※本ページ内の情報は2026年8月時点のものです。

株式会社ベルクラインは、交通事故・離婚・遺産相続・債務整理・刑事事件など、トラブルの分野ごとに弁護士を探せる専門ポータルサイト「弁護士ほっとライン」を運営する企業である。同社が掲げる事業の根幹には、「情報の非対称性による不利益を解消し、知らずに損をしている人をなくしたい」という強い信念がある。売上高が立っていた自社の退職代行事業を、わずか1年で撤退させた決断の裏にも、ユーザーの権利保護を最優先する姿勢が貫かれていた。飾らない言葉で本質を突く小山誉彦氏に、創業からの歩みと事業にかける思いをうかがった。

「負けたくない」から始まった起業 ひとりで走った最初の2年間

ーーまずは、これまでのご経歴を教えてください。

小山誉彦:
15歳で社会人になって、19歳までは建設業界で職人をやっていました。その後、英語を覚えたくて六本木のバーでアルバイトを始めたところ、そこで出会った方に勧められて営業会社に入社しました。そこから22歳以降はずっと営業一筋で、おかげさまで、入社した会社ではすべてNo.1の営業成績を獲得できました。

独立前の4年間は、法律事務所向けのサービスを展開する会社で弁護士への営業活動をしていたため、独立時に商材で悩むことはありませんでした。4年携わって得意分野になっていたため、弁護士向けのサービスなら結果が出せるだろうと考えていたんです。

ーー独立を決めた直接のきっかけは何だったのでしょうか。

小山誉彦:
環境ですね。大人になってからも定期的に集まる中学の同級生が4人いて、一緒にサッカーをプレーしていたのですが、そのうちの2人が経営者だったんです。自分も負けたくないという気持ちが大きく、起業に踏み込んだわけです。また前職では、社長と2人きりの規模から会社が大きくなっていく過程を間近で見てきました。事業が拡大していく様子を目の当たりにするうちに、自分でもやってみたいと思うようになったんです。

ーー当初は何名で事業をスタートされたのですか。

小山誉彦:
ひとりです。2年間ずっとひとりでした。自宅の1Kの部屋がそのままオフィスで、起きたらもう会社です。ただ、これが良くありませんでした。ひとり自宅で事業をしていると、家賃も人件費もかからないので、自分が生活できる分しか売上高を上げる気にならないんです。どこまでやればいいのかも、だんだんわからなくなってくる。そんなときに先輩経営者から「人を雇わないとダメだ」と言われて、採用に踏み切りました。

そこからは一気に事業が拡大していきましたね。目の前に宝箱がたくさんあったのに、ずっと開けていなかったような感覚でした。社員が入ったことで「やらなければ」と腹が括れたんです。それは、自分ひとりだけでやっていた頃には決して入らなかったスイッチでした。

分野ごとにサイトを分ける 「弁護士ほっとライン」のスタート

ーー主力事業である「弁護士ほっとライン」を始めた背景は何でしたか。

小山誉彦:
弁護士は、毎年増え続けているんです。司法試験に受かる人が毎年出てくる一方で、引退に定年があるわけではなく、70歳、75歳になっても続けている先生がいます。だから人口に対する弁護士の割合はどんどん上がっていて、せっかく資格を取っても集客が大変なんですよ。そこを支援するサービスには意味があると考えました。

たとえば、飲食店なら「食べログ」、美容室なら「ホットペッパービューティー」があって、今から参入しても勝てません。その点、弁護士向けにはまだそこまで絶対的な存在がいない。だからこの領域を選んだのです。

ーー他社のサービスと比べた際の独自の強みはどこにありますか。

小山誉彦:
サイトのつくり方がまったく異なります。大手のポータルサイトは1つの大きなサイトの中で、「この先生は交通事故と離婚と債務整理に注力しています」という見せ方をしていることが多いです。それに対して弊社は、分野ごとにサイトを丸ごと分けているんです。

ドメインから交通事故、離婚・不倫慰謝料、遺産相続、債務整理、刑事事件、風評・誹謗中傷などと、計7つの専門ポータルサイトに分けています。離婚で困っていて、離婚に強い弁護士を探している人からすれば、離婚専用のサイトのほうが悩みに直結していて使いやすいはずですよね。本当に、それだけのことなんです。

ーー高い検索順位を獲得し続けられている理由はどこにあるとお考えですか。

小山誉彦:
今は小細工が通用する時代ではありません。昔は無理やりクリックさせたり、関係のないサイトからリンクを集めたりすれば検索順位が上がりました。飲食店のサイトから弁護士のサイトにリンクが張ってあるような、今考えればおかしな状態でも、当時はそれで評価されていたんです。

しかし、今は中身がすべてです。検索した人の悩みを解決できる答えが載っていて、このサイトだけで完結できる。それが一番いい形なんですね。だから弊社は、弁護士を探せる機能だけでなく、厳格に管理されたライターによる良質なコラムをひたすら書き続けている。本当に、それに尽きます。

ーー実際の導入事例や成果について教えていただけますか。

小山誉彦:
ある法律事務所に勤めていた弁護士の先生で、事務所全体の案件をこなしつつ、個人としても自分の案件を受任できる働き方をされている方がいたんです。その先生が個人の集客のために弊社のサービスを使ってくださったところ、見事に集客が軌道に乗り、そのまま独立を果たされました。今では弁護士を何人も雇って全国展開されています。

弊社はあくまでプラットフォームなので、相談者から直接ご報告をいただくことはありません。ただ、どこかの事務所の電話が鳴ったことはこちらでもわかる仕組みになっていて、日々かなりの数の相談が入っています。何年もずっと使い続けてくださっている先生もたくさんいるのです。

売上高が立っていた退職代行事業から1年で撤退

ーー退職代行事業は、現在は展開されていないとのことですが、なぜでしょうか。

小山誉彦:
1年やってみて売上高は立っていたのですが、「これは弁護士案件だな」と判断してやめました。退職代行で民間企業ができるのは退職の意思を伝えることだけで、それ以上踏み込んで交渉すれば非弁行為(弁護士資格を持たない人が、報酬を得る目的で法律事務を扱うこと)になってしまいます。でも実際は、残業代も有給の消化も、交渉が必要になる話なんですよ。

ーー民間の代行業者で交渉を行えない場合、依頼者にはどんな不利益が生じるのですか。

小山誉彦:
たとえば退職日です。4月25日付で辞めるのと、4月30日付で辞めるのとでは、まったく違う。出勤しなくても30日付にしておけば、その月は社会保険に入っていられるので、将来もらえる年金も変わりますし、国民健康保険に入り直す必要もない。会社側からすれば25日付のほうが社会保険料の負担が軽いので、そう提案してくることもあります。

退職日は本来、退職者が決められるものです。でも交渉ができない事業者は、そもそもそれを依頼者に説明しません。試しに私が他の事業者に相談してみたところ、退職日は会社の都合もあるので希望通りにいかないこともある、という説明を受けました。有給についても、こちらから聞かなければ残日数の確認までは案内されない。これでは、本来の権利を使わないまま終えてしまうことになりかねません。

ーー貴社が退職代行を運営されていた際、依頼者へはどのように対応されていたのですか。

小山誉彦:
退職日も有給も、すべて依頼者に説明していました。ただ、私たちが代わりに会社へ伝える際に、民間企業の立場では「あくまで意思の伝達」しかできず、会社側から少しでも反論や条件提示があった場合、それ以上踏み込んで依頼者の権利を主張することができません。ですからこれを続けていても、本当の意味で依頼者を守り切ることはできないと痛感しました。何より、依頼者からすれば最初から弁護士に頼んで交渉してもらうのが一番良いわけですから、それなら自社での代行事業はやめよう、と判断したんです。

ーー自社で退職代行を手掛けた経験から得た気づきについてお聞かせください。

小山誉彦:
SNSでは弁護士側が「民間企業に頼むとこんなデメリットがある」と言い、一方で、民間企業側は「弁護士は高い」と言っている。しかし、自分たちで実際に試してみた上で、「やっぱり弁護士に依頼するのが一番いい」という確信を得ることができましたね。

「大げさなことは何もない」 建前を置かない経営

ーー社員の皆様に対しては、どのような方針で接していますか。

小山誉彦:
社員を大切にしている自負はあります。営業会社と聞くと厳しいイメージがあるかもしれませんが、ノルマは一切ありません。その代わりインセンティブはきちんとあるので、貢献してくれた分はちゃんと増える仕組みにしています。働き方も本人の希望次第で、家族との時間を大切にしたいから在宅がいいという社員は、在宅で働いてもらっています。毎年の新年会には、社員の家族も招いたりしていますよ。

また細かい話ですが、取引先への支払いなどで発生する銀行の振込手数料みたいなものは徹底的に削っています。1回数百円でも毎月積み重なれば年間で大きな額になりますから、削れる経費は極力カットして、その分を従業員に還元したほうがいいですよね。名刺も最初は見積もりで10万円ほどのものを検討していたのですが、実際に採用したのは100枚1,000円程度のシンプルなものです。無駄な経費は一切使いません。

ーー業務の現場とは、どのように関わっていらっしゃいますか。

小山誉彦:
何事も、最初は必ず自分でトライします。営業もそうですし、退職代行のときも問い合わせ対応から会社への通知まで、最初は全部自分で行いました。理由は、基準をつくるためです。いきなり人に任せれば、その人が基準になってしまいます。「100件の問い合わせで50件しか受任できませんでした」と言われても「そうなんだ」で終わってしまうけれど、自分が実際に経験していれば、「このやり方なら70%はいけるはずだ」と言えますよね。もちろん最終的には現場に任せますし、その分野でより優秀な人が入ってきたら、その人のやり方を全部取り入れます。ただ、最初だけは自分でやる。心配性なので、自分の目で見ないと納得できないんです。

「弁護士に相談するなら、ほっとライン」といわれる存在へ

ーー中長期的には、どのような会社に成長させていきたいとお考えですか。

小山誉彦:
弁護士が独立・開業したときに、広告を出すなら「まずはベルクラインに聞いてみよう」と、一番に思い浮かぶ会社にしたいですね。弁護士の先生にとって、なくてはならないインフラのような存在になりたいと思います。そして相談者側にも、「弁護士に相談するなら、弁護士ほっとラインだ」と思ってもらいたいですね。今は「交通事故 弁護士 東京」のような検索で弊社がヒットするから、たまたま使っていただいている段階です。しかしそうではなく、ブランド名で直接指名・検索してもらえる状態にしたいと考えています。

今後は検索エンジンのアルゴリズム変更だけでなく、AIが検索画面上で直接回答を表示し、ユーザーがサイトをクリックせずに解決してしまう「ノークリック検索(ゼロクリック検索)」の流れが加速していきます。一般的なキーワード検索だけに頼るのではなく、「弁護士相談なら弁護士ほっとライン」と、直接名前で検索して選んでもらえるブランド力を構築していく必要があると考えています。

ーー今後、新たに立ち上げを計画している事業についてお聞かせください。

小山誉彦:
弁護士専門の人材紹介事業を立ち上げたいと考えています。お付き合いのある事務所は多いので、受け入れ先はすでにある状態です。あとは求職者である弁護士の方を集めるだけで、それも今の集客ノウハウでできる。ただ、社内に人材紹介の実務経験者がいないんです。経験者の方さえ来てくれれば新たな事業として成り立つので、該当する方はぜひご連絡いただきたいですね。年収もしっかりお出しするつもりです。

また、会社として大げさな目標を語るつもりはありませんが、利益を地域活性化に活用してもらうため、毎年自治体への寄付活動(昨年は20カ所、今年は30カ所)も続けています。

ーー最後に、事業を通じて実現したいことをお聞かせください。

小山誉彦:
「世の中から法律トラブルで損をする人をなくす」のが理念です。交通事故に遭って、保険会社から提示された金額をそのまま受け入れてしまう。離婚で本来もらえるはずの養育費や財産分与を知らないまま終える。逆に、請求された金額を「払わないとまずい」と思ってそのまま払ってしまう—。弁護士に依頼すると「お金を多くとられる」というイメージを持つ方がいますが、実際は逆で、弁護士に依頼して、やっと適正な条件になるんです。

弁護士は敷居が高い、費用が高いと思われがちですが、昨今は相談料無料の事務所も多いですし、相談した時点で「この案件ならこれくらいです」と見通しを教えてもらえます。依頼しなければ費用はかかりませんから、一度相談しておいて損はないんです。弊社のサイトのコラムを読むだけで解決できるなら、ユーザーの知識武装になりますからそれが一番いいと思います。何より「知らない人」が一番損をしてしまいますから。その上で相談が必要なら、そのまま弁護士を探すことが可能です。弊社のサイトの中で完結する設計にしているのはそのためです。

編集後記

最も心を動かされたのは、小山氏が持つ「真っ直ぐな合理性」と、その裏にある確固たる「責任感」だ。自らの足で現場に立ち、本質を見極めようとする姿勢からは、社会にはびこる情報の非対称性を打ち破り、誰もが適正な権利を守れる世界をつくり出そうとする並々ならぬ熱気が伝わってきた。社員への精神論を排し、利益の還元を第一義に掲げる組織づくりも、経営者としての深い誠実さの表れだろう。「法律トラブルで損をする人をなくす」という強い思いを乗せ、既存の枠に囚われない同社が、弁護士と相談者を繋ぐ絶対的なインフラとしてどのように進化していくのか、今後の展開から目が離せない。

小山誉彦/15歳で社会人となり、19歳まで建設業界で職人として従事。その後、営業の世界へ転身し、22歳以降は営業一筋のキャリアを歩む。法律事務所向けサービスを展開する企業で営業責任者として4年間従事したのち、2019年7月に株式会社ベルクラインを設立。2020年に弁護士検索サイト「交通事故相談弁護士ほっとライン」を開設し、2021年には他分野へ展開。2023年に「風評・誹謗中傷相談弁護士ほっとライン」、2024年に「退職代行弁護士ほっとライン」をリリース。社名はドイツ語の「Berg(山)」と「Klein(小さい)」を組み合わせたもので、直訳すると「小山」。会社=自分として、自社のサービスに責任を持つという意志が込められている。

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・交通事故相談弁護士ほっとライン
・離婚・不倫慰謝料相談弁護士ほっとライン
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