※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

首都圏を中心に大手コンビニチェーンのフランチャイズ71店舗を展開し、大規模な「メガフランチャイズ本部」として事業を広げる株式会社新鮮組本部。同社を率いる代表取締役社長の飯田章雄氏は、乳業メーカーでの病院向け指導業務や自身の店舗運営、さらには産業保健分野で数多くの企業の内情を見てきたという多彩な経歴を持つ。2022年の取締役就任当初から自ら先頭に立って進めてきた「誰が見ても明確な給与体系」の構築を2024年のトップ就任までにほぼ完成させ、現在は自社独自の「キッチン併設店」の見直しや社員の多様なキャリアパス実現も推し進めている。業界の垣根を越えた競争が激化する中、同社が目指す複合業態などを見据えた「攻めの経営」について聞いた。

数多くの企業を見てきた経験が生きる組織づくりの本質

ーーまずは、これまでのご経歴を教えてください。

飯田章雄:
大学卒業後は乳業メーカーに入社し、病院や産院に向けた栄養指導や調乳指導を通じた普及活動に12年間従事していました。その後は独立し、自身でフランチャイズに加盟してリサイクルショップの経営を3年間経験しています。さらに保険会社での勤務を経たのち、別の企業へ移り、法律で義務付けられている産業医の斡旋や、産業保健分野の営業などに従事。誰もが知る大手企業から各地の小売店舗に至るまで、業種も規模も多様な事業所の内情に深く入り込み、人事総務の裏側やメンタル不調といった、組織のリアルな課題を間近で見る貴重な機会を得ることができました。

ーー多彩なご経験をされていますが、現在の組織づくりにどのように生かされていますか。

飯田章雄:
すべての経験が、「社員が生き生きと働ける組織づくり」という現在の経営の基盤につながっています。産業保健の分野で何十社もの内情に触れる中で、どのような環境なら社員が前を向けるのか、どんな組織だと下を向いてしまうのかを肌で学べたことは大きな財産となりました。

また、過去に自身が店舗オーナーとして現場に立っていた頃、チェーン本部が加盟店にどう働きかけるのか、そのリアルな力関係や空気を当事者として身をもって経験してきました。だからこそ、本部と加盟店は常に対等な関係でなければならないと痛感しており、その思いを現在のフランチャイズ本部としての組織運営に生かしています。

「働きやすさ」と「キャリアの多様性」を実現する明確な仕組み

ーー貴社の社長に就任されてから、まずはどのような取り組みをしましたか。

飯田章雄:
2022年の取締役着任から、まずは社員が安心して働ける環境を整えるべく、就業規則と給与体系の全面的な見直しに着手しました。ここでも、産業保健の業務で多様な企業の規定に触れてきた経験を生かし、約2年をかけて基本ベースを自ら作成しました。専門家でなくても、自分が「どの資格を取得し、どの役職に就けば、給与がいくら上がるのか」が明確にわかる仕組みを整え、社員が将来に安心感を持てる環境をつくることができました。

ーー労働環境の改善やキャリア形成において、特に注力していることは何ですか。

飯田章雄:
店長クラスでも週休2日を基本とし、残業を月20時間程度に抑えるなど、働きやすい環境づくりを徹底しています。中には10連休を取得する社員もいるほどで、小売業の「働きづめ」という一般的なイメージとは大きく異なるものになっています。

また、多様なキャリアパスを用意している点も弊社の強みです。アルバイトから正社員へ登用され、最終的に自身の店舗を持つオーナーになることも可能で、店舗での経験を積んだ後には複数店舗を統括する指導員や本部で教育を担当するトレーナー、さらには役員へとステップアップする道も開かれています。

独自の「キッチン併設店」と大規模加盟店としての強み

ーー他社にはない店舗運営の強みはどこにあるとお考えですか。

飯田章雄:
最大の独自性は、本格的な「キッチンのある店舗」を26店舗展開している点です。チェーン本部から納品された商品を簡易的に調理するだけでなく、自社で仕入れから商品開発、マニュアル作成までを一貫して行っています。店舗で直接炒めたり揚げたりする本格的な調理機能は、早期から独自の業態開発に取り組んできた弊社ならではの強みであり、他社が今から模倣しようとしてもハードルが高い領域です。

また、私たちは現在、大手チェーンと70店舗以上を展開するメガフランチャイズ契約を結んでおり、自社が本部機能と加盟店機能の双方を有する特殊な立ち位置にあります。そのため、各店舗のオーナーに対して、人員や店舗運営、さらには資金面を含めた手厚い独自支援が可能です。規模の大きさを生かした細やかなサポート体制は、外部企業の方からも高い評価を受けています。

競合激化の時代を勝ち抜く 「攻めの経営」と複合業態への挑戦

ーー競争が激化する小売業界において、今後はどのような事業展開を描いていますか。

飯田章雄:
守りに入るのではなく、新たな道を切り拓く「攻めの経営」を展開していく方針です。現在の小売業界はコンビニエンスストアだけでなく、ミニスーパーやドラッグストアなども競合に入る環境にあります。その中で生き残るためには、本業を徹底し「地域一番店」であり続ける努力の継続が第一です。しかし、それだけでは時代の変化に対応できず、いずれ事業は縮小してしまいます。

そこで、既存の店舗と他業態を掛け合わせた「複合店」の展開を視野に入れています。すでに一部の企業や会社では、スーパーマーケットの良さとコンビニエンスストアの強みを融合させる試みも始まっています。また、弊社がこれまで培ってきたフランチャイズ運営のノウハウを生かした、別業界への参入も目指しています。20代、30代の社員たちの新しい感性も積極的に取り入れながら、これからの時代に合わせた新しい商いの形をつくり上げていきます。

編集後記

トップの語り口から伝わってきたのは、現場の血の通った実情を決して置き去りにしない実直なリーダー像だった。飯田氏は、数え切れないほどの企業の内情に触れてきたからこそ、「制度」という枠組みにとどまらず、「人の心」がどう動くかを誰よりも熟知している。高圧的な指導を排し、自らの手で給与体系をつくり直したその行動力には、ともに働く仲間への深い愛情が垣間見えた。既存の枠組みにとらわれない新しい業態への挑戦も、すべては働く人たちの笑顔と地域社会への貢献に繋がっているのだろう。同社が次世代とともにつくり出す「新しい店舗の形」に出会える日が、今から楽しみでならない。

飯田章雄/1969年生まれ、玉川大学卒業。1993年、乳業会社に入社し、12年間育児用粉ミルクの普及活動に従事。その後、自身でFC加盟し、リサイクルショップを3年間経営。閉店後、保険会社、口腔ケア関連業務、産業保健業務に従事。2022年10月、株式会社新鮮組本部に取締役として着任。専務取締役を経て、2024年10月に代表取締役社長に就任。100店舗の「地域一番店」を目指し邁進中。