値は、現行の計算式には反映されていません。分厚い断熱材を使用しても隙間があれば本来の性能は発揮しにくいため、実際の快適性と計算上の数値にギャップが生じてしまうのは少しもどかしい部分です。それでも私たちは、立命館大学との共同実験などを通じて科学的なエビデンスを積み重ね、確かな性能を追求し続けています。

単なる計算上の数値ではなく、住む人が肌で感じる「夏の涼しさと冬の暖かさ」を形にすることに注力しているのです。コスト優先に流されがちな業界において、お客様に快適な暮らしを届けるという初心を持っています。そのような工務店仲間を、これからも全国に増やしていきたいです。

編集後記

「熱の三原則」に基づく高屋氏の説明は、誰もが納得するほど明快で論理的だった。自らの足で海外へ飛び、実験を重ねて特許まで取得する行動力。そして何より、地域経済の循環を願い、中小工務店を勝たせることを選ぶ義理堅さに深く感銘を受けた。住む人の実感としての快適さを追求する同社の技術と信念が、今後さらに多くの人々の暮らしと地域社会を豊かにしていくことを期待したい。

高屋博文/1959年生まれ。大阪修成建設専門学校建築工学科を卒業後、大阪の豊島建設株式会社建築課にて現場監督として3年間従事。その後、家業を継ぐため地元の京都府南丹市に戻り、本格的に建築を学び、1級建築士および1級土木施工管理技士の免許を取得し、株式会社高屋組にて住宅事業部「愛ホーム」を展開。さらに「ウレタン遮熱工法」の特許を取得し、株式会社ウィンゲートおよび愛ホーム(株式会社高屋組)の代表取締役に就任。2008年には京都府より環境トップランナー表彰も受賞している。