
「利益があれば何も怖くない」と力強い口調で断言するのは、加瀬グループの会長、瓜生佳久氏だ。運送業からスタートし、現在はトランクルームや貸しビルなど多数の不動産を展開する同社。その最大の強みは、徹底した仕組み化と、理にかなったビジネスモデルにある。条件の厳しい不動産に新たな価値を吹き込み、AIを最大限に駆使して少数精鋭の組織をつくり上げる。その独自の経営信念と、他社には真似できない生存戦略の裏側に迫った。
仕組み化が生み出す不動産再生ビジネス
ーー創業からの歩みと現在のビジネスモデルについて教えてください。
瓜生佳久:
もともとは運送業から始まり、倉庫を借りて貸し出すようになったのが原点ですね。そこから中古のコンテナを仕入れて貸し出すようになり、事業を拡大していきました。現在注力しているのは、「収益を生んでいない不動産を、稼げる不動産にする」ビジネスです。
たとえば、築年数が古かったり、建ぺい率の制限があったりと、一般的には活用が難しいとされる物件は比較的安価に取得できます。そうした物件を買い取り、トランクルームなどに形を変えて収益化するわけです。現在の弊社は、人が現場で汗を流すだけでなく、物件自体がしっかりと利益を生み出す仕組みができています。私たち人間の役割は、オフィスでそのための企画や仕組みづくりをすることですね。
ーー資金の運用やビジネスの仕組みづくりについてはどうお考えですか。
瓜生佳久:
企業として資金の蓄えは大切ですが、銀行に預けているだけでは大きな成長は見込めません。資金を有効に活かすためには、やはり優良な物件に投資することが重要だと考えています。ビジネスにおいて大切なのは、お客様や地主様に喜んでもらい、自然と「加瀬グループにお願いしたい」という声が集まる仕組みをつくることです。
弊社には不動産運用に関する豊富なノウハウがあるため、ありがたいことに多くのお声がけをいただきます。各方面の専門家から寄せられるさまざまなご提案を、社内でしっかりと吟味し、双方にとって最も良い形を選択しています。また、QRコードを用いたシステムやネット契約も導入し、業務の無人化や自動化も積極的に進めています。システムでカバーできる業務は機械に任せ、人はより付加価値の高い仕事に集中すべきだと考えています。
全員で意思決定し自走する会社へ 「三方よし」の社会貢献

ーー社内の意思決定や、目指している組織の姿について教えてください。
瓜生佳久:
以前は、会社の仕組みや事業のアイデアはすべて私自身が考えていました。しかし、自分一人で進めるやり方では限界があり、失敗したりうまくいかなかったりすることもありました。その経験から、現在は多角的な視点を持ち、世界に通用するような提案ができる外部の専門家にも仕組みづくりを依頼しています。
また、社内での意思決定プロセスも大きく変えました。さまざまな企業から持ち込まれる提案については、トップダウンで決めるのではなく、社員全員で検討し、実行すべきかどうかを判断するようにしています。最終的な目標は、私が細かく指示を出さなくても社員が自立して自走できる会社にすることです。
ーー利益追求の一方で、社会貢献や既存ルールについてはどのようにお考えですか。
瓜生佳久:
世の中には、市街化調整区域や農地など、複雑な規制のために有効活用されていない土地が多く存在します。こうした規制が状況に合わせて緩和されれば、より安価にサービスを提供でき、経済の活性化にもつながるのではないかと感じています。だからこそ弊社は、固定観念にとらわれず、いかにコストを抑えてお客様の生活を豊かにできるかという課題に挑戦し続けています。
もちろん、利益を追求するだけでは企業として不十分です。過去の震災時には、学校のグラウンドに弊社のコンテナを活用した仮設住宅を建設しました。最近でも防災備蓄品の提供などを通じて、地域の皆様に喜んでもらえる活動を行っています。自社だけでなく、お客様や地域社会にも貢献する「三方よし」の精神で進めることが、企業として最も大切な姿勢だと考えています。
AI導入と少数精鋭で時短勤務と週休3日を目指す
ーー組織のあり方や働き方についてどのようなお考えでしょうか。
瓜生佳久:
かつては社員数の多さが企業のステータスという時代もありましたが、今は少し価値観が変わってきていると感じます。AIやテクノロジーが進化している現代では、効率化を進めて少数精鋭の組織を目指すのが一つの正解ではないでしょうか。
実際に、以前130人いた社員を現在は100人体制にし、将来的にはさらに効率化を進めたいと考えています。運用しているビルは160棟以上あるのに、社員数はその半分以下というのもユニークですよね。その分、AIの専門家を招き、社員には最新のスキルをしっかりと学んでもらっています。テクノロジーを使いこなせれば、業務負担は劇的に軽くなります。効率化で生まれた余裕を活用し、終業時間を1時間前倒ししたり、将来的には週休3日を実現したいと本気で考えています。
ーー最後に今後の展望や求める人物像についてお話しいただけますか。
瓜生佳久:
弊社は社員の6割が女性で、皆それぞれに知恵を絞って活躍してくれています。「企業は人なり」と言いますが、能力以前に、誠実さに欠ける方は弊社には合いません。そして何より大切なのは、仕事に楽しみながら取り組むことです。正しいことを堅苦しく進めるだけでは、柔軟な発想は生まれません。経営陣が細かく指示を出さなくても、社員自らが面白さを見出し、主体的に動ける。そんな活気ある会社にしていきたいですね。
編集後記
取材中、終始エネルギーに満ちあふれ、和やかな雰囲気をつくってくださった瓜生氏。「物件が稼ぐ仕組みをつくる」「少数精鋭を目指す」といった思い切った言葉の裏には、従業員を単純作業から解放し、時短や週休3日という豊かな時間を提供したいという、深い社員思いの姿勢が隠されていた。ビジネスの原理原則を追求し、変化を恐れず楽しみながら挑戦を続ける同社の姿勢は、多くの企業にとって大きなヒントになるだろう。

瓜生佳久/工業高校卒業後、22歳でトラック1台の運送業を単身創業。1973年に株式会社加瀬運輸、78年に株式会社加瀬倉庫を設立し、運送から倉庫・不動産業へと事業を拡大。現在は、株式会社加瀬ホールディングスをはじめとする加瀬グループ数社を束ねる会長に就任。2002年に開始したトランクルーム事業は、全国1700カ所・8万5000室超の規模へ成長。現在はビル約170棟を所有し、競売物件の再生やホテル経営など、「存在価値を高める」を理念に多角的な事業展開を行っている。グループ企業には、株式会社加瀬ホールディングス、株式会社加瀬倉庫、株式会社加瀬不動産活用、株式会社加瀬運輸などがある。