
大阪と京都に4店舗を構え、創業以来、黒字経営を続ける株式会社ランド。同社を率いる代表取締役の小川孝史氏のキャリアは、大手不動産会社のトップセールスマンから始まった。確約された地位と安定を捨ててまで同氏が求めたのは、「仕事を楽しみたい」という純粋な思いと、「社会貢献」への強い覚悟だ。資金わずか300万円、自ら壁のペンキを塗った自宅兼事務所からスタートし、着実に成長を遂げてきた。さらなる飛躍に向け、実力主義の徹底とIT化による次なるフェーズへ挑む小川氏。その独自の経営哲学と、未来を見据えたビジョンに迫る。
お客様の涙で決断した起業資金300万円からの地道なスタート
ーーまずは、起業前のご経歴をお聞かせください。
小川孝史:
金融業を経験したのちに、大手の不動産販売会社に入社しました。そこでは営業や店長として12年ほど働き、300人中トップ10の営業成績を収めたこともあります。店長時代にも、80店舗中で1位を獲得するなど、業績不振の店舗をV字回復させる経験を積んできました。しかし次第に、厳しいノルマに追われ続け、過度に数字を重視する会社の体制に疑問を抱くようになったのです。
そのような中、ある取引でお客様から「これでまた一からやり直せます、ありがとうございます」と、涙を流して感謝される出来事がありました。お客様それぞれに抱えるご事情がある中で、このような切実なお言葉をいただいたとき、「やはりお客様にしっかりと向き合う仕事をしなければならない」と強く感じたのです。
ーー独立を決意した決定的な理由は何でしたか。
小川孝史:
先ほどお話しした出来事を通じて、お客様を大切にする働き方をしたいと痛感したものの、当時の会社のシステムや環境の中では、それを実現できないと悟ったからです。上からのプレッシャーや絶え間ないノルマに追われる状況下では、どうしても自分の思い通りにお客様と向き合うことができませんでした。
また、雇われの身である以上、結局また同じことの繰り返しになるだろうと思い至ったのです。私の負けず嫌いな性格もあり、それならば自分が理想とする不動産サービスを、自らの手で一から創り上げるしかないと腹をくくり、起業の道を選びました。
ーー起業当初はどのような状況でしたか。
小川孝史:
資金難のため、自宅の1階を事務所にしてスタートしました。用意できた資金はわずか300万円で、経費を極力抑えるべく、自らホームセンターで塗料を買ってスーツにペンキをつけながら壁を塗ったりもしていました。それでも「仕事を楽しみたい」という意思があったので、地道な下積みも乗り越えることができたのです。
ただ、次第に一人で自宅で働き続けていては、堕落してしまうのではないかと不安を感じるようになりました。そこで自らを律するためにも、ブランド力を高めるために大手のフランチャイズに加盟したのです。事業を拡大し、白黒はっきりさせるための決断でした。加盟してからは、徐々に店舗を増やしていくことができました。
スピード決断と一貫した事業体制が強み 13年連続黒字の裏側

ーー現在、貴社の事業の特徴や強みを教えていただけますか。
小川孝史:
現在は大阪府内に3店舗、京都府内に1店舗の計4店舗を展開しており、グループ会社と密に連携した体制を構築している点が特徴です。具体的には、買取に特化した「株式会社ミライ」や「ランドホールディングス」で物件を仕入れ、「株式会社ランド」が仲介や売買を担当し、「ランド建設」がリフォーム工事を担うスキームを確立。物件の仕入れから販売、改修までをグループ内で円滑に完結できる仕組みを整えています。
さらに、最大の強みとして挙げられるのが決断の早さです。大企業であれば、不動産の購入判断一つをとっても、稟議書の承認に1週間ほどかかるケースが珍しくありません。一方、弊社では経営陣と現場の距離が非常に近いです。店長や社員からの意見を直接聞き入れ、その場で即座に判断を下す体制を構築しており、圧倒的なスピード感で意思決定を行えることが、事業を力強く推進する原動力となっているのです。
ーー創業以来、黒字経営や安定成長を実現している秘訣は何だとお考えですか。
小川孝史:
たとえ困難な状況でも「仕事を楽しみたい」という根本的な思いを持ち続けていることではないでしょうか。過去には、思い悩み「このまま1店舗でこぢんまりと続ける方が楽ではないか」と葛藤した時期もありました。それでも諦めず、ワクワクや感動を味わいながら地道に経営を続けてきた結果です。それが今の安定成長につながっていると考えています。
求めるのは「素直さ」と「感謝」 実力主義の働き方
ーー人材育成や採用において、どのような人物を求めていますか。
小川孝史:
何といっても「素直さ」「真面目さ」「感謝の気持ち」「一生懸命さ」を兼ね備えた人ですね。過去に組織運営で厳しい経験をしたからこそ、この4つの要素を重視しています。チラシ配りや物件の写真撮影といった「当たり前のこと」を徹底すれば、必ず結果は出るものです。謙虚な姿勢で仕事に向き合える人が成長するのです。
ーー貴社の風土はどのようなものですか。
小川孝史:
年齢や社歴にかかわらず、活躍できる完全な実力主義の環境です。年齢や勤続年数に関係なく、能力とやる気さえあれば20代で店長や役員に抜擢されることも十分にあり得ます。20代だからといって遠慮する必要は一切ありません。
「稼ぐ目的は社会貢献」 5年後に100名体制を目指す次なるステージ
ーー今後の展望についてお聞かせください。
小川孝史:
賃貸管理部門によるストック収入や、自社保有の収益物件からの家賃収入のウェイトを増やし、経営基盤のさらなる強化を図ります。5年後には10店舗、100名体制の達成を目標に据え、関東への進出や将来的な上場も視野に入れている状態です。
事業拡大を推進する最大のモチベーションは、社会貢献に他なりません。現在も毎年、養護施設の子どもたちを招いてバーベキュー大会を開いたり、寄付を行ったりしています。来年もこの子たちのために頑張ろうと思うと、自然と力が湧いてくるのです。将来的にはシェルターなどの施設をつくる夢を持っています。その実現に向けた資金と力を得るべく、これからも力強く事業を展開していく考えです。
編集後記
大手企業でのトップセールスの地位を捨て、「お客様のために」という純粋な思いから起業の道を選んだ小川社長。起業後のさまざまな困難を経てもなお、13年連続黒字という偉業を成し遂げた。その背景には、「仕事を楽しみたい」というぶれない軸があった。20代抜擢の実力主義など、柔軟に変化を取り入れている。その根本にあるのは「社会貢献」という温かな大義だ。5年後の100名体制、そして上場へ向けて同社がどのような飛躍を遂げるのか、引き続き注目していきたい。

小川孝史/1967年5月5日生まれ。2001年11月、株式会社福屋不動産販売に入社。2013年7月、株式会社ランドを創業。