※本ページ内の情報は2026年7月時点のものです。

大手IT企業での勤務を経て、コロナ禍に趣味で始めた「歌い手活動」から派生し、ネットでは2次元のキャラクター、リアルでは3次元のライブ活動を融合させた、6人組2.5次元アイドルグループ「いれいす」を結成した。その活動から発展し、現在は2.5次元アイドル事務所「株式会社VOISING」を率いているのが、代表取締役社長のないこ氏だ。同社は自社でタレントをプロデュースし、コンテンツ制作からライブ制作までを一貫して手掛けるIPホルダーだ。「結成3年で武道館ライブ」という約束を果たし、次なる目標「東京ドームワンマンライブの実現」及び「国民的2.5次元アイドル事務所の創出」を見据えている。独自の組織運営でファンとともに熱狂をつくり出す同氏に、エンターテインメントの真髄を聞いた。

0から始まった挑戦「結成3年で武道館」を実現させた巡り合わせ

ーーまずは、起業されるまでのご経歴を教えてください。

ないこ:
大学卒業後は、株式会社サイバーエージェントに入社しました。もともとコンサルティング業界を志望していましたが、データ分析などを専門とするインターンに参加し、ご縁があって採用していただきました。そこでサイバーエージェントを選んだのは、事業を多角的に展開しており、幅広い業種を学べる点が面白いと感じたからでした。入社後はウェブマーケティング分野に配属され、ウェブ上のマーケティングとその分析、さらにはデータ分析のためのプログラミングなどを経験しました。

ーーその後、ご自身でグループを立ち上げた理由は何でしょうか。

ないこ:
コロナ禍で家で過ごす時間が増えたことが最大の動機です。もともとニコニコ動画などで歌い手やボーカロイド文化に触れていたこともあり、空いた時間で歌い手の活動を始めました。活動をしていく中で、グループを結成する流れが界隈的に発生していることに気づき、やるからには行けるところまで拡大しようと考え、仲間を集め、立ち上げに至りました。サイバーエージェントは数年で退職しましたが、そこで培った社会人としての基礎や実務経験が、現在の会社を立ち上げた際の初期運用に大いに生かされており、前職サイバーエージェントには非常に感謝しています。

ーー「結成3年で武道館ライブ」という目標を掲げ、達成に至るまでの経緯はいかがでしたか。

ないこ:
当初は、目指すなら高い目標を、という象徴的な意味合いでの「目標は武道館ライブ」でした。しかし、グループが成長するにつれて現実味を帯びていき、やるなら、界隈最速での武道館実現を目指してみよう、と意気込むようになりました。結果として、当時の歌い手グループ市場においては最速の記録で武道館ライブを達成することができました。

ーー短期間で達成できた理由は何だとお考えですか。

ないこ:
人と運に恵まれたからです。私ひとりの力で達成したとは全く思っていません。集まったメンバーも、全員が大学での就学経験があるなど、ネット活動者としては当時めずらしいバックグラウンドを持っており、しっかりと意思疎通を図って建設的な話し合いができたことも大きな理由の一つです。また、結成当初、知り合いの伝手で集まってくれたスタッフも、現在に至るまでずっと活動を支え続けてくれています。そんなグループに関わる全員が、人生をかけて武道館という目標やファンの方々に向き合ってくれたからこそ、到達できたと考えています。まさに「ファンの皆様との約束を叶えられた場所」であり、武道館ライブ当日は、忘れられない大きな達成感と感謝の気持ちでいっぱいでした。

タレント自らが経営に参画 ワンストップでIPをつくり出す強み

ーー現在の貴社の事業概要と強みを教えてください。

ないこ:
主にネット上でコンテンツを投稿しながらリアルライブを行う「2.5次元アイドル」をプロデュースし、グループを運営しています。弊社の大きな特徴としては、コンテンツやライブの制作、グッズ展開、マーケティングまでを一貫して自社主導で行う「IPホルダー」である点にあります。現在は関連会社を含めたグループ全体でこれらの機能を完結できる体制を構築しており、2.5次元という領域でここまで深く事業を展開している企業は非常に稀な存在だと思います。

また、この領域ならではの強みとして、ネットの利便性とリアルの熱狂を高度に融合させていることが挙げられます。VTuberなど、完全に3Dのみでコンテンツが完結するバーチャルキャラクターとは異なり、ライブ会場では生身の人間がステージに立ち、その場で観客を煽って会場のボルテージを上げる、生身のコミュニケーションをとる、といった3次元の関わり方をすることで、爆発的な熱量を生み出すことが可能です。実在する演者のパフォーマンスによるリアルタイムの白熱した体験と、日々のネット活動。この両立こそが、ファンの皆様に深く支持される独自の価値に繋がっています。

ーー会社として、他に類を見ない特徴はありますか。

ないこ:
所属するタレント自身が、経営や戦略に携わっている点です。私自身がそうであるように、タレントとともに戦略を考え、ともにコンテンツをつくっていく会社は珍しいと思います。もともとVOISINGは、複数グループでノウハウやリソースを共有し、協力体制をつくるために設立しました。その設立背景が現在にも活きており、VOISINGに所属している各グループの各タレントが、自らグループ運営の決断を行っています。ゼロからIPをつくり続けることは非常に難度が高いですが、その分インパクトも大きいです。タレント自身が創ったコンテンツがファンに届き、そこで大きな熱狂が生まれる。この熱狂を最前線で体験し、より良いコンテンツを創っていくことができるのが、弊社最大の特徴です。

目指すは「国民的2.5次元アイドル」 ファンとともに成長し世界へ広がる熱狂

ーー今後の目標として、目指している姿を教えてください。

ないこ:
国内において、誰もが知る国民的なアイドルグループおよび事務所をつくることが最大の目標です。そのためにも、ファンの方々とともに歩み成長していきたいと考えています。一つひとつのコンテンツを伸ばしていくことはもちろんですが、それ以上にファンとの一体感が不可欠です。現在、私が所属するグループ「いれいす」では、「東京ドームワンマンライブ」という目標を掲げ、その夢をファンの皆さんとともに実現することに注力しています。

ーーコンテンツ分野での事業計画はどのように立てているのですか。

ないこ:
コンテンツ分野は、基本的に何が成功するか読みづらい領域です。だからこそ、ただの運任せで終わらせるのではなく、打ち出すコンテンツ自体の成功角度を高める、撤退ラインを引き、そこまでは打ち手を打ち続けるといった計画、設計とセットでコンテンツを展開しています。

そして一回一回施策をしっかりと振り返り、ファンの声を聞き、より良いコンテンツを生むために次回に活かしていく。ファンの声を間近で聞くことができるからこそ可能な高速のPDCAサイクルを、ファン目線で行い、着実に目標に向けて進んでいます。

ーー最後に、海外展開に向けたお考えをお聞かせください。

ないこ:
まずは日本国内での基盤を固めることが先決ですが、その先には世界を見据えています。中国、韓国、台湾などのアジア圏では、日本のカルチャーへの需要が確実にあるはずです。近年はVTuberが海外で成功を収めている事例もあり、2.5次元領域が世界へ羽ばたく可能性は大いに秘められています。

どのようなステージに立っても「形を変えること」を恐れず、常に時代のニーズを的確に捉え、世界中の方々に熱狂していただける新しいコンテンツを生み出し続ける。そんな集団へ成長していきたいですね。

編集後記

趣味から始まり、自らがタレントとしてステージに立ちながら経営戦略までを描くないこ社長。その言葉からは、エンターテインメントへの純粋な情熱と、IPをゼロからつくり上げるシビアな視点が同居していた。話題性という不確実な要素に頼るのではなく、確実な打席に立ち続けるための体力と緻密な分析を欠かさない。ファンとの「約束」を原動力に、2.5次元領域から国民的アイドル、そして世界へと熱狂を広げる同社の歩みから目が離せない。

ないこ/中央大学法学部卒業。株式会社サイバーエージェントに入社。歌い手グループ「いれいす」結成。2.5次元アイドルグループ事務所として株式会社VOISINGを設立し、代表取締役社長に就任。「いれいす」結成3年で歌い手グループ史上最速の武道館ライブを実現。現在「いれいす」の東京ドーム公演の実現および、株式会社VOISINGの成長に注力している。