※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

高校時代はプロのミュージシャンとして活動し、やがて通信インフラの技術者となり、現在は世界的な環境課題に挑む企業のトップに立つ平塚利男氏。そんな同氏が率いるMIRAI-LABO株式会社が手掛けるのは、EV(電気自動車)の廃バッテリーを活用した自律型街路灯や、道路を発電所にする太陽光路面発電技術など、100年後の地球環境を見据えた唯一無二の環境テクノロジーだ。独自のキャリアから生まれた「発明は未来へのプレゼント」という確固たる信念と、独自の組織づくりについて、平塚氏に話を聞いた。

音楽の世界から通信インフラへ そして環境技術への転換

ーーまずは、起業に至るまでのキャリアについてお聞かせください。

平塚利男:
通信インフラの技術との出会いが原点です。高校時代はバンド活動に熱中し、将来的には音楽一本で食べていくつもりでした。しかし、たまたまアルバイトで電電公社(当時)の電話局へ行った際、音声をつなぐ交換機に出会ったのです。それが楽器のエフェクターと同じ構造に見え、技術の面白さにのめり込みました。その後、20歳での結婚を機に、通信インフラの施工管理会社へ入社して技術者としての道を歩み始めました。

ーーその後に通信インフラの世界から、なぜ環境事業へ進むことになったのですか。

平塚利男:
きっかけは、高度経済成長期に感じた「もったいない」という強い違和感です。当時、新しい町づくりに伴い、建てて半年しか経っていない電柱や電線が次々と撤去され、廃棄されていました。その状況を見て、私は「リユースすべきだ」と社内でレポートを出して提案したものの、モノをつくり続ける時代背景や雇用を守る国策があり、採用されませんでした。しかし、提案は叶わなかったものの、私の中に「環境を守らなければ」という問題意識が強く残ったのです。

その頃、生まれ育った八王子の河原が汚れ、昔はたくさんいたホタルが激減したことに気付き、まずは川を奇麗にする空き缶拾いのボランティア活動を始めました。同時に、仕事を通じて多様な分野の基礎研究者たちが集まる国策の研究所に出入りする機会を得ました。そこでホタルがなぜ激減したのかについて研究するチームを作り、その原因について議論した結果、高度経済成長の影響で降り始めた酸性雨が主な原因でホタルが激減したという結論に至りました。私は、人間が壊した自然環境であれば人間の技術でそれを改善すべきと考え、ホタルの幼虫が唯一食性とするカワニナが自生できる環境を維持するための研究に没頭しました。結果、バイオテクノロジー技術により酸性雨が降ってもそれを中和できる特殊な土の開発に成功し、ホタル再生事業のスタートとなりました。

この技術を用いて日本各地でホタルの再生に成功し、環境事業への道を切り拓くきっかけとなりました。その後、ホタル観賞時の人の安全とホタルの育成を両立させるため、紫外線の少ないLEDの用途技術として特殊な反射板を開発し、街路灯を作ることに成功しました。それが世界各国で特許を取得することとなり、現在の会社の大きな礎になっています。

ーーその特許技術が、現在の事業にどのようにつながっていったのでしょうか。

平塚利男:
特許のライセンス契約で得た資金を原資に、前身となる「未来環境開発研究所」を2006年に立ち上げました。ホタルを守るために開発した省エネ技術を応用し、自律型のバッテリー式投光器などを開発していったのです。現在、主力製品の一つである充電式特殊LED投光器「X-teraso(エックステラソー)」は、全都道府県の警察や消防において、災害時の捜索や防災用品として広く導入していただいています。

「発明は未来へのプレゼント」 社会課題を解決するテクノロジー

ーー環境技術の礎を築いた後、社名を変更された理由は何でしたか。

平塚利男:
転機となったのは、2015年に発生したネパール大地震でした。被災地で当社の充電式特殊LED投光器「X-teraso」がお役に立てると考え、現地へ赴き政府に直接寄贈したのです。その結果、国営放送で紹介されたり公的なレセプションに招待されたりと大歓迎を受けました。

しかし、寄贈手続きのために多数の公式書類へサインをする際、「未来環境開発研究所」という漢字の長い社名を英語で書くのは非常に不便でした。そこで、将来海外にメーカーとして進出することを見据え、世界基準のシンプルな名前である「MIRAI-LABO」への変更を決断したのです。

ーー現在最も注力している事業は何ですか。

平塚利男:
EV(電気自動車)の使用済みバッテリーを再利用する「リパーパス事業」です。現在、EVは環境に良いとして普及が推奨されていますが、一方では、現時点でEV廃バッテリーのリサイクル技術は確立されておらず、世界の課題となっています。

そこで弊社は独自のバッテリー劣化診断技術を開発し、車用としては寿命を迎えたバッテリーを、リサイクル技術が確立するまでの間、別の用途で再利用するための製品の開発と普及の仕組みを構築しました。

おおよそ10年後にはリサイクル技術も確立し、EVバッテリーのサーキュラーエコノミーが実現すると考えています。

私にとって、発明は「未来へのプレゼント」です。目の前で困っている問題を技術で解決し、環境悪化に少しでもブレーキをかけること。この事業を通じた取り組みも、100年後の地球環境を見据えた、私たちから未来へのプレゼントになると信じています。

ーーその再生バッテリーは、具体的にどのような形で社会に還元されているのでしょうか。

平塚利男:
代表例が、自律型スマート街路灯「THE REBORN LIGHT smart」です。太陽光パネルで発電し、EVの廃バッテリーに蓄電し自律運転できるため、電線を引く必要がありません。現在注力しているのが、この街路灯を普及させるための「初期投資0円モデル」の展開です。月額20000円程度のサービス料のみで設置でき、サービス料金以外の工事費用や維持管理メンテナンス費用は一切かからない仕組みです。

過去に大規模な停電を経験した地域にも導入されており、災害時は街路灯としてだけでなく、電源供給(最大300台のスマートフォン充電)ができる電源供給スポットにもなります。また、カメラ等のデバイスを追加することで、人通りの少ない道路での不審者へのけん制や、山道・河川での不法投棄対策など、防犯・監視用途としても活用できます。企業のBCP(事業継続計画)強化に加え、「あの会社の前は安心」といった地域からの信頼獲得など、社会課題の解決に直結する事業を展開しています。森林を伐採して太陽光パネルを設置するのではなく、既にある道路を太陽光路面発電所にする技術などもその一環です。

企業を根本から強くする「人」の力と取引先全てをお客様と考える文化

ーー組織づくりにおいて、最も重視していることは何ですか。

平塚利男:
何よりも「人」の成長です。企業の基本は「1に売上高、2に技術、3は人」の順番だといわれることが多いですが、私は「人」こそが最も重要だと考えています。不測の事態が起きれば、売上高はコントロールできず急降下することがあります。その状態から「もう一度盛り上げよう」と再スタートを切れるのは、他でもない「人」の力なのです。だからこそ、社員一人ひとりの人間力や、仲間を思いやるコミュニケーションを大切にしています。

ーーその「人」を重んじる姿勢は、社内でどのように実践されているのでしょうか。

平塚利男:
弊社には「MIRAI-LABOプライド」という独自の考え方があり、その一つとして、取引先はすべて「お客様」として接し、礼儀正しく明るく対応することを徹底しています。一般的な会社は「買ってくれる人」だけをお客様と呼びますが、私たちは誰に対しても礼儀正しく、明るく元気に接することを大切にしています。

実際、以前弊社の社員が警察署へ担当者変更のご挨拶にうかがった際、先方から「人が変わっても、貴社の方はいつも元気が良くて礼儀正しく、本当に気持ちがいいですね。うちの職場も一瞬にして明るくなるほどです。ありがとうございます。」と、わざわざ会社にお褒めの電話が来るほどの信頼関係を築けました。この姿勢が会社の成長を支える根幹になると考えています。

100年後の地球を見据え、共に同じ船に乗る仲間を

ーー最後に、これからの地球を見据え、今後どのような方と一緒に働いていきたいですか。

平塚利男:
「100年後の地球への貢献」という弊社の理念に共感し、真剣に社会課題を解決していくプロセスを一緒に歩んでいける方です。「環境に良いことしかやらない会社」というスローガンの通り、弊社の技術や製品は、単なる利益追求をするためだけのものではなく、お客様や社会の課題解決に貢献することを第一と考えています。単に労働力を提供するだけではなく、同じ船に乗り、互いに声を掛け合いながら企業理念のバトンを次の世代へつないでいける。そんな熱い思いを持った方と、新たな未来をつくっていきたいですね。

編集後記

「発明は未来の人へのプレゼント」。平塚社長の力強い言葉の裏には、環境問題という地球規模の課題に対する深い責任感と、技術者としての無尽蔵の探究心があった。そして何より印象的だったのは、壮大なビジョンを描きながらも、挨拶や取引先へのリスペクトといった「人としての基本」を徹底して重んじる姿勢だ。確かな技術力と温かい人間力が両輪となって進むMIRAI-LABO株式会社。彼らがつくり出す革新的な技術が、100年後の社会をどう照らしていくのか、今後の飛躍が楽しみだ。

平塚利男/1963年、東京都八王子市出身。1981年、日本電信電話公社(現NTT)の施工管理会社に入社。通信全般とバッテリーや自然エネルギーの制御技術に精通。2006年に「技術でCO2削減」をコンセプトに掲げ水、土、光、風をテーマにした知財戦略型企業として未来環境開発研究所株式会社(現MIRAI-LABO株式会社)を創業。「環境に良いことしかやらない会社」として、100年後も人と地球が共に生きられる社会を目指す。