※本ページ内の情報は2026年8月時点のものです。

大手流通業を経て訪問販売の世界で確かな実績を残した横山和良氏。株式会社トムコで要職を歴任した後、M&Aによって経営危機にあった宮村産業株式会社の再建を特命で任された。そこからわずか3年で負債を完済しV字回復を成し遂げた裏側には緻密な営業理論と「お客様を自分の身内のように大切にする」という熱い信念があった。厳しい状況の企業をいかにして立て直し、地域になくてはならない存在へと進化させたのか。その軌跡と未来への展望に迫る。

大手流通業から訪問販売へ 現場で掴んだ「営業の鉄則」

ーーまずは、これまでのキャリアについて教えていただけますか。

横山和良:
私のキャリアの原点は、学生時代のアルバイトでの販売経験に遡ります。当時、ガソリンスタンドでアルバイトをしており、給油作業の傍らで物販にも力を入れていました。実際に、ガソリンタンクの水抜き剤などの販売で、標準の3倍ほどの売上を出していたのです。この頃からお客様に商品を提案して販売する面白さに目覚め、もともと自分は営業という仕事が好きだったのだと思います。

そのような経緯もあり、社会人となってからは大手流通業へ入社し、販売部門で5年間勤務しました。当時の職場は、ともに働いていたパートの方々と現在もつながりがあるほど人間関係に恵まれ、大企業ならではの安定感もありました。しかし、次第に「自分のやりたいことをもっと裁量を持って進めたい」という思いが強くなっていったのです。

ーーその後はどのような道へ進まれたのでしょうか。

横山和良:
より大きな裁量を持って働ける環境を求め、2社目として教材の訪問販売を行う企業へ転職しました。昼から夜にかけて1日に100件から200件の訪問を重ねるような厳しい環境でしたが、自身の裁量で動ける働き方が合っており、着実に成果を上げていきました。この経験から「営業実績=意欲×訪問件数×提案の質」という法則を導き出しました。これら3つの要素の掛け算が営業の基本であり、一つでも不足があれば実績は上がりません。各要素を分解して分析することで不調の原因も明確になるため、この論理はその後の営業指導における大きな基盤となっています。

たった一人で飛び込んだ再建の道 3年で多額の負債をゼロに

ーー現在の宮村産業へ赴任された経緯を教えてください。

横山和良:
訪問販売の会社を経た後、3社目として株式会社トムコに入社しました。そこではリーダーから店長を経て、統括までを歴任したのですが、私が統括を務めていたときに、M&Aによって現在の宮村産業がグループに加わったのです。

当時の宮村産業は多額の負債を抱え、極めて厳しい経営状況にありました。そこで、私一人が立て直しの特命を受け、宮村産業へ赴任することになりました。赴任当時は従業員の間に不安が広がっており挨拶もまばらな状態でした。「M&Aによって人員整理されるのではないか」と強く警戒されていたのだと思います。

ーー具体的にどのように組織の立て直しを図ったのでしょうか。

横山和良:
従業員を喜ばせて安心させることを最優先に取り組みました。たとえば、一緒に重い給湯器を運んだりして現場の業務を徹底的に支援するなど、「私は皆さんの味方だ」と行動で示したのです。同時に会社の課題を200項目ほど洗い出し、短期・中期・長期の計画に分類しました。

短期的な最優先課題は赤字の要因を断ち切ることです。過去の工事代金の未収金や利益を度外視した価格設定を正常化しました。その上で「営業力の強化」に着手し、模擬演習を重ねて小さな成功体験を積むことで従業員の行動が前向きに変化したのです。さらに決算も月次で確認するようにして、利益増減の要因を毎月細かく分析して指導を行いました。これらの取り組みの結果、3年で多額の負債を完済し、現在に続くV字回復を達成できたのです。

ーー現在展開されている事業やお客様への姿勢についてお聞かせください。

横山和良:
現在はガス機器や給湯器の販売・設置工事を主軸に、住まいに関するあらゆるご相談を承っています。具体的にはリフォームや電気・通信などのインフラ関連、不用品の回収、家屋の解体、不動産紹介まで幅広く展開しています。

事業を行う上で最も大切にしているのは「お客様に自分の身内のように接する」ことです。私がこの業界で最初に販売したのは、お風呂のゴム栓をつなぐ数百円ほどの鎖でした。この小さなお困りごとの解決を機に、そのお客様とは家族のようなお付き合いが始まりました。私が社長に就任した際、その方は涙を流して喜んでくださいました。こうしたお客様との絆こそが、私の仕事における原点です。出会った人を「とことん幸せにする」姿勢こそが、企業の信頼につながり、次なる仕事へ結びつくと確信しています。

全てのお困りごとを解決する「総合窓口」を目指して

ーー採用においてはどのような人材を求めていますか。

横山和良:
何よりも「素直さ」を重視して採用を行っています。過去の経験や過度な自負心に固執せず、助言を素直に受け入れてひたむきに行動できる人の方が、結果的に大きく成長するからです。実際に営業未経験で入社した若手社員が、素直に実践を重ねることで確かな実績を上げています。

ーー今後はどのような展望を描かれていますか。

横山和良:
宮村産業をお客様のお困りごとをすべて解決できる会社にしたいと考えています。お客様から「こんなことはできないか」と相談された際、「自社で対応できます」「専門の協力会社をご紹介します」と即座に応えられる総合窓口のような体制です。ガスや設備の枠を超えて地域の方々の生活に寄り添い続ける企業ブランドを確立し、今後も新たな価値を提供し続けていきます。

編集後記

厳しい状況にあった企業を特命を受けて見事に再建させた横山氏。その実績の裏には、営業力を徹底して強化する緻密な「営業の掛け算」の論理と、「現場への深い愛情」が存在していた。数百円の風呂の鎖から始まったお客様との絆を何よりも大切にし「出会った人をとことん幸せにする」と語る姿勢に地域密着型ビジネスの本質がある。お客様のあらゆる困りごとを解決する拠点へと進化を続ける宮村産業のさらなる飛躍に期待したい。

横山和良/神戸市出身。近畿大学を卒業後、大手流通業に就職。その後、自分の強みを活かしたいとの思いで営業に転職し、約20年間に及んで営業に専念。その後、管理職を経て2020年にM&Aで宮村産業に出向。2026年、同社の取締役社長に就任。現在は、従業員、お客様がとことん喜んでもらう仕掛けを追求している。