※本ページ内の情報は2026年8月時点のものです。

中学時代、1日10時間もの時間をゲームに費やした少年は、やがて15歳で起業の道を選んだ。株式会社WAKAを率いる代表取締役社長の野田慶多氏である。同社は現在、急成長するアメリカ発のUGC(ユーザー生成コンテンツ)プラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」を舞台として、企業のマーケティング支援や、アニメの海賊版問題の解決に挑んでいる。10代や20代の世代の熱狂を深く理解し、強い当事者意識で新たな市場を開拓し続ける。本インタビューでは野田氏に同社創業の経緯と未来への展望を聞いた。

学校を離れて没頭したゲームの世界 15歳での起業とプラットフォームの可能性

ーーまずは、創業に至るまでの経緯を教えていただけますか。

野田慶多:
経済的に自立して、誰からも干渉されずにゲームに没頭したいと考えたことがきっかけです。私は中学生の頃からオンラインゲームの「Fortnite(フォートナイト)」にのめり込み、3年間で約6,000時間、1日平均10時間プレイし、半年ほど学校へ行かない時期もあったほど熱中していました。当初は「誰にも干渉されずゲームの世界にいたい」という思いでしたが、次第に「この空間の中で自ら事業をつくりたい」という明確な目標へと変わり、15歳で起業して資金調達を行いました。

ーー最初はどのような事業からスタートしたのですか。

野田慶多:
「Fortnite」内で、歴史などをゲーム感覚で学べる教育コンテンツをつくる事業からスタートしました。しかし事業化のハードルが高く、創業から1年ほどでブランド向けのマーケティング支援へと主軸を移しています。その転換のきっかけは、「Fortnite」内で開催された世界的ラッパー、トラヴィス・スコットのバーチャルライブでした。現実ではあり得ない何百万人ものユーザーが同時に集まる熱狂を目の当たりにし、私自身もゲームを通じて新しいアーティストを知るという強烈な体験をしたのです。

この経験により、ゲームがプロモーションツールとして絶大なポテンシャルを持っていることを確信しました。そこで、まずは「Fortnite」内での広報・PR支援に完全に舵を切り、事業を拡大させました。その後、事業を展開するプラットフォームを、当時さらに成長性が高く勢いのあったアメリカ発のゲーミングプラットフォーム「Roblox」へと徐々に移行していきました。

月間440万人が熱狂 若年層を掴む絶妙なバランスのマーケティング

ーー現在主戦場とされている「Roblox」とは、どのようなプラットフォームでしょうか。

野田慶多:
「Roblox」はユーザー自身がゲームをつくり、投稿できるUGCのゲームプラットフォームです。アプリを開くと多様なゲームが並んでいて、動画サイトのような推奨機能があり、趣味嗜好に合わせて表示される仕組みです。

最大の特徴は交流要素の強さです。チャットや通話をしながら友達と一緒に遊べるオンラインの公園として機能しており、アメリカやヨーロッパを中心に広がりを見せ、日本には2022年に上陸しました。以降、国内だけでも既に月間440万人が利用する規模にまで拡大しています。

ーー今の10代を中心とする若年層(Z世代・α世代)には、どのような行動変容が起きているのでしょうか。

野田慶多:
一言で言えば、広告が届かないというよりも「見てはいるけれど、あえて受け取らない」世代になっています。テレビCMのように全員が同じ時間・同じ広告を見る時代は終わり、現代の若い世代はタイムパフォーマンス(タイパ)を非常に重視しています。広告ブロックブラウザアプリやYouTubeプレミアムなどの普及により、「お金を払ってでも広告を消す」ことが当たり前になっているため、テレビやネットでの従来型広告でのアプローチはノイズとしてネガティブに受け取られてしまうのです。

特にα世代は、物心ついた時期がちょうどコロナ禍と重なっていました。リアルな世界で過ごす時間が制限されていたため、ネットで交流することが最初から当たり前になっています。かつては「放課後、3時にいつもの公園に集まろう」と約束して遊具で遊んでいた体験が、彼らにとってはそのままスマホの中、つまり「Roblox」のゲーム空間へと完全に移行しているのです。

情報収集だけでなく、友達との思い出作りや感情のシェアといったディープな体験までがデジタル上で完結している。これが、今の若年層における最も大きな行動変容だと感じています。

ーー「Roblox」において、貴社はどのような事業を展開されていますか。

野田慶多:
主にブランド向けのプロモーションやマーケティング支援を行っており、10代や20代の世代に届けたい商材やテーマをゲーム化することで、遊びながら企業の魅力に触れてもらうコンテンツ制作を担っています。

弊社は20代後半を中心としたメンバー構成となっており、ユーザーとしての若い世代の感覚を深く理解しながら、大人の視点やブランド側の意図も的確に汲みとることができる、この絶妙なバランスを備えたチームであることが独自の武器であり強みとなっています。

権利者とクリエイターをつなぐ 海賊版問題の解決へ向けた挑戦

ーー事業を展開する中で、新たに見えてきた課題はありますか。

野田慶多:
現在、アニメの海賊版問題の解決に注力しています。個人が手軽にゲームをつくってヒットを生み出せる時代になった反面、「Roblox」上でも権利侵害が深刻な課題となっています。既存の有名アニメなどの知的財産を無断で使用したゲームが人気を集め、本来の権利者に利益が還元されないという問題が起きているのです。

ーー企業自らが公式コンテンツを制作・提供すれば、権利侵害の問題は防げるのではないでしょうか。

野田慶多:
実は、既存の企業が正規のコンテンツを出しても、全く遊ばれないケースが少なくありません。プラットフォーム特有の文化やユーザーの感性を理解せずにつくってしまい、結果として「海賊版の方が面白い」と敬遠されてしまうからです。そこで私たちは権利者に寄り添う姿勢を大切にし、ユーザーコミュニティからも支持される公式コンテンツをつくれる仕組みを構築しました。明確な課題に対し、効果的にアプローチできる正規の手段を今後も届けていく考えです。

ゲームが新たなメディアになる時代 ともに未来をつくる仲間を求めて

ーー今後の展望と、貴社のビジョンについてお聞かせいただけますか。

野田慶多:
現在、ゲームは単なる遊びから、若い世代が交流する「新たなSNS・メディア」へと完全に進化しました。この市場の急激な変化の中で、大きく2つの課題が生まれています。1つ目は、「若年層にメッセージが届かない」という企業のマーケティング課題です。先ほどもお話しした通り、今の10代・20代には従来の広告がノイズとして弾かれてしまいます。彼らが熱狂する「Roblox」のような空間に参入する企業も増えましたが、特有の文化を理解していなければ見向きもされません。

2つ目は、個人発信の増加に伴う「アニメなどの権利侵害(海賊版)問題」です。私たちは、この「企業と若年層のすれ違い」や「権利者とクリエイターの摩擦」を解消する最適な解決策(ソリューション)を提供し続ける存在でありたいと考えています。そのためにも、まずは次世代の主役である10代・20代が「今、何に熱狂しているのか」。そのリアルな事実を、より多くの企業に知っていただき、理解を広げていくことから始める方針です。

ーー最後に、未来の仲間に向けてメッセージをお願いします。

野田慶多:
これから先に目指す姿を実現し、事業をさらに拡大させていくために、私たちは現在採用を強化しています。この市場の成長期は1、2年以内に確実に訪れます。だからこそ、今の段階から新しい市場の可能性に関心を持っていただきたいと考えています。私たちが取り組む社会的な課題に対し、力を発揮していただける方との出会いを期待しています。新しいエンターテインメントの枠組みを一緒につくり上げていける方をお待ちしています。

編集後記

1日10時間をゲームに費やした原体験から、15歳で起業を果たした野田氏。一見すると型破りな経歴だが、その言葉の端々からは確かな視座が感じられた。Z世代やα世代の心理を冷静に分析している。現在は、ゲームが単なる娯楽を越え、新たなメディアへと進化する過渡期にある。ユーザーと企業、双方の視点を併せ持つ同社の「絶妙なバランス感覚」と真摯なアプローチは、未開拓な新市場における確かな指針となるに違いない。高い熱量で次なるパラダイムシフトを見据える同社が、さらなる飛躍を遂げる未来は、もう目の前まで来ている。

野田慶多/株式会社WAKA 代表取締役社長。2007年生まれ。栄光学園を中学2年生で中退し、15歳で起業。2023年に「EbuAction」として設立した会社を、2026年に株式会社WAKAへ社名変更。「熱中を、新たな価値へ昇華させる。」をミッションに掲げ、「Roblox」上で日本のブランド・IPと熱中をつなぐ熱中コンテンツスタジオを展開、東京都・NTTドコモ・アサヒ飲料などの案件を手掛ける。2026年、Spiral Capitalをリード投資家として、総額2.5億円の資金調達を実施。自らもZ世代の当事者として、若者目線のマーケティング設計を強みとする19歳。