
「ゼロからイチを生み出す起源でありたい、しかしひとりでは成し得ない」。そんな想いを背景に名付けられた株式会社ジェネシア。同社は産業用の超高性能レンズユニットの開発から、宇宙専用カメラの製造までを手掛ける技術者集団である。同社の代表取締役を担うのは学生時代からレンズ設計の最前線に立ってきた武山芸英氏。「理学」と「工学」の両輪から多様な産業間に横串を通してきた。事業の本質と「宇宙の技術で地上の人々に貢献する」という目標について話を聞いた。
社名に込めた「結合」への意志と起業の原点
ーーまずは、現在の事業の原点について教えてください。
武山芸英:
レンズを扱う会社での経験が原点です。大学で光工学を専門的に学ぶ傍ら、2年生から光学機器を扱う会社でアルバイトを始めました。当時、会社は海外からのコピー品に対抗すべく、自社製レンズの迅速な改良開発を迫られていました。しかし市販の設計ソフトには機能的な限界がありました。そこで私がゼロから設計ソフトウェア(CAD)を開発することになり、大学院修士課程を修了するまでその業務を一貫して担当しました。自身が作ったソフトで設計された光学系がそのまま製品として世に出るという貴重な経験を得たことで、光工学の実践的な面白さに深く惹かれ、そのまま同社へ就職する道を選んだのです。
入社後、会社の新たなビジネスチャンスを探るためにビジネス展示会に出展をさせてもらったことが、次なる転機となりました。そこで医療や建築測量、天文学など、多様な産業の顧客から特注品のお仕事を頂くようになりました。その経験から、異なる産業でも本質的に求める「光の技術」は同じだと気づいたのです。豊富な知識や経験があるからこそ「この技術はお客様の分野にも使えますよ」と提案できます。技術で産業間に「横串」を通し、顧客の課題を解決してきた蓄積が現在の事業につながっています。
ーー「ジェネシア」という社名にはどのような思いが込められているのでしょうか。
武山芸英:
「ジェネシア」は、「ジェネシス(起源)」を語源とする接尾語です。それ単独では成立せず、他の名詞と連結させることではじめて完全な一語となります。ここに私たちの想いが重なります。私たちは何事かを成すとき、ゼロからイチを生み出す強い存在でありたいと願っています。一方で、事業は自分たちだけで完結するものではありません。社会の需要や他社、あるいは次の時代に向かうテーマと連携することによって目指すべき価値が発揮されます。私たちが今事業を展開できるのは、先人たちが築き上げた社会基盤のおかげです。その初心と感謝を根幹とすべく、諸分野やステークホルダとの結びつきを前提とした名前を付けたのです。
「モノ」を売るのではなく顧客の「利益」を創出する

ーー現在展開している主な事業内容について教えてください。
武山芸英:
事業の柱は大きく分けて3つあります。
1つ目は、産業用の超高性能レンズユニットの開発を通じたコンサルティングと利益の創出です。他社には製造が困難な極めて高性能な製品群は、現在の弊社の経営基盤を強固に支える主力事業に成長しました。ただし、私たちはレンズというハードウェアを媒体として、お客様の「こんなことができないものか」というお困りごとを解決し、利益創出に直接寄与することを本質としています。単なる製造販売ではなく、お客様が享受する利益を最大化した結果から当社の貢献分を対価としていただくことで、社会全体の利益を創造する経営構造をつくり込んでいるのです。
2つ目の柱は、科学技術への貢献です。当社は、研究機関から学術関連機器の開発業務をお請けすることがよくあります。その際、並行して自社の関連研究開発を進めるようにしています。こうすることで自社の研究予算の制約に縛られることなく、常に新しい技術を獲得し続けられる環境を整えられました。
そして3つ目が、私が現在最も強い関心を寄せている宇宙ビジネスです。宇宙産業システムは日本の安全保障にも深く関わる重要な分野であり、国民の皆様の安寧な社会や経済活動を実現するための基盤創出を目指しています。これは決して私たち単独で成し遂げられるものではありません。しかしそれでも、弊社を起点に数千億円規模の市場を創出することに対して、圧倒的な寄与を果たしていきたいと考えています。
ーー貴社ならではの強みはどこにあるとお考えですか。
武山芸英:
最大の強みは、お客様の困りごとを着実に解決できる起創力と技術力にあります。私達の主力製品である産業用の超高性能レンズは、コンクリートに落としても性能の劣化なく、気圧の変化にも影響されません。部品を製造できても、それが設計通りにつくられているか的確に「測る」技術を持つ企業は限られます。こうした技術を背景に、顧客のビジネスそのものについて改善提案をし、着実に利益を得て頂ける様にサポート申し上げられることが、私達がお客様から支持をいただけている理由になっています。真理を探求する「理学」と、人々の幸せを充足する「工学」は車輪の両輪であり、その車軸の上でビジネスを展開してお客様に価値を提供できるのが、弊社の強みだと考えています。
宇宙の技術で地上の人々に「安寧」を届ける
ーー今後の展望についてお聞かせください。
武山芸英:
今後は「宇宙事業の拡大」に注力し、宇宙から得た技術や画像を活用して、地上の人々の産業発展や新しい社会を築き、人々に「安寧」を届けることを目指します。宇宙産業は活況ですが、人が住んでいない宇宙空間単独では経済は循環しません。私達は、宇宙から得たデータを、地上の人々の生活や産業にどう貢献させるかを見極めていこうとしています。
ーーその目標を、具体的にどのような形で社会実装していくお考えですか。
武山芸英:
自社開発の宇宙専用カメラを人工衛星に搭載し、地球を観測します。単に写真を撮るのではなく、赤外線などの光の波長を使って「何が起きているか」を分析するのです。森林の葉の水分量から山火事の危険性をいち早く行政に知らせたり、海上の赤潮の兆候を察知して漁協に知らせたりできます。地下の高圧電線からの異常な熱を検知することも可能です。地表で何が起きているかを関係者へ迅速に知らせ、「次に何をすべきか」を判断できる情報を提供する企業へと成長していきます。
ーーともに市場を拡大していく仲間として、どのような人材を求めていらっしゃいますか。
武山芸英:
新しい市場をつくり出すためには、組織が「大きい」ことに限らず「小さくて強い」ことが重要です。弊社はまさに、単なる作業に留ることなく本質的な機械設計やシステムの開発にこだわりを持つ方の経験が活きる環境だといえます。真に新しいことを成し遂げる過程には、多くの困難があります。楽しいことばかりではありませんが、その苦労の先にある突破口を見つける喜びを共有し、ともに社会実装へ向けて挑戦できる。そんな熱意を持つ方と巡り会えれば嬉しいですね。
宇宙を利用して人々の安寧な社会をつくることに共感し、当社のビジネスを一緒に拡大してくださる人々と協力して、新たな価値を創造していきたいと考えています。
編集後記
未知の領域を開拓し、社会課題の解決を目指す武山氏の言葉には、確かな実績に基づく説得力がある。単なるハードウェアの製造にとどまらず、「理学」と「工学」を掛け合わせて顧客の事業を根本から支える姿勢は、まさに社名に込めた「他者との結合」の体現だ。あえて規模を追わず「小さく強い組織」であり続ける哲学のもと、宇宙という壮大なスケールから地上の生活を守るエコシステムの構築に挑んでいる。新たな市場の「起源(ジェネシス)」として、同社の技術が社会にどのような変革をもたらすのか、その確かな歩みをこれからも注視していきたい。

武山芸英/1962年、岐阜県出身。学生時代は工学と理学を学ぶ傍ら、アルバイトをしていた会社に就職。15年間にわたりビジネスの在るべき姿を学ぶ。1996年、33歳で株式会社ジェネシアを創業し代表取締役に就任。