
通信業界での国際的な折衝経験を経て、現在はディープテックやスタートアップ企業の補助金支援に注力する株式会社アライブ ビジネス。同社の強みは、単なる申請の支援にとどまらず、多くの企業が頭を抱える「採択後の煩雑な事務」までを一貫してサポートする点にある。エンジニアからキャリアをスタートさせ、国際通信事業の立ち上げ、そして起業へと至る独自の経歴の中で培われた「異なる文化をつなぐ」という視点。そこから生まれる同社ならではの強みと今後の展望について、会長の淡河敏一氏に聞いた。
国際通信の舞台で学んだ「文化の翻訳」と行政の仕組み
ーーまずは、これまでのご経歴を教えてください。
淡河敏一:
大学の理工学部を卒業後、産業機器メーカーに入社し、電気回路や制御のエンジニアとして約10年働きました。その後、リクルートからスカウトを受け、通信とコンピュータを活用した新規事業の立ち上げに携わったり、規制緩和により国際通信事業に参入したNCCへ転職してゼロからの事業立ち上げなどを経験しました。
ーー電気系エンジニアから通信事業の立ち上げという大きな転換において、どのような役割を担われたのですか。
淡河敏一:
転職先の企業は日本へ進出するイギリスの通信会社も出資しており、私は通信エンジニアを経て経営企画として海外との窓口や、日本の政府機関との折衝を担当することになりました。当時のイギリスやアメリカは通信の自由化において日本よりも10年先を進んでおり、日本の政府機関から規制緩和の実態等を頻繁に聞かれていました。
私はパブリックコメントの対応などを行う中で、政府の予算の流れや、行政の仕組みがだんだんと読めるようになってきたのです。英語が堪能だったわけではないのですが、海外の文化と日本の文化という全く異なるものをうまく翻訳し、間を取り持つ仕事に非常にやりがいを感じましたね。この「異なる文化の架け橋になる」という経験は、現在の事業にも大きくつながっています。
「採択後」の煩雑な事務を代行 ディープテック領域に絞った独自の生存戦略

ーーそこから、どのような経緯で現在の補助金支援事業に行き着いたのでしょうか。
淡河敏一:
勤めていた通信会社が買収されるなどの転機があり、NPOで活動する機会を得たのがきっかけです。その地域は偶然ながら起業家を支援する動きが盛んでした。私の過去の知見を活かし、「どこに行けばどんな情報や補助金があるか」をアドバイスしていたところ、「それを事業にしてみてはどうか」と勧められたのです。約20年前の当時は、補助金の支援を専門に行う会社は他にありませんでした。
ーー現在、貴社が注力されている事業領域と独自の強みをお聞かせください。
淡河敏一:
外部の公的機関が公募するような、ディープテックや医療系、学術系のスタートアップ、あるいは研究開発を行う100人以下の企業様を中心に支援を行っています。現在、IT導入や設備投資の補助金支援を行う会社は多く存在します。しかし私たちはそこで競争したくないので、分野を高度な研究開発系に絞り込みました。そして最大の強みは、「採択された後の事務サポート」を徹底して行っている点です。
ーー「採択後のサポート」とは、具体的にどのような業務を指すのでしょうか。
淡河敏一:
研究開発系の補助金は、機材購入だけでなく「人件費」や学会参加などの「旅費」が対象になります。しかし、これを証明するための証拠書類をそろえるのが非常に大変なのです。人件費であれば毎日の業務日誌が必要です。また、海外の学会に行けば、出張申請書から航空券の半券、現地のタクシーの領収書、クレジットカードの明細まで、すべてを完全にそろえなければ補助金の対象にはなりません。
ルールを知らずに後から慌てる企業様が多い中、私たちは最初から「これが必要になります」とアドバイスし、膨大なルールの事務管理を支援します。すでに他の支援機関で申請だけ通ったものの、その後の対応に困って弊社に駆け込んでくる企業様もいらっしゃいます。この採択後のサポートまで専門的に対応できることが、弊社の大きな特徴です。
ーー過去の「架け橋」としての経験は、現在の業務でどのように活かされていますか。
淡河敏一:
補助金の公募要領やマニュアルはいかにもお役所言葉で、中小企業の方々にとっては非常に読み解きづらいものです。行政の文化と、効率を最優先する中小企業の文化は全く異なります。私はその間に立ち、双方の考え方を翻訳して伝える役割を担っています。この間を取り持つポジションこそが、私の得意とする領域なのです。
ノウハウをAIに乗せ次なるフェーズへの横展開を目指す
ーー今後の展望についてお聞かせください。
淡河敏一:
今後は、申請時及び採択後のサポートのノウハウを横展開し、より多くの企業様を支援できる体制をつくりたいと考えています。現在、弊社へのお問い合わせはホームページ経由で全国から寄せられており、私たちが培ってきた採択後サポートのニーズは特に高まっていると感じています。
その鍵となるのが、生成AIの活用です。申請書の作成ノウハウや、膨大なマニュアルに基づく採択後の事務管理ルールなどをAIに学習させ、業務を効率化していきます。さらには、そのAIを活用したサービスそのものをビジネスとして展開していくことも視野に入れています。
ーー最後に、読者へメッセージをお願いいたします。
淡河敏一:
高い技術を持ちながらも、補助金申請やその後の煩雑な事務作業にリソースを割けず足踏みしているスタートアップや中小企業は少なくありません。私たちは、そうした企業様が本来の研究開発に集中できるよう、専門的なノウハウでしっかりと伴走します。きめ細やかなサポートで、皆様の新たな挑戦を後押ししていきたいと考えています。
編集後記
行政の難解なルールと、革新を追い求めるスタートアップの現場。この全く異なる二つの世界を「翻訳」して結びつけるアライブ ビジネスの伴走支援は、日本の技術力を社会へ実装するための重要な支えと言える。単なる申請支援にとどまらず、企業が最も苦労する採択後の煩雑な事務作業までをサポートする姿勢に、同社ならではの強みを見た。属人的なノウハウをAIに学習させ、次なるフェーズへの挑戦も視野に入れる同社の躍進に、今後も期待が高まる。

淡河敏一/1952年大阪府生まれ、早稲田大学理工学部卒。産業機械メーカーに入社し、約10年後に株式会社リクルートへ転職。その後、国際デジタル通信株式会社(IDC)などを経て、2006年に株式会社アライブ ビジネスを設立、代表取締役社長に就任。2024年から現職。