
設立からまもなく50年を迎えるディーラー、株式会社ホンダカーズ市川。地域に根ざして成長を続ける同社を支えているのは、従業員を何よりも大切にする姿勢だ。入社時よりさまざまな役職を経験し、現在は社長として会社を牽引する中川史昭氏。近年は人事課を新設して採用活動を大きく変革し、働きやすい環境づくりにも注力している。なぜ、同社は従業員を第一に考えるのか。その裏側にある熱い思いと、これからの時代を生き抜く組織づくりについて話を聞いた。
偶然の出会いから現場を経て見えた「従業員第一」の重要性
ーーまずは、これまでの歩みと入社までの経緯についてお聞かせいただけますか。
中川史昭:
私は千葉県で生まれ育ちました。小学校時代の一時期は親の仕事の都合で筑波の研究学園都市で過ごしましたが、6年生で千葉に戻ってからは少しやんちゃをしていましたね。その後は大学へ進学し、一時期は就職への関心が薄かったこともあって留学も考えていましたが、当時交際していた現在の妻からの言葉をきっかけに就職活動を行い、社会に出ました。
就職活動では、車が好きだったこともあり自動車業界を志望。企業研究を進める中で、すでに完成された組織よりも、これから成長していく未完成な部分に面白みを感じ、ホンダの販売店を受けることにしました。その後、思いがけない不思議なご縁が重なり、最終的に弊社へ入社することになったのです。
ーー入社後はどのようなキャリアを歩まれたのですか。
中川史昭:
実は、自分で起業したいという思いがあったため、当初は独立願望が強く3年で退職しようと考えておりました。しかし、初めて車を買っていただいたお客様から別の方をご紹介いただき、そのご縁を裏切るわけにはいかないと決意を改めたのです。そうして目の前の仕事に全力で取り組むうちに4年目で店長を任せていただき、その後もさまざまな立場を経験しながら現場でキャリアを重ねていきました。振り返ると、それら一つひとつのエピソードが今の自分につながっていると感じます。
ーーさまざまなキャリアを積まれる中で感じた課題などはありましたか。
中川史昭:
特に感じたのは、「いかに従業員がモチベーションを保ち、やりがいを持って働ける環境をつくるか」ということでした。あらためて自社の魅力や市場の可能性を見つめ直した際、そこを解決するために重要だと行き着いたのが「従業員を第一に考える」という経営のあり方です。従業員を大事にしてこそ、社員の自発的なやりがいへとつながります。それが結果として、お客様への接客の質を高めることに結びつくと確信しています。
社員の豊かな人生が最高の接客を生む独自の環境づくり
ーー貴社の強みや魅力をお聞かせください。
中川史昭:
大きく分けて2つあります。1つ目は市場性です。全国的に人口減少や車離れが進むなか、船橋や市川といった都心に近いエリアを任せていただいていることは、事業を展開する上で非常に大きな強みとなっています。そして2つ目は、何より社員の存在だと感じています。手前味噌になりますが、弊社の従業員は本当に良い人ばかりが集まっています。そうした素晴らしいメンバーが周囲にいることが、会社にとって一番の財産と言えるでしょう。だからこそ、従業員を大切に思う経営を以前から実践してきました。
ーー「従業員を大切に思う経営」とは、具体的にどのようなものですか。
中川史昭:
弊社では昔から従業員本位の環境づくりを重視してきました。たとえば、土日であっても休みを取りやすいようにシフト調整を行っています。根底にあるのは、しっかり休んで豊かな人生にしてほしいという強い思いです。仕事はもちろん大切ですが、従業員の人生そのものを豊かにすることが会社の役割だと考えています。
また、拠点を超えたコミュニケーションを活発にするため、クラブ活動の支援も行っています。サッカー部や野球部、私自身も参加するゴルフ部などがあり、部員1人につき月500円を会社から支給しています。社員旅行に関しても、費用は全額会社負担で実施してきました。
ーーそうした取り組みの背景には、どのようなお考えがあるのでしょうか。
中川史昭:
弊社の社内スローガンに「仕事も遊びも全力で!!」という言葉があります。仕事だけが全てではなく、自分の趣味や遊びを全力で楽しめる人こそが、仕事でも高いパフォーマンスを発揮できると信じているからです。実際に私自身も趣味の懇親会をはじめゴルフ・釣り等々に熱中するなど、遊びを全力で楽しむようにしています。従業員が仕事も遊びも充実させ、心身ともに豊かな人生を送ること。それが結果的に、お客様への最高の接客へとつながっていくと確信しています。

受動から能動へ 人事課の新設がもたらした採用の劇的変化
ーー採用活動について、具体的な施策や今後の課題を教えてください。
中川史昭:
まずは採用活動を本格化させるため、1〜2年ほど前に専門部署として人事課を立ち上げました。会社として現在意識している課題は、新卒採用と中途採用のバランスをとることです。現状は中途採用が6割ほどを占めている状態です。しかし、このまま社員の平均年齢が上がっていくことを踏まえると、定期的かつ計画的に新卒を採用し、組織の若返りと安定を図っていく必要があると考えています。
ーー人事課ができたことで、どのような変化がありましたか。
中川史昭:
応募数が以前とは比べ物にならないほど増加しましたね。これまでのような「待っているだけ」の受動的な採用活動では、人が集まらない時代です。そのため、企業側から求職者に対して能動的にアプローチしていくスタイルへと切り替え、より戦略的に採用活動へ取り組むようにしました。現在では人事担当者がしっかりと独り立ちしており、重要なポイントでのみ私に相談が来るという、良い体制が整っています。
ーー社長から見た、成長する人材の特徴としてはどのようなものがありますか。
中川史昭:
やはり元気が良くて目が輝いている人は伸びますね。私自身は理詰めで分析するより勢いを大切にするタイプですが、これまでに多くの方と出逢っているうちに面接でも活力のある人材を見極められるようになってきました。社員には常々、「10年後、20年後に自分がどうなりたいかを決めなさい」と伝えています。明確な目標を持つことが、人生を豊かにする重要な要素だと確信しているからです。
AI時代にこそ光る「生身の人間」の価値と業界を牽引する未来
ーー昨今、進化し続けるAI技術などについてどのようにお考えですか。
中川史昭:
新しい技術にはスピード感を持って対応しつつも、すべてをAIに任せられるわけではありません。システムや情報の安全管理など課題も多く、研修を行いながら導入を進めている段階です。特に自動車の整備士など、私たちが提供するサービスは生身の人間にしかできない仕事が中心です。そうした人間にしか生み出せない価値を、これからも大切にしていきます。
ーー最後に、今後の展望についてお聞かせいただけますか。
中川史昭:
3年から5年先の近い将来、業界を牽引する存在になることを目指しています。明確な目標を持って進めば、結果は必ずついてくるはずです。弊社はまもなく設立50年を迎えますが、監査室の新設など、常に新しいことに挑戦し続けています。根底にあるのは、「当たり前に感謝できる」組織でありたいという思いです。この気持ちを胸に、従業員とともにお客様から愛される会社をつくり上げていきます。
編集後記
中川社長との対話で感じたのは、従業員に対する深い愛情だ。休日制度の改善やクラブ活動の推進など、すべての施策は社員の豊かな人生を願う思いから出発している。AI時代だからこそ人の価値を信じ、当たり前への感謝を忘れない。その信念が老舗企業の成長を支える原動力なのだろう。社員を大切にし、自らも豊かな人生を楽しむトップが率いる同社の飛躍が楽しみだ。

中川史昭/1976年に千葉県で生まれ千葉県で育ち、「千葉県が大好きな人間」と語る。1999年に大学を卒業後、株式会社ホンダカーズ市川に入社。2003年に船橋店の店長となり、2017年に代表取締役社長に就任した。「一台でも多くの安心・安全を!」を実現するべく「お客様の喜び」を提供することが「私たちの喜び」と使命感を燃やす。