
パソコン周辺機器の取り扱いから始まり、デジタル顕微鏡や内視鏡、再生可能エネルギーなど、多岐にわたる事業を展開するスリーアール株式会社。社員わずか3名の創業期に入社し、現在の多角的な総合商社へと成長を牽引してきたのが代表取締役社長の今村陽一氏だ。「圧倒的なスピード」を掲げ、常に時代の先を読み組織を改革し続ける同氏に、モノづくりへのこだわりやAIを見据えたこれからの組織づくりについて聞いた。
創業期からの軌跡と「圧倒的スピード」の強み
ーーまずは、これまでのご経歴と社長に就任されるまでの歩みを教えていただけますか。
今村陽一:
大学卒業後、他社を経験した後にご縁があって弊社へ転職したのですが、当時の社員数は私を含めてわずか3名という規模でした。そこから会社とともに成長の軌跡を歩み、2015年に代表取締役社長に就任しました。
ーー少人数の体制から企業規模を急拡大できた要因は、どこにあるとお考えでしょうか。
今村陽一:
最大の要因は「スピードの速さ」にあると考えています。他社と比べても、弊社の意思決定は強烈に早いといえるでしょう。たとえば社長決裁が必要な案件でも、1日かかることはほぼありません。以前は定例の役員会を設けていましたが、現在はそれを撤廃し、各事業部長から都度話を聞いて、その場で即決する体制にしています。
ーー意思決定の速さが組織に根付いている背景には、どのようなお考えがあるのですか。
今村陽一:
私の仕事におけるこだわりとして、根底にあるのは「走りながら修正し、圧倒的なスピードで動く」という姿勢です。最初から100点満点の答えを求めて立ち止まるのではなく、まずは行動に移し、現場で軌道修正を繰り返していく。こうしたスピード感を持った挑戦の積み重ねこそが、現在の企業規模への成長を牽引してきた要因だと確信しています。また、それと同時に「当たり前のことを当たり前にやり抜く」という「凡事徹底」も、強固な組織を築く基盤として常に重んじています。
現場目線のモノづくりと多角化する事業展開

ーー現在は多くの事業を展開されていますが、主力となる事業について教えてください。
今村陽一:
弊社は、電子系やパソコン関連を主軸とした総合商社として事業を拡大してきました。創業当初はマウスなどのパソコン周辺機器からスタートしましたが、そこから時代の変化に合わせてBtoB領域へも進出しました。現在は、工場の品質管理などで重宝されるデジタル顕微鏡や工業用内視鏡のメーカー事業を主力としつつ、太陽光パネルや蓄電池といった再生可能エネルギー事業などへも領域を広げています。現場のニーズをいち早く汲み取り、多角的な事業展開をスピーディーに推進していくのが私たちのスタイルです。
ーー内視鏡や顕微鏡分野で、貴社の製品がお客様に選ばれ続けている理由は何でしょうか。
今村陽一:
オーバースペックにせず、本当に必要な機能に絞り込んでいる点です。無駄なスペックを省くことで価格競争力をもたせるとともに、メンテナンスや修理のしやすさを徹底的に追求している点もご評価いただいています。お客様が現場で真に求めているものを見極めることが、弊社のモノづくりへのこだわりです。
ーー海外への展開にも注力されているそうですが、具体的な取り組みを教えてください。
今村陽一:
日本の製品を海外へ販売する事業を行っています。この事業の特徴は、日本人のバイヤーが商品を仕入れ、外国人メンバーが彼らの感性で独自のブランドをつくり上げて販売している点です。日本人の感覚を押し付けるのではなく、現地の視点を取り入れることで新しい市場を開拓し、成長を続けています。現在は、フランス、ドイツ、イギリス、オランダ、ロシア、インドネシア、グアテマラ、中国、日本と10か国の人材が本社に勤務しています。
AI活用と派閥をつくらない組織づくり
ーー社内のDX推進やAIの活用については、どのように取り組まれていますか。
今村陽一:
会社を挙げてAIの活用を推進しています。今年の1月に社内でAIの推進委員会を立ち上げ、各事業部に若手のチームリーダーを配置しました。彼らが中心となって、現場で日常的にAIを使いこなせる環境を整えています。新しい技術にいち早く適応し、社内に浸透させていくことが今後の競争力に直結すると考えています。
ーー多様な事業部がある中で、組織をまとめるために大切にされていることは何ですか。
今村陽一:
社内に派閥をつくらないことですね。上司への不要な接待などは禁止しており、ハラスメントに対しても厳しく対処しています。上の人間が正しい行いを続けることが大切です。また、誰であっても発言しやすい心理的安全性の高い環境づくりを徹底し、「凡事徹底」という当たり前のことをきちんと実行できる組織を目指しています。
ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。
今村陽一:
当面の目標として、5年間で売上高200億円という数字を掲げています。そのためには、人をただ増やすのではなく、AIなどのツールを使いこなしながら、既存のメンバー一人ひとりの能力を引き上げていくことが不可欠です。人数を維持して売上高を伸ばすことを目指し、今後も圧倒的なスピード感を持って挑戦し続けていきます。
編集後記
「走りながら修正する」という言葉通り、インタビュー中の今村社長からは、現状に留まることなく次々と新たな一手を打つ並外れたエネルギーがひしひしと伝わってきた。非常に印象的だったのは、その強烈なスピード感の根底に、数多くの読書から得た普遍的な哲学や、メンバーの「人間力」を引き上げようとする確固たる視座が息づいている点だ。今後は社内の枠組みを超え、社外のスペシャリストをも巻き込んだコミュニティの形成まで見据えているという。既存の常識を軽々と飛び越え、独自の進化を続けるスリーアールの次なるステージが非常に楽しみである。

今村陽一/1977年、福岡県大川市出身。2000年、岡山大学文学部行動科学科卒業。株式会社NOVA(現・NOVAホールディングス株式会社)へ入社。2005年、スリーアール株式会社へ入社後営業部へ配属。その後統括本部長を経て、2015年9月に代表取締役社長に就任。現在はスリーアールエナジー株式会社、スリーアールソリューション株式会社、株式会社SACDOTNETの代表取締役を兼任する。