※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

木材の防腐処理や地盤改良、映像ソリューションと、異なる分野で独自技術を展開する兼松サステック株式会社。同社を率いる小泉浩一氏はかつて商社でキャリアを積み、シカゴで厳しい駐在体験をした。2021年に代表取締役社長に就任してからは、商社時代に培った現場主義を貫いており、環境に配慮した商品展開やデジタル化の推進を通じ、各業界の中心的な存在を目指す構えだ。独自の技術はいかに社会課題を解決し、20代の社員の成長へと結びつくのか。小泉氏の現場に懸ける思いと未来を担う人材への期待に迫った。

「商社不要論」に直面したシカゴ駐在現場で証明した自らの介在価値

ーーまずは、新卒で兼松に入社した経緯をお聞かせください。

小泉浩一:
「海外で仕事がしたい」という強い思いが入社の最大の理由です。就職活動で複数の商社を訪問する中、先輩方が学生の私へとても親切に寄り添ってくれたことが決め手となりました。実際に入社してからも、誠意を持って仕事に取り組む真面目な人が多い組織だと感じましたね。

入社後に配属されたハイテク機器部では、ちょうどコンピュータが世に出始めた時期であり、ハードディスクの駆動モーターを世界中へ輸出する事業に携わりました。営業担当であっても、最初は船積みの手配や契約書作成など、基礎的な実務を徹底的に叩き込まれました。

ーーその後、31歳から駐在したシカゴではどのような困難がありましたか。

小泉浩一:
最大の壁は、日米のビジネスカルチャーの違いでした。アメリカには日本の商社のような中間業者が存在せず、メーカー同士の直接取引が一般的です。そのため、初対面で「あなたたちは何のためにいるのか」と存在意義を厳しく問われることもありました。

そこから、私たちが単なる仲介ではないことを伝えていったのです。技術面のサポートや最適なタイミングでの納入、資金面での支援など、弊社が提供できる付加価値を一から説明しました。現地の営業担当者とペアを組み、ともに戦略を練りながら顧客や現地従業員と信頼関係を築いた経験は、現在のキャリアにおける大きな財産です。

現場の熱量を知る経営者へ 独自技術が連鎖する3つの事業シナジー

ーー2021年に貴社の社長に就任され、担当者時代と比べて視点はどう変化しましたか。

小泉浩一:
全社員が安心して働き、力を発揮できる環境を整えることが最大のミッションになりましたね。担当者の頃は、自身の仕事に責任を持つことが全てでした。商社時代から、取引先である中規模メーカーの優れた技術を海外展開すべく、頻繁に製造現場へ足を運んでいました。ともに苦労しながらものづくりの現場を見てきた原体験があるため、自前で工場や技術研究所を持つ現在でも、現場の社員と同じ視点で経営にあたることができています。

ーー現在展開している事業の概要と、それぞれの強みを教えてください。

小泉浩一:
弊社には大きく分けて3つの事業部があります。

1つ目は地盤改良を行う「ジオテック事業部」です。ここでは、国産スギの木杭を地中に打つ「環境パイル工法」という独自技術を展開しています。鉄やセメントを使わないため製造時のCO2排出を削減でき、木材がCO2を地中に固定化するため、森林保全にも大きく貢献しています。

2つ目は「木材・住建事業部」です。ここでは主に木材を腐朽やシロアリから守る防腐・防蟻処理を担っています。独自開発の「乾式処理」は、水ではなく有機溶剤を使うため処理後に木材の寸法変化が起きず、乾燥の手間も省けます。中高層の木造建築が増加する近年、弊社の持つ日本最大級の処理設備が広く採用されています。

そして3つ目は「映像ソリューション事業部」です。従来の防犯カメラにとどまらず、独自の映像システム事業へと進化させており、AIを組み合わせて人数確認や工場の安全管理などを提供する事業を行っています。

ーー独自性の高い各事業では、どのようにシナジーを生み出しているのでしょうか。

小泉浩一:
地盤改良と木材処理はともに住宅や建設業界がお客様となるため、地下の環境パイルと地上の木材処理をセットで提案する営業活動が可能です。また、映像セキュリティに関しても、建設現場の管理や住宅の防犯対策としてカメラ導入が標準化されてきました。このように共通の顧客基盤を活かした展開が着実に加速しており、今後はこれらの独自技術を掛け合わせることで、それぞれの業界における中心的な存在になることを目指しています。

見えない技術で社会を支える20代の人材が「成長体験」を積める組織へ

ーー各業界の中心を目指す上で、採用や人材育成にはどのように取り組んでいますか。

小泉浩一:
会社をさらに成長させるためには、20代や30代など若手人材の力が不可欠です。弊社の仕事は専門性が高く、一人前になるまで数年を要します。だからこそ、若手社員には早い段階で裁量を与えており、一つのプロジェクトを自ら成し遂げる喜びや感動といった「成長体験」を積んでもらうことを大切にしているのです。その中で上の人間が責任を取り、若手社員が苦労しながらも挑戦できる場面をつくるのが私たちの役割です。

また、資格取得への手厚い支援や奨学金の返還支援制度なども導入しています。最近では、新しい防腐処理の技術開発や地盤改良の現場において、20代の女性社員も最前線で活躍しています。

ーー若手社員の活躍が期待される中、これから入社する方にはどんな思いを伝えたいですか。

小泉浩一:
「弊社の技術は地中や木材の内部など、普段は見えないところにある。しかし、見えないからこそ心を込めて仕事に取り組んでいる」とお伝えしたいですね。私たちが提供する技術は、脱炭素社会の実現や森林保全、災害時の地盤沈下復旧など、直接的に社会貢献へと結びついています。技術で社会に貢献するという理念に共感し、やりがいを感じる方々と一緒に働きたいと考えており、ともに社会を支えていきたいですね。

編集後記

「見えないところに心を込める」。小泉氏のその言葉に、同社が担う事業の真髄と確かな矜持を見た気がした。私たちの目に触れない場所で、安全や環境を支える独自の技術。それは、異国での厳しい開拓時代や、幾度となく製造現場へ足を運んだ同氏の情熱とリンクしているように思える。だからこそ、若手社員が自ら成し遂げる「成長体験」の重要性を、これほどまでに熱く語れるのだろう。社員一人ひとりが社会課題に真っ向から挑み、熱量を持って前進する同社から、次世代のスタンダードが生まれていくに違いない。

小泉浩一/1961年、神奈川県生まれ。横浜国立大学卒業。兼松江商株式会社(現 兼松株式会社)に入社し、兼松米国会社シカゴ支店長を経て、2018年6月に兼松株式会社執行役員(車両・航空部門副部門長)に就任。2021年6月から兼松サステック株式会社の代表取締役社長を務めている。