※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

現代の物流業界は法規制への対応や環境変化などにより、これまでにないスピードで転換期を迎えている。中国・四国・九州地方を中心にネットワークを築き、グループ全体で19社、1,300台の車両を稼働させる双葉運輸株式会社。運送から倉庫保管、小売りの配送までをワンストップで担い、顧客からの信頼を集めている。アルバイトとして現場に飛び込み、事業所長を経てトップに就任した長谷川忠宏氏。先代から受け継ぐ信念と時代の先を読む柔軟な発想で組織を率いる同氏に、マネジメント術と展望をうかがった。

現場から培ったマネジメントの極意は「教えるのではなくまずは聞く」

ーー現在、トップとして組織を率いる上で、ご自身が最も大切にしていることは何ですか。

長谷川忠宏:
マネジメントにおいて常に心がけているのは、一方的に教えるのではなく「まずは聞く」ことです。私は、アルバイトからドライバー、倉庫業務、営業所長と、多様な現場を経て今の立場に至っています。現場から経営層まで経験してきたからこそ、それぞれの立場の苦労が痛いほどわかるんです。だからこそ、人材育成においてもこの「まずは聞く」姿勢を大切にしています。

業務の中で「これ、どうしましょうか」と相談されたとき、私は必ず「自分はどうしたい?」と聞き返します。自分の考えを持ってもらい、良いと思えば任せますし、修正が必要であれば「なぜそうすべきなのか」を説明します。ただ答えを与えるだけでは、なぜその答えに行き着いたのかという過程が理解できず、また同じ壁にぶつかってしまうのです。結果だけではなく、過程までしっかりと導くことが、自ら考えて動ける人材を育てる上で最も重要だと考えています。会社としての方向性を示しつつ、しっかりとフォローすることが私の役割です。

ーー企業として大切にしている理念について教えてください。

長谷川忠宏:
物流にはさまざまな物量の波があります。私たちはそれに対して「輸送できない」とお断りするのではなく、すべて対応するという姿勢を貫いています。その根底にあるのが、先代から引き継いでいる「できない理由をいうのではなく、どうしたら出来るかを考える」という精神です。難しいご要望をいただいた際、すぐにできない理由を探すのではなく、「どうやったら実現できるか」を第一に考える。この理念は社内にも深く浸透しています。

特に今の物流業界は、さまざまな分野で環境の変化が非常に速くなっています。これからはさらに加速するでしょう。その中で、私たちがいかに早く時代の流れを読み、いち早く動くことができるかが勝負です。二番手、三番手に甘んじていては意味がありません。常に先見の明を持ち、従業員を導きながら、より良い労働環境を整えていくことが経営トップの大きな使命だと感じています。

女性ドライバー100名以上が活躍「働きやすさ」が成長の鍵

ーー求人にも繋がる「働きやすさ」の向上に向けて、どのような整備を行っていますか。

長谷川忠宏:
働きやすさを広げていくことが、結果的に求人にもつながると考えています。たとえば、かつては長距離輸送が主流だったものの、今は仕事のスタイルを大きく切り替えました。「休みが確実にとれて、昼間の仕事がいい」というニーズが高まっていることもあり、長距離を減らして日帰りが可能なセンター系の配送を増やしているところです。

また、弊社には昔から女性ドライバーが多く、現在はグループ全体で100名以上の女性ドライバーが活躍しています。これをさらに後押しするため、たとえば大阪と九州を結ぶ長距離案件で多く発生する中継輸送の仕組みを、もっと確立していきたいと考えました。そこで広島を中継拠点に設定し、行程を分けることで無理なく日帰りできる仕組みを構築しました。加えて従業員のために企業内保育園も設立しており、体力的な負担を減らしながら長く働ける環境づくりを徹底していく方針です。

ーー働きやすさの追求と同時に、組織全体としてはどのような展望を描いていますか。

長谷川忠宏:
現在、グループは19社ありますが、将来的にはある程度の社数に集約していくつもりです。手始めに、今月いっぱいで1社を双葉運輸に吸収します。会社が分かれていることで生じる無駄を省き、グループ全体のスリム化と合理化を図っていきたいと考えています。同時に、デジタル化による業務効率化も進めています。新しいシステムを導入し、配車業務などをデータ化して時間を大幅に短縮できる仕組みを構築しました。これを順次グループ各社にも展開していく予定です。

グループの合理化とAIにとって代わられない「物流の価値」

ーー業務効率化の取り組みについて、現場での具体例をお聞かせください。

長谷川忠宏:
人が足りていない部分を補う目的で、今年の5月に東広島の倉庫へ無人搬送機を導入しました。単純に人を減らすということではなく、機械化できる部分にはしっかりと投資を進めていく方針です。また、2026年の1月から2月にかけて新しい業務システムへと移行しました。この新システムにより、配車関係の情報を一気に吸い上げてデータ化することが可能になり、これまで1時間ほどかかっていた入力作業が5分で済む仕組みになっています。今後はこのシステムを順次グループ各社にも導入し、グループ全体での情報の統合と、さらなる業務の簡素化を進めていく予定です。

ーーデジタル化が進む中で、物流業界の可能性についてはどのようにお考えですか。

長谷川忠宏:
これからの時代、多くの業務がデジタル化されていきますが、物流は「AIにとって代わられない仕事」です。モノを運ぶという役割がなくなることは絶対にありません。単にモノを運ぶだけではなく、「どうしたらできるか」の精神でお客様の課題に向き合い、新しいやり方を提案する。それによって価値を生み出し、お客様に満足していただく。そこにこの仕事の最大の面白さがあります。「そんなことができるんですか」と驚かれるような物流の仕組みをつくり上げる。強い興味と熱意を持って、ともに変化を楽しめる方に来ていただきたいですね。

編集後記

現場を知り尽くした長谷川氏の言葉の端々からは、困難な状況でも決して立ち止まらない熱いエネルギーが感じられた。社会インフラの重責を担う中で、「できない理由」を探すのではなく、常に「できる方法」を模索し続ける姿勢こそが、同社の力強い推進力となっている。AIやテクノロジーがどれほど進化しようとも、人と人が知恵を絞り、最適なルートやサービスを生み出していく物流の根源的な価値は決して揺るがない。時代にしなやかに適応し、従業員への温かなまなざしを忘れない同社のさらなる飛躍を期待せずにはいられない。

長谷川忠宏/1972年、広島県生まれ。1993年、双葉運輸株式会社に入社。2017年、取締役社長に就任。