
首都圏を中心としたスーパーマーケットに花を卸し、売り場のメンテナンスまでを一貫して担う株式会社メルシーフラワー。創業から50年を超える歴史を持つ同社は、高品質な花を手頃な価格で提供して、日常に取り入れる文化を広めている。他業界から転職し、現場の最前線で組織を牽引してきたのは代表取締役社長の小林新一氏だ。就任への思いや独自の強み、そして社員や花への「感謝」を軸とした今後の展望について聞く。
異業種からの挑戦と「誠実」を受け継ぐ組織づくり
ーーまずは、貴社へ入社された経緯を教えてください。
小林新一:
私は28歳まで家具屋で営業や接客の仕事をしており、花とは無縁の世界にいました。転職を考えた際、たまたま新聞の求人で弊社のピンク色の配送車を見かけたのがきっかけです。もともとアウトドアが好きだったこともあり、外で体を動かす仕事に魅力を感じて入社を決めました。入社した当時は非常に厳しい労働環境でしたが、中小企業だからこそ自分の手でより良い会社に変えていけるのではないかというモチベーションを持って仕事に取り組んできました。
ーー2026年6月に社長に就任されましたが、今後大切にしていきたいお考えなどはありますか。
小林新一:
前社長が大切にしていた「誠実に生き 情熱を持って仕事をし 親切な対応ができる集団」という理念です。仕事で迷ったときには、常にこの言葉に立ち返り、誠実な対応ができているかを自問自答してきました。この価値観はしっかりと引き継いでいきたいと考えています。そのうえで、従業員が心身ともに健康で働けるウェルビーイングな組織づくりをさらに推進していきたいですね。居心地が良く、誰もがいきいきと働ける環境を整えることが、これからの企業成長に不可欠だと確信しています。
スーパーの花売り場を「専門店」へ進化させる

ーー貴社の事業内容や独自の強みについて詳しくうかがえますでしょうか。
小林新一:
スーパーマーケットにおける花の委託販売がメインです。単なる配送ではなく、花の知識を持った社員が毎日店舗を巡回し、売り場のメンテナンスから装飾までを一貫して行っています。年間52週のフェアを実施しており、旬の花や季節感を演出した企画による提案型の販売をしています。たとえば白い花や香りの高い花を集めた「バニラフェア」など、毎週異なるテーマで売り場を演出するのが特徴です。
スーパーの花売り場を「専門店化」させるため、売場と商品両面の高質化を図り、多彩な花の種類と魅力的な売場を展開しています。また、専門店レベルの高品質なデザイナーズブーケを1,500円から2,000円前後の安くて手頃な価格で提供し、お客様に驚きと感動をお届けしています。

ーー店舗における新しい購買体験の仕組みについて教えていただけますか。
小林新一:
「ハナカジPickUp」という、ネットで注文した花をスーパーで受け取れるサービスを展開しています。従来は店舗のサービスカウンターを介して行っていた注文をシステム化し、お客様の利便性を大きく向上させました。日常的にお買い物に訪れる身近なスーパーで、高品質な花を気軽に受け取れる仕組みは、お客様にとっても大きなメリットであり、弊社ならではの強みだと自負しています。
多角的なブランディングと働きやすい環境の追求

ーー採用活動や多角的な広報戦略の具体的な取り組みをお聞かせください。
小林新一:
ここ10年ほど新卒採用に力を入れており、学生向けのインターンシップも積極的に開催して市場見学などを行っています。また、女性従業員でも働きやすい環境を整えるため、重量物を運ぶ際の台車の導入や、残業時間の削減など労働環境の改善を地道に進めてきました。広報面では、ホームページの強化やチャットボットの導入、テレビ出演、他社との記念コラボレーションなど多方面でのブランディングに取り組んでいます。弊社のインスタグラムでも、季節のフェアや日々の取り組みを発信していますので、ぜひご覧いただければと思います。
「感謝」を胸に、花を通じて人々の日常を豊かに

ーー貴社に根付く「感謝」の文化が生まれた背景について教えてください。
小林新一:
弊社では、退勤時に「お先に失礼します。ありがとうございました」と挨拶するルールがあります。これは、その日一日無事にお客様のもとへ花を届けられたことや、周囲の仲間に助けられたことへの感謝を忘れないためのものです。また、本社の入り口には花の供養塔を設けており、私自身も毎日手を合わせています。花の命を扱って商売ができていること、そして日々仕事ができる環境は決して「当たり前ではない」と考えており、この感謝の気持ちを全社で共有しているのです。
ーー最後に、今後の展望や目指す未来像をお聞かせください。
小林新一:
数字の面では、グループ全体で売上高100億円、メルシーフラワー単体で65億円という目標を掲げています。しかし最も重要なのは、花を通じて人々に幸せな暮らしを提供することです。スーパーマーケットという身近な場所で、手頃で魅力的な商品を提供し続けることで、花を買うハードルを下げたい。そして、花の消費を拡大し、日常の中で花を楽しむ文化をより多くの方に届けていきたいと考えています。弊社の強みを活かし、皆様の暮らしに寄り添う企業としてさらに進化し続けます。
編集後記
小林氏のお話をうかがい、スーパーの花売り場を「専門店」へと押し上げる情熱と、そこに関わるすべての人や花への深い愛情に強く胸を打たれた。当たり前のように花と向き合える環境に感謝し、供養塔へ毎日手を合わせる真摯な姿勢が、株式会社メルシーフラワーの温かい社風を築き上げているのだろう。デジタル化や柔軟な働き方を推進しながらも、根底に流れるその「感謝」の熱量が、これからも多くの人々の日常に彩りと幸せを届けてくれるに違いない。

小林新一/1971年、神奈川県生まれ。関東学院大学卒業。2000年に株式会社メルシーフラワーに入社。各物流センターや営業部門での現場経験を経て、2026年6月に同社の代表取締役社長に就任。