※本ページ内の情報は2026年8月時点のものです。

パンの製造卸しを中心に、長きにわたり美味しいパンを食卓に届けてきたニシカワ食品株式会社。スーパーでの販売から米飯事業まで手広く展開し、多くの消費者に愛され続けている。現在はグループ全体で約500名の従業員を抱える規模へと成長したが、その根底には「無添加・手づくり」への徹底したこだわりと、「社員は皆家族」という温かい哲学があった。そんな同社の代表取締役副社長、西川裕順氏は、外部企業で組織の基礎を学んだ後、家業であるニシカワ食品に入り、現場の管理を牽引してきた。本記事では、強い組織づくりの秘訣と国内外を見据えた同社の展望について聞いた。

外の世界で学んだ「組織」の基本と入社直後に経験した現場マネジメント

ーーまずは、貴社に入社される前のご経歴から教えていただけますか。

西川裕順:
将来的に家業に入ることを前提として、まずは外部のパン原材料製造会社に入社し、2年間経験を積みました。そこで主に学んだのは、製造部門に原料がどのような経路で届くのかといった一連の流れや、大きな組織がどのように機能して動いているのかという組織論の基本です。

その後、当時従業員数が200名から300名ほどであった弊社に入社しました。入社直後から工場現場の管理業務を任され、一部で営業活動も兼任していました。当時は人の管理に最も重きを置いており、お弁当の製造ラインに対して「8人が最適か、10人か、あるいは13人が適切か」とラインごとの適正人数を細かく見極め、出勤人数を最適化していく人員管理を中心に行っていました。

500人が同じ方向を向く難しさと期待を超える幹部たち

ーー従業員数が増えていく中で組織づくりで苦労されたことは何ですか。

西川裕順:
全員が同じ方向を向いて仕事をするというのは非常に難しいことだと痛感しました。私たちは手づくりのパンやお弁当をつくっている食品会社ですので、何より人の管理が重要になります。品質管理を厳しく保ちながらも、社員のやりがいをつくれる環境をどう整えるか。そこが一番の課題でした。

ーーその課題をどのように乗り越えてきましたか。

西川裕順:
各部門とのコミュニケーションを活発にすることで改善を図りました。製造、営業、経理総務など、それぞれの立ち位置がある中で、メンバーが同じ方向を共有できているかを絶えず見るようにしています。昔から苦楽をともにしてきた幹部メンバーの存在が非常に大きいですね。彼らはお互いのことをよく理解し合い、私の考えや意図をしっかりと汲み取ってくれており、実際に想定以上の成果を上げてくれるのです。

たとえば新しい釜を導入した際、私が「いつまでに売ってくれるのか」と尋ねる前に、彼らはすでに売り先を決めて戻ってきていました。こちらの思いを理解し、先回りして行動してくれる幹部がいることは、弊社の強みです。祖父の代から「みんな家族やで」と教えられて育ってきましたから、その精神が根付いているのでしょう。

手づくりと無添加へのこだわりそして働きやすい環境づくり

ーー改めて、貴社の事業内容や商品へのこだわりについてお聞かせください。

西川裕順:
事業としてはパンの卸しが全体の約7割を占めるほか、グループ会社を通じて学校給食なども展開しています。スーパーに並ぶパンの中でも、弊社はとりわけ「無添加」と「手づくり」にこだわり、手間をかけてつくっているのが特徴です。さらにはパッケージにもこだわっており、あえて透明で黒一色の文字だけを入れた包装紙を採用しました。手づくりゆえに日によって大きさが多少不揃いになることもありますが、それを隠すのではなく、手づくり感のあるデザインとして他社との差別化を図っています。

ーー働きやすい環境づくりについて、工夫していることを教えてください。

西川裕順:
「食卓を笑顔に」というコンセプトがある中で、まずは働く人が笑顔で健康でなければならないと考えています。弊社はパートも含めて女性従業員が多く働いているため、彼女たちが活躍できる環境づくりに力を入れています。たとえば、カーブスをはじめとした女性専用のスポーツクラブの運営を始めたり、企業主導型の保育園を設立したりしました。育休をとった女性社員がいつでもすぐに復帰できる環境を整えたかったのです。こうした働きやすい環境をつくることが、経営陣としての大きな使命だと考えています。

首都圏そして世界へ 技能実習生と描く循環型の未来

ーー今後の展望についてはどのようにお考えですか。

西川裕順:
国内でいえば、首都圏への進出に力を入れています。昨年から東京のスーパーなどにも毎日商品を届けており、今後は中四国エリアも含めてさらに販路を広げていきたいと考えています。また今年の12月にはリニューアルした新店舗のオープンも控えており、遠方からもお客様に来ていただけるようなお店づくりを進めているところです。

ーー海外展開などの構想もあるのでしょうか。

西川裕順:
海外にも広げていきたいという思いはあります。現在、海外からの技能実習生を受け入れていますが、彼らが日本で数年間技術を学んでも、母国に帰ってパン屋になるケースはほとんどありません。せっかく弊社で覚えた技術があるのだから、彼らが帰国した際には、弊社ブランドのパン屋で活躍できるような雇用を生み出したいという思いがあるのです。日本での研修が母国での仕事につながるような、好循環を生み出していきたいと考えています。

ーー最後に、これからの時代に向けて意気込みをお願いいたします。

西川裕順:
世の中の変化に対応したビジネスをしていきたいですね。パンは手づくりの焼きたてのものが一番美味しいですが、将来的に冷凍技術などがさらに発展し、焼きたてと変わらない味が提供できるようになれば、そうした技術もしっかりと取り入れていく必要があるでしょう。時代が変わっても、一人でも多くの方に「美味しい」と言っていただけるように、挑戦を続けていきます。

編集後記

「社員は皆家族」。その言葉が単なるスローガンではなく、充実した福利厚生や幹部との厚い信頼関係という形で実を結んでいるニシカワ食品株式会社。外部企業で培った組織論と、現場で人と向き合ってきた西川氏のバランス感覚が、約500名もの組織を一つにまとめているのだろう。手づくりへの誇りを守りながらも、東京進出や海外への循環型ビジネス構想、そして最新技術の導入など、未来へ向かって柔軟に変化を恐れない同社のさらなる躍進に期待したい。

西川裕順/1973年生まれ。芦屋大学を卒業後、外部のパン原材料製造会社に入社し2年間経験を積む。1997年4月、家業であるニシカワ食品株式会社に入社。入社直後から工場現場の管理や営業活動に従事し、人員管理の最適化や組織づくりに尽力する。2018年5月に株式会社グルメサービス常務取締役に就任し、2022年3月よりニシカワ食品株式会社の代表取締役副社長に就任。