※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

スーパーでのアルバイトから流通の面白さに目覚め、家業の物流業界へ飛び込んだ阪南倉庫株式会社の代表取締役社長、堀畑浩重氏。英国留学で「ロジスティクス」の本質を学び、独自の指針である「設計倉庫」を掲げて次々と社内改革を推進してきた。物流を補助部門から経営戦略の中核へと引き上げ、地域に根ざしながら広い視野を持つ「グローカル」な組織を構築。そして「Better」を積み重ねて進化の最先端を目指す同氏の信念と、未来へ向けた思いに迫る。

アルバイト経験から流通の面白さへ 本質を求めた英国留学

ーーまずは、貴社へ入社された経緯を教えていただけますか。

堀畑浩重:
学生時代に経験した大手スーパーでのアルバイトが原点です。当初は閉店後の清掃作業を担っていましたが、徐々に任される仕事が増え、店舗の裏側を深く知るようになりました。当時は各店舗の職人が肉や魚をさばくスタイルから、専用の大型工場で一括加工する形へと移行する過渡期でした。そんな流通の現場が大きく変化する様子を肌で感じて「これからどんな時代になっていくのだろう」と強い関心を抱くとともに、その激動する流通を根底で支えているのが、物流という機能なのだと気づかされたのです。

その頃は既に就職活動を行って中小メーカーから内定を得ていたものの、物流の奥深さにすっかり魅了されていました。そんな背景から「これほど面白い仕事ができるなら、ぜひ自社で働きたい」と考え、父に頼み込んで入社させてもらいました。

ーー入社後は、どういったキャリアを歩まれたのですか。

堀畑浩重:
まずはイギリスの大学院へ2年間留学しました。弊社へ入社するにあたって、物流の本質的な部分を学びたいと考えていましたが、当時は日本に物流や流通を専門的に教える学科がなく、なおかつ、やるからには本質を学びたいという思いがあったからです。

留学先で学んだのは、「マーケット内でマーケティングを駆使していかに取引先を勝たせるか、それをサポートするのが物流である」という本質的な概念です。メーカーや小売業者といった顧客が優位に勝ち続けるために、物流が何をすべきかを考える。これが私の仕事の原点になりました。

現場から経営へ グローカルな組織と「ビジョンマップ」の策定

ーー帰国後、どのようにその学びを社内へ浸透させていったのでしょうか。

堀畑浩重:
いきなり理論を語っても現場には伝わらないため、まずは4年間かけて全営業所を回り、通常の業務を経験しました。その後、「戦略企画室(戦略経営室)」という新しい部署で動き始め、業務フローや手順書を図式化して、顧客や社員と共通認識を持ちながら業務の合理化を進めていったのです。

役員時代には全国展開や海外展開への挑戦も検討しました。しかし、拠点を無闇に増やすことは、中小企業の戦略としてリスクが大きいと判断したのです。何でも自社で抱え込むのではなく、信頼できるパートナーと協業し、私たちはしっかりと地域に根ざした企業文化をつくる。目線は世界や全国に向けつつ、足元は地元を大切にする「グローカル」な企業であることが採用面を含めても魅力的だと考えました。

ーーその後、経営トップとして新たに取り組んだことを教えてください。

堀畑浩重:
2017年に社長に就任したタイミングでは、会社の方向性が全社員へ伝わるように、ビジョンを掲げました。具体的には、若手社員にも浸透するように35歳以下のメンバーを中心としたビジョンマップの作成プロジェクトを発足させ、1年かけてミッションを構築したのです。そしてそこで、「倉庫は社会を知っている」という言葉を打ち出しました。社会構造の結節点である物流の重要性を再定義するとともに、このビジョンを社内外へと、ともに伝えていく努力も積極的に行いました。

「補助部門」からの脱却と強みとしての機能拡張

ーー貴社の事業の強みや特徴についてお聞かせ願えますか。

堀畑浩重:
最大の強みは、お客様の物流部門が持つ権限を経営に近いところまで引き上げ、ともに経営戦略として物流を語り合えるパートナーになることです。メーカーや小売事業者において、物流部門はどうしても生産や販売を支える「補助的な役割」と見られがちです。しかし弊社では、単に荷物を保管したり作業をこなしたりするだけではなく、ビジネスを勝たせるための多様な機能を明確に提案しています。例えば、在庫誤差を極限までなくす「品質保持機能」は、お客様が抱える余分な在庫の圧縮に直結します。

また、大量につくりたい製造側と必要なときに少しずつ売りたい販売側のズレを埋める「時間調整機能」や、大きなロットで納品されたものを細かく分けて出荷する「単位調整機能」なども備えている点も特徴の一つになっています。このように、自社のリソースだけでは解決が難しい課題を機能的にサポートできるのが弊社の役割です。

さらに、食品や飲料から機械部品、アパレル、アウトドア用品まで、非常に幅広い業態のお客様とお取引をさせていただいており、特定の業界に依存せず、多様なマーケットの波を平坦化させることで、安定した事業基盤を築いている点も大きな特徴ですね。

ーー採用方針やグループ会社との相乗効果についてはどのようにお考えですか。

堀畑浩重:
現在は新卒採用をベースに、パートやアルバイトからの内部昇格なども取り入れながら、組織づくりを進めています。また、グループ会社にシステム開発を担う企業があるため、そこでの理系人材の採用も強化していく方針です。自社で導入している顧客ごとの生産性分析ソフトなどを活用し、内部の効率化や顧客への新たな提案へとつなげていきます。システムと物流のシナジーを生み出すことで、さまざまな課題解決に取り組んでいく考えです。

ーー最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

堀畑浩重:
私たちの目指す姿は「設計倉庫」です。わかりやすい図面を持ち、顧客と一緒に語り合いながら解決策を形にしていきます。最初からベストを押し付けるのではなく、常に「Better」を提案する。そのBetterを繰り返していくと、振り返ったときにその積み重ねが進化の最先端に行けるはずです。

さまざまな業態に携わり、顧客に寄り添いながらともに進化し続ける。従業員自身も、その過程で自分自身の物語の主人公になれる環境があります。物流にはそれだけの面白さと可能性があるのです。ここでの経験は、将来どんな道に進んだとしても必ず役に立ちます。そんな可能性に満ちた環境で、ともに成長していける仲間をお待ちしています。

編集後記

強く心を動かされたのは、物流業界に対する従来の固定観念を打ち破る堀畑氏の情熱だ。「顧客を勝たせるためのサポート」という確固たる信念が、言葉の端々からあふれ出ていた。現状に満足することなく、常により良いものを探求し続けるその姿勢に触れ、同社が進化の歩みを止めない理由を深く理解できた。「倉庫は社会を知っている」という力強い言葉には、業界の未来を切り拓く温かくも並々ならぬ決意が込められている。この熱量と深い洞察力が、これからも多くの企業と人を導いていくに違いない。

堀畑浩重/1971年、大阪府堺市生まれ。神戸学院大学経営学部を卒業し、阪南倉庫株式会社に入社。1996年、英国名門のクランフィールド大学の修士課程を修了。2017年5月、阪南倉庫の代表取締役社長に就任。時代の変化に合わせ、顧客が求めるサービスを常に探求・具現化し変革を重ねて現在に至る。