
通信系システムやモビリティ、自治体向けDXなど、社会インフラを支える大規模なシステム開発を手がける月電ソフトウェア株式会社。1990年代からフィリピン拠点との強固なパートナーシップを築き、困難な局面でも最後まで責任を持ってプロジェクトを完遂する開発体制で顧客から厚い信頼を獲得している。2024年8月に代表取締役社長に就任した津田亮一氏は、エンジニアとして現場の最前線を経験し、組織の責任者としても事業を支えてきたリーダーだ。次世代技術への適応、AIを前提とした開発プロセスの変革、グローバル人材の育成を掲げる同氏に、独自の組織論と未来へのビジョンをうかがった。
現場経験とフィリピンでの活気が育んだ「共感力」と「グローバル視点」
ーーまずは、社長就任に至るまでのこれまでの歩みを教えていただけますか。
津田亮一:
私は高校の情報処理科で学んだ頃からIT業界を志し、仙台の専門学校を経て、エンジニアとしてキャリアをスタートしました。その後、月電ソフトウェアに入社し、仙台で約10年間、通信系システムの開発に携わりました。福島や関東などさまざまな拠点で、エンジニアから組織の責任者まで幅広い立場を経験してきたことが、現在の私の原点になっています。現場で働く社員の気持ちも、お客様と向き合う責任者の立場も経験してきたからこそ、その両方の視点を大切にしながら経営に取り組んでいます。
ーー社会インフラ開発などを手がける貴社の最大の強みは何でしょうか。
津田亮一:
困難な局面でも粘り強く課題に向き合い、最後まで責任を持って「やり切る」開発体制です。弊社は通信系(テレコム)やモビリティ、自治体向けDXなどを手がけています。これらは人々の生活基盤となる大規模な社会インフラであり、高い技術力が求められます。だからこそ、単に人材を提供するだけではなく、お客様の課題やプロジェクトの成果に最後まで向き合い、自社で責任を持って完遂する体制にこだわっています。
実は、この開発体制を支えているのがフィリピン拠点との深い信頼関係です。長年の歴史で培われた強固なパートナーシップがあるからこそ、困難な局面でも粘り強く課題に向き合い、最後まで責任を持ってプロジェクトを完遂する姿勢がお客様から高く評価されています。
「ホスピタリティ」と「主体性」がつくり出す新しい組織風土

ーー貴社の社長に就任してからはどのような改革を進めましたか。
津田亮一:
技術力だけでなく、相手への思いやりや気配りといった「ホスピタリティ」を企業の差別化要因として明確に打ち出しました。IT企業にとって技術力は不可欠ですが、それ以上に人間関係の質が重要です。気持ちよく仕事ができる振る舞いを会社の基本方針に据え、今期から正式に運用を始めた人事評価システムにもこの項目を組み込んでいます。
ーーホスピタリティを重視する背景には、どのような思いが込められていますか。
津田亮一:
私自身、長く現場を経験してきたからこそ、仕事の難しさや、そこで働く社員の気持ちはよく理解しているつもりです。だからこそ、一方的に指示をするのではなく、一人ひとりが自ら考え、周囲と協力しながら行動できる組織にしたいと考えています。その土台になるのが、相手の立場を考え、思いやりを持って行動する「ホスピタリティ」だと思っています。同時に、社員には失敗を恐れず、まず一歩を踏み出してほしいと考えています。そのため、「間違ってもいいから、まずやってみよう」というメッセージを発信してきました。
これまではトップダウン型で動く側面もありましたが、これからの時代は、社員一人ひとりが自ら考え、挑戦する「主体性」がこれまで以上に重要になります。そこで社内の変革を促すため、私自身が各拠点を訪れ、若手社員と直接語り合う「社長キャラバン」をスタートさせました。会社の理念やこれから目指す姿を直接伝えるだけでなく、社員の考えや思いにも耳を傾けることで、一人ひとりが会社づくりに参加できる組織にしていきたいと考えています。
福島から世界へ AIと好奇心が切り拓く10年後の未来
ーー今後のさらなる事業成長に向けて、どのような戦略を描いていますか。
津田亮一:
新たな付加価値を生み出すべく、生成AIの専門組織を立ち上げました。AIを単なる業務効率化のツールとしてではなく、これからのソフトウェア開発の前提となる技術と位置づけています。開発プロセスそのものを変革するとともに、AIを使いこなせるエンジニアの育成を進め、より高付加価値で高品質なサービスをお客様へ提供できる会社へ進化させていきます。
ーー最後に今後のビジョンと、共に働きたい人物像についてお聞かせください。
津田亮一:
10年後には、現在の社員数を倍増させ、その半数を英語で活躍できる「グローバル人材」にするという明確な目標を描いています。将来的にはこの福島で雇用を創出し、「福島でナンバーワンのグローバルIT企業」になることが、私たちの挑戦です。また、私たちが求めているのは、スキルだけでなく、新しい技術や異なる文化、人との出会いに好奇心を持てる人材です。失敗を恐れず自ら挑戦し、仲間とのコミュニケーションを大切にしながら、仕事そのものを楽しめる。そんな人たちと一緒に、新しい月電ソフトウェアをつくっていきたいですね。
編集後記
長く現場を経験してきたからこそ、社員と顧客の双方の視点を大切にする。津田社長の言葉には、現場を知るリーダーならではの深い共感力と、変革を前に進める強い意志がにじみ出ていた。大規模開発において同社が顧客から厚い信頼を得ている理由は、技術力の高さだけではない。根底にあるのは、他者を思いやる「ホスピタリティ」と、国境を越えた仲間とともに最後まで責任を持って「やり切る姿勢」である。社員一人ひとりの主体性を推進力に変え、AI時代の開発力とグローバル人材を強みに、福島発のグローバルIT企業として飛躍する同社の未来が非常に楽しみだ。

津田亮一/1981年福島県生まれ。仙台の専門学校を経てエンジニアとしてキャリアをスタートし、2004年10月に月電ソフトウェア株式会社へ入社。2013年に課長へ昇進、2016年に関東で部長へ昇進、2019年執行役員就任、2022年取締役就任、2024年代表取締役社長に就任。就任後は企業理念を刷新し、組織改革やAI活用、グローバル人材育成を推進している。