
Anzof株式会社(旧:株式会社Radical Ad、2026年1月に社名変更)は、データの統合解析を起点に、広告運用、クリエイティブ制作までを一気通貫で手がける戦略パートナー企業。社名は「戦略経営の父」と称される経営学者イゴール・アンゾフからインスパイアされている。同社が掲げるのは「広告の最適化から、経営の最適化へ」というメッセージ。広告運用支援にとどまらず、データに基づく経営判断の高度化までを一気通貫で支援するという宣言だ。代表取締役の河本孝行氏は、広告業界の不透明な慣習に抱いた強い問題意識を起点に、専任者一人が売上データ・広告・クリエイティブを横断する独自の組織を構築してきた。同氏に、創業の原点と経営方針、そしてデータが拓く未来について話を聞いた。
不透明な慣習への憤りから生まれた創業背景
――どのような背景から起業を決意されたのか教えてください。
河本孝行:
私は高校生の頃から、「自分は人とは違う」という根拠のない自信があり、漠然と起業を志していました。ただ、当時はやりたいことが決まっておらず、まずは社会経験を積もうとベンチャーの広告代理店に入社しました。
転機となったのは、あるクライアントから「数字がどうもおかしいので見てほしい」と相談を受けたことです。先方が別の代理店に依頼していた広告のレポートを精査していくと、成果数値が改ざんされていた事実が浮かび上がってきました。お客様の大切なお金が、不誠実に使われている。私は強い憤りを感じました。
しかし同時に、はっきりと見えたものがありました。データという客観的な根拠さえあれば、こうした不正は必ず見抜けるということです。広告成果と売上データを正確に紐づけ、客観的に検証できる仕組みさえ広めれば、業界そのものを変えられる――。「正確なデータ活用で、この業界を変える」。そう確信したことが、データ解析を軸に弊社を立ち上げる決定的な動機となりました。
この課題を解決するには、広告成果と売上データを正確に紐づけ、客観的に検証できる仕組みが不可欠です。「正確なデータ活用で、この業界を変えたい」。そう痛感したことが、データ解析を軸に弊社を立ち上げる決定的な動機となりました。
――解析が広告の本質的な改善に寄与する理由はどこにありますか。
河本孝行:
これまでの広告評価は、コンバージョン件数やCPA(顧客獲得単価)といった指標が中心でした。しかし、いくらコンバージョン件数が多くても、それが売上高や利益に貢献していなければ意味がありません。広告の成果が本当に事業の成長につながっているのかを検証するには、実データと突き合わせるしかないのです。実データは嘘をつきませんから。そこを起点にPDCAを回すことが、最も確実で効果的なアプローチだと確信しています。
――立ち上げ当時の状況や直面した困難についてお聞かせください。
河本孝行:
実は創業してから、倒産の危機に直面したことがあります。ある大型案件でクライアントの経営が悪化し、弊社で立て替えていた2億数千万円もの広告費が、回収不能に陥ってしまいました。当時は利益を見込んで新たな投資も始めていた矢先だったため、すべての計画がストップし、本当に苦しい状況でした。
3日ほどは落ち込みましたが、「人のせいにしても何も始まらない」と気づきました。最終的な取引の判断を下したのは自分であり、すべては「自責」だと捉え直したのです。「このマイナスは必ず取り返すしかない」とポジティブに気持ちを切り替え、死に物狂いで事業に取り組み、2年ほどですべて解消することができました。この経験から、リスク管理の重要性など多くを学びましたし、何より経営者として精神的に非常に強くなれたと感じています。
組織能力を先に鍛え、戦略パートナーへと進化する

――貴社の事業の独自性や強みはどのような点でしょうか。
河本孝行:
弊社の最大の強みは、「解析」「広告運用」「システム」の3領域を一人の担当者が横断してカバーできる点にあります。分業が一般的なこれらを統合し、データを施策へ直結できる「専任者」を育成しています。広告代理店のように表面的な提案で終わるのでも、経営コンサルのように戦略提案だけで実務を顧客に丸投げするのでもなく、戦略から実務までを一気通貫で代行する。これが弊社のポジショニングです。
これまで弊社本体には営業職を置いてきませんでした。社名の由来となった経営学者アンゾフは、「戦略は組織に従う」という言葉を残しています。先に組織能力を鍛えなければ、優れた戦略を立てても実現はできないという意味です。私たちはまさにその考え方で、広告・解析・システムを横断できる専任者主体の組織を先に作り上げてきました。
かつて、数字を追う営業と、成果を追う実務担当が対立する場面を目の当たりにしました。無理な受注が現場を疲弊させる失敗を教訓に、現場の専任者が案件の可否を直接判断する仕組みを構築。全員が顧客の成果に一貫して責任を持つ体制を整えてきました。
組織能力が一定の水準に達した今、次のフェーズとして営業機能を担う子会社の設立を計画しています。本体は専任者の品質を磨き続け、子会社は営業の力で市場を広げる。それぞれが独立した役割を持つことで、本体の強みを損なわずに事業を拡大していく構えです。組織能力の蓄積を踏まえてから次の機能を加えるという、私たちなりの順序を大切にしています。
――専任者が高い成果を出すための秘訣を教えてください。
河本孝行:
弊社の収益構造は、お客様の成果と専任者の報酬が一直線でつながるよう設計されています。営業が案件を取った時点で報酬が確定する仕組みではなく、運用の成果が出続ける限り、専任者の報酬も継続して伸びていく。「売って終わり」ではなく「成果が出続けることに責任を持つ」立場に専任者を置くことで、お客様の利益と私たちの利益が完全に一致するのです。
案件は必ず複数人のチームで担当し、利益は貢献度に応じて分配しています。これは社内の公平性のためだけではなく、お客様にとって「特定の担当者一人に依存しない」品質保証の構造でもあります。担当者が抜けても、別のメンバーが同じ品質で引き継げる。それが、大手企業の戦略パートナーとしてお任せいただける理由の一つです。
こうした構造の結果として、データ・広告・システムを横断できる専任者が継続的に育ち、長く働き続けています。お客様の事業を深く理解した専任者が長期で並走できること。これが、弊社が提供する最大の差別化要因だと考えています。
海外で売上を上げ、外貨を日本に持ち込む
――これから目指していく組織の将来像についてうかがえますか。
河本孝行:
短期的には、高い利益率と高い生産性を両立させる組織を目指します。AIを積極的に導入しており、属人性の高い業務を徹底して効率化。そこで生まれた余力を、人にしかできない想像力や感性に投資し、利益を最大化させる計画です。
中期的に挑むのは、海外で売上を上げる事業の構築です。日本は世界に対して遅れをとり、国全体が貧しくなっていると私は感じています。だからこそ、海外市場で稼ぎ、外貨を日本に持ち込む。そうやって日本を内側から豊かにしていく事業を育てたいと考えています。日本企業の海外進出を支援するのではなく、自分たちが海外で売上を立てる側に回ることを目指します。
成長の手段として、国内外でのM&Aにも積極的に取り組んでいきます。自社で一から積み上げる時間を、優れた組織や技術を取り込むことで圧縮し、データ経営の知見と掛け合わせて価値を生む。アンゾフが「環境乱気流の時代」と呼んだ、変化と不確実性の高い現代において、確かなデータと根拠を持って航路を描ける企業こそが、次の時代の主役になれると考えています。
――最後に、読者の方々へメッセージをお願いします。
河本孝行:
現代はプロモーション手法が多様化し、複雑になっています。だからこそ、感覚や勘に頼るギャンブルのようなやり方ではなく、データという客観的な根拠に基づいた意思決定が不可欠です。企業が持つデータは、未来を拓くための貴重な資産です。
経営者の皆様へ。もし、その資産を十分に活用できていないと感じるなら、ぜひ私たちにご相談ください。私たちは単なる広告代理店ではなく、経営とマーケティングをつなぐ戦略パートナーとして、解析・システム・広告・制作を横断し、戦略から実務までを一気通貫でご一緒します。データの力で「見える化」を実現し、貴社の着実な成長を支援いたします。
また、20代から40代のビジネスパーソンや学生の皆さんには、自分をアップデートし続けてほしいと願っています。求めるのは、素直で、かつ「この業界の課題を解決したい」という強い意志を持つ方です。弊社で「広告・解析・システム」の3要素を身につければ、市場価値は一気に高まるはずです。AI時代において、自らの感性や想像力を磨き、データを武器にできる人材の価値は高まり続けるはずです。確かな根拠を持って未来をつくる、そんな挑戦を共に楽しみましょう。
編集後記
2億円を超える負債を「自責」と捉え、わずか2年で完済した河本氏の経験は、他者に責任を転嫁しない真摯な姿勢の表れだ。こうした誠実さは、顧客への向き合い方にも一貫している。営業職を置かず専任者が直接課題を解決する体制から、子会社化による営業機能の拡張へ。「広告の最適化から、経営の最適化へ」という社名変更に込められたメッセージは、組織の能力に合わせて打ち手を一段ずつ加えてきた同社の歩みそのものだ。経営学の祖アンゾフを社名に冠し、データという確かな根拠で乱気流の時代を航海する同社は、これからの日本企業が描くべき航路の一つを、私たちに示している。

河本孝行/1984年広島県生まれ、日本大学卒。ベンチャーの広告代理店に入社し、広告運用の実務を経験。データによる透明性の高い広告評価の必要性を痛感し、2014年にAnzof株式会社(旧・株式会社RadicalAd)を設立、代表取締役に就任。2026年1月に社名を変更し、「広告の最適化から、経営の最適化へ」を掲げてデータ経営の支援に取り組んでいる。