※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

日本全国の中堅・中小企業に対して、デジタル領域を軸とした支援を展開するソウルドアウト株式会社。そんな同社の代表取締役社長を務め、博報堂DYグループの執行役員としても名を連ねる北川共史氏は、大企業向けの実績を手放して地方の中小企業支援の道を選んだ。立ち上げ当初の挫折や、組織の存続を揺るがす試練を乗り越え、彼がたどり着いた「ローカル&AIファースト」という独自の構想。そこには、幼少期の原体験から連なる、強い使命感が根付いていた。地方のポテンシャルを引き出し、100年後の日本の未来を切り拓こうと奮闘する北川氏に、事業にかける情熱と今後の展望を聞いた。

「地方の中小企業支援」に見出した自身の使命

ーーまずは、ご自身のキャリアの原点について教えてください。

北川共史:
私の原体験は、起業家であった母の存在と、里子たちとともに暮らした経験にあります。母は北海道で先駆けとなる、障害がある子どもとその親御さんが一緒に通園できる施設を立ち上げました。そんな誰もやったことのない領域に挑む母の背中を見ながら、そして同時に障害がある里子たちと過ごす中で、「この子たちが将来、世の中で働ける場所をつくりたい」という思いが芽生えたのです。そのためには、まず自分自身がビジネスの世界で最短で結果を出し、実力をつける必要があると考えました。そこで「3年で辞めて起業する」と宣言して、当時最も成長できる環境だと感じたインターネット広告を扱う企業に入社しました。

ーーそこから、現在の「中小企業支援」の道に足を踏み入れた理由をお聞かせください。

北川共史:
前職では最前線で大手企業向けの営業を担当し、競合他社と戦って成果を上げることに充実感がありました。しかし、当時社内で光が当たっていなかった「中小企業対応セクション」を見るうちに、「自分の使命はここにあるのではないか」と思い始めたのです。

中小企業向けの支援は予算やリソースが限られることも多く、デジタルマーケティング業界の多くの企業が二の足を踏む領域でした。しかし、だからこそ現場の経営者と深く向き合い、直接「ありがとう」と言われる瞬間がある。その時に得られる「誰かの人生や事業を支えている」という手応えは、かつて私が幼少期に、母の施設で出会った子どもたちを支えたいと願った時の感覚と、驚くほど深く重なるものがありました。

ビジネスを通じて、目の前の誰かの人生を切り拓く力になりたい。その思いを貫くために、私は自ら手を挙げて当社の立ち上げに参画したのです。

大手で培ったノウハウが通用しない挫折を経験 顧客企業の「売上・利益」に直結する技術への執念

ーー参画後、事業は順調に推移しましたか。

北川共史:
立ち上げ当初は、予想とは裏腹に多くの解約が相次ぐ厳しい状況に陥りました。前職で培った大手企業向けのノウハウをそのまま持ち込んだものの、経営資源が限られている中小企業には通用しなかったのです。私たちを信じて発注してくださった経営者の皆様の期待に応えられず、いかにして価値を提供するべきか葛藤の日々が続きました。

ーーその壁をどのように乗り越えていったのですか。

北川共史:
「お客様の事業の利益・成長に貢献できなければ、絶対に信頼されない」と痛感し、自分たちが提供すべき価値を根本から見直すことにしました。具体的には成果の向上に徹底的にこだわり、役員全員で合宿を実施して、ランディングページの構成案を自らの手で作成できるように訓練を重ねていったのです。その結果、お客様が何を求めているのかを深く理解し、本質的な提案ができるようになり、提供する質は劇的に変化。さらには目の前のお客様にとって真に必要な施策を見極め、「今は広告ではなく、別の経営課題に集中すべきです」と踏み込んだ提案まで行うようになり、最終的に解約率は大幅に改善していきました。

販路・技術・オペレーションを武器に「ローカル&AIファースト」を体現

ーー葛藤を乗り越えた今、事業展開において軸としている戦略は何ですか。

北川共史:
「販路」「技術」「オペレーション」の3つを重要視しています。まず「販路」としてはグループ全体で全国28拠点に展開し、地域のお客様と直接向き合う体制を築き上げました。また、「技術」の面においては、私が執行役員を務める博報堂DYグループが持つ高度なクリエイティビティや、マーケティング知見と我々がこれまで愚直に磨き上げてきたデジタル領域の実行力を掛け合わせます。そして最後の「オペレーション」として、テクノロジーを駆使して、多数の中小企業を支援できる独自の体制を構築しているのです。

ーーその強みを活かし、今後はどのような形で支援をさらに進化させていくのですか。

北川共史:
私たちが目指す「ローカル&AIファースト」を具現化するため、2026年7月、連結子会社を『ソウルドアウトライズ株式会社』へ社名変更し、地域経営者に特化した伴走型の事業成長支援を本格稼働させました提言に終始せず、経営者と情熱を共有し、売上拡大や生産性改善の戦略構想から実行までをワンストップで伴走支援いたします。

ーー「ローカル&AIファースト」で具体的にどのような可能性が開けるのでしょうか。

北川共史:
「100年後の日本を地方からつくる」ことを目指しています。人口減少により国力が低下する中で、日本が外貨を獲得して生き残るためには、AIによって地方の生産性を底上げしながら、その地方が持つ個性や文化、そしてリアルな手触り感が不可欠になります。地方で代々事業を受け継ぎ、地域に根ざしているオーナー経営者たちがもっと輝けば、必ず日本全体が元気になります。

過去には組織として大きな試練に直面し、本来進むべき方向性を見失いかけた厳しい時期もありました。しかし、それを乗り越え、理念に共感して集まってくれた約550人の仲間が今の私たちにはいます。新しい時代をつくってきたのは、常に熱量を持った集団でした。私たちはその先陣を切り、地方の経営者とともに、日本の新しい未来を切り拓いていきます。

編集後記

北川社長の言葉の端々からは、ビジネスの枠を超えた「揺るぎない使命感」がひしひしと伝わってきた。幼少期の原体験に根ざし、あえて困難な地方の中小企業支援の道を選んだその軌跡は、効率化ばかりがもてはやされる現代において、愚直なまでに顧客と向き合うことの尊さを改めて教えてくれる。大手の手法が通用しないという挫折から逃げず、真に「顧客の成果と利益に貢献する」ために知恵を絞り抜いた経験こそが、同社の強固な基盤となっているのだろう。最新のAI技術と地方のリアルな手触り感を掛け合わせた「ローカル&AIファースト」構想は、人口減少という大きな課題を抱える日本の未来に希望の光を灯すものだ。「100年後の日本を地方からつくる」。その熱き決意と、共感で結ばれた仲間たちが切り拓く次なる景色が輝いてみえる。

北川共史/1984年、北海道札幌市生まれ。2007年に株式会社オプト(現デジタルホールディングス)に新卒入社し、全社MVPを受賞。中小企業支援への志から2009年にソウルドアウト株式会社の創業に参画。東西営業部長、営業本部長、上席執行役員CRO、専務取締役COOなどを歴任し、2026年4月に代表取締役社長に就任。「ローカル&AIファースト」戦略を推進し、地域企業の変革と日本経済の持続的な活性化に取り組む。