※本ページ内の情報は2026年8月時点のものです。

京都大学を卒業後、金融機関で統計分析などのキャリアを築いていた山田健太郎氏。当時は家業の物流会社を継ぐ気は一切なかったという同氏だが、現在は株式会社三協の代表として、自社開発システムを強みに独自の物流サービスを展開している。三協に入社直後の経営危機をいかにして乗り越え、現在の成長軌道を描いたのか。他業界から物流の世界へ飛び込んだ同氏の軌跡と、今後の展望に迫る。

家業を継ぐ決意 データ分析による組織の立て直し

ーーまずは、家業である貴社へ入社するまでの経緯をお聞かせください。

山田健太郎:
以前は金融機関でリスク分析や統計分析などの市場分析業務に9年間携わっており、家業を継ぐ気は全くありませんでした。在職中は大学院に通いMBAを取得するなど、金融機関でのキャリアアップや外資系への転職も視野に入れており、当時は打診を受けても何度も断っていました。前職の支援でMBAを取得中だったことへの恩義に加え、結婚直後というタイミング、さらには家業の経営状況に対する不安もあり、環境を変えることには強い抵抗があったのです。

しかし、父親からの強い説得を受けてその熱意に触れ、最後は腹をくくりました。安定した環境を手放すことで家族に対する申し訳なさを抱えつつも、「会社を成長させて利益を確保し、自分のこの選択を正解にするしかない」と覚悟を決め、家業へ戻ることを決意したのです。

ーー入社直後の社内の状況はどのようなものでしたか。

山田健太郎:
物流事業は順調でしたが、新規事業である太陽光発電や電力などのエネルギー事業はそうではありませんでした。入社から半年以内には当時の主力メンバーが複数人退職し、その他の従業員も大量に離脱するという大きな経営危機に直面しました。その影響もあって、当時展開していた新規事業の太陽光発電事業は、全体としてはとんとんといった状態になってしまったのです。

そんな状況を打開すべく、私は前職で培ったデータ分析やMBAの知見を活かして組織改革に着手しました。具体的には、太陽光事業の営業スタイルを訪問販売から法人営業へと切り替え、マーケティングを徹底的に見直しました。さらに、もう一つの新規事業だった電力事業をゼロから年商20億円規模へと成長させ、2018年にこれらの事業を大手企業へ売却することで、会社を大きく持ち直すことができたのです。

業界ごとの課題を解決するシステム構築と4つの役割分担

ーー改めて、現在展開されている事業内容と貴社の強みを教えてください。

山田健太郎:
現在は、お客様の商品を弊社の倉庫でお預かりし、在庫管理や出荷業務を一括で担う「物流アウトソーシング事業」と、お客様の倉庫へ直接出向いて業務改善を支援する「物流改善コンサルティング事業」の2つの柱で構成されています。

これらの事業を展開する上で弊社の最大の強みとなっているのが、自社開発の物流システムを顧客ごとに細かくカスタマイズできる点にあります。業種によって抱える物流の課題は千差万別と言えるでしょう。たとえばアパレル商材であればサイズ違いなどによる返品対応への最適化、化粧品であれば使用期限の管理や、転売を防止するためのロットナンバー照合機能などが求められます。

また、お菓子などの食品類であれば、システムに温度管理をどう組み込むかが重要です。このように、商品特性に合わせた複雑な課題に対し、柔軟にシステムを構築することで、「誤出荷ゼロ」をはじめとする極めて高いクオリティの物流品質を実現しているのです。

ーーどのような体制でサービスの提供を進めているのでしょうか。

山田健太郎:
4つの専門職による明確な役割分担を敷いています。まず営業担当がお客様の課題を詳細にヒアリングし、次に物流改善のプロフェッショナルであるストレージプランナーが課題解決に向けた物流業務フローを設計。その後、設計されたフローに合わせてエンジニアがシステムを構築し、最後に現場の所長が実際の運用を担います。この4名の高度な連携体制によって、他社では解決できなかった難しい課題にも対応し、質の高いサービスを提供しているのです。

AI時代に求められるのは「残り20%」を追求できるプロフェッショナル

ーー専門的なチーム体制を強固にするため、現在どのような人材を求めていますか。

山田健太郎:
先ほども話題に出た「誤出荷ゼロ」という最高水準の物流品質に向けて、最後までやり抜くプロ意識を持った方を求めています。これからの時代、80点のアウトプットはAIがすぐに出してくれます。しかし、そこから100点に近づけるための残り20%の微調整や、経験則に基づく感覚的な判断は人間にしかできません。そうした言語化されていない領域を深く追求し、難しい課題に挑戦することを楽しめる人に来ていただきたいですね。

ーー最後に、今後の展望や注力していきたい事業についてお聞かせください。

山田健太郎:
まずはしっかりと利益を生み出し、成長への好循環をつくり出すことを最優先に考えています。そのための軸として、今後は「物流改善コンサルティング事業」をさらに拡大していく方針です。

これまでの物流アウトソーシング事業は弊社の倉庫を使用するため、スペースの物理的な制限があり、関東圏のお客様や売上規模の大きな企業様からのご依頼をお受けしづらい課題がありました。しかし、お客様の倉庫へ出向くコンサルティング事業であれば、エリアや規模の制約がなくなります。利益率も非常に高いため、ここで得た原資を新たなシステム開発や人材採用へと積極的に投資することが可能です。

これらに加えて、新規事業として「CLO(最高物流責任者)」の育成支援にも取り組みます。昨今の法改正に伴い、大企業を中心に物流の専門責任者を設置する動きが進んでいますが、自社での人材育成に悩む企業は少なくありません。私たちがこれまで培ってきたノウハウを生かしてこうした社会課題を解決し、さらなる事業拡大につなげていきたいですね。

編集後記

深刻な経営危機から、前職で培ったデータ分析の知見と実行力で会社を立て直した山田代表。独自のシステムを強みとし、課題抽出から現場運用までを分業化する組織体制は、極めて論理的かつ戦略的である。一方で、「100点を追求するのは人間にしかできない」と語る姿からは、品質に対する熱い思いが感じられた。物流業界の課題解決に挑む同社の取り組みに、引き続き注目していきたい。

山田健太郎/1983年9月24日生まれ。京都大学卒業。金融機関に入社し9年の修業を経て、2015年に株式会社三協に入社。2012年から2年間、一橋大学に通いMBAを取得。