※本ページ内の情報は2026年11月時点のものです。

インターネット通販やサブスクリプションサービスの市場が拡大を続ける中、企業のLTV(顧客生涯価値)向上を支援するスタークス株式会社。単なる新規顧客の獲得にとどまらず、ブランドの「ファン」をつくり出し、長く深い関係性を築くマーケティングを提唱している。独自の「LTV-OS」を展開し、EC業界にとどまらず多業種へと支援の幅を広げる同社。その根底に流れる「三方よし」の哲学と、顧客の未充足のニーズに応え、新たな市場を開拓する経営戦略について、代表取締役の上ノ山慎哉氏に話をうかがった。

原点となった「三方よし」と、顧客価値を軸にした独自の哲学

ーーまずは、大学卒業後にベンチャー企業へ入社された経緯を教えてください。

上ノ山慎哉:
もともとベンチャー企業に強い興味を持っていました。若いうちからハードワークを通じて成長でき、何より当時の社長の考え方や会社の雰囲気に深く共感できたことが入社の決め手です。私が入社した当時は、従業員数は20名程度の規模で、これから会社が成長していくフェーズに新卒2期生として身を置き、新規事業の立ち上げやマネージャー、そしてグループ会社の役員など、さまざまな経験を積ませていただきました。

ーー当時のご経験の中で、現在の経営につながる原点となったエピソードはありますか。

上ノ山慎哉:
広告代理店としてダイレクトマーケティングの支援をしていた時のことです。ある大手の企業様が十分な広告予算を持ちながらも、あらゆる媒体に広告を出し尽くしてしまい、新たな出稿先が見つからずに悩んでいらっしゃいました。私も提案できるものすべて提案をして、既存の提案では、顧客が求める課題解決が難しい状況でしたが、目の前のお客様の強いニーズに役に立てないものかと考えました。

そこで思いついたのが、まだ広告媒体化されていない中小のネットメディアやメルマガを複数束ねた独自広告企画(現在でいうアドネットワーク)です。ご提案したところ、「こんなことをしてくれる会社は他になかった」と大変喜んでいただけました。同時に、広告の出稿を受けたメディアの皆様にも非常に感謝していただきました。

ーー目の前のお客様の課題解決に、そこまで強くこだわった理由は何だったのでしょうか。

上ノ山慎哉:
当時の営業活動は、1日100件テレアポをしてようやく1件お話を聴いていただけるような状況でした。さらにその先にはコンペが待っており、どこまで価格を安くできるかという価格だけで差をつける競争に巻き込まれてしまいます。私はそうした競争に消耗するのではなく、「この人のためにやりたい」と心から思えるお客様のニーズに応えることに挑戦したかったのです。需要があるにもかかわらず供給が追いついていない領域、つまり独自の価値を提供できる場所を自らつくり出すこと。そして、お客様やパートナー、自社だけでなく、社会にも価値をもたらし、長く続く「儲かるきれいごと」としての「三方よし」を体現すること。これが私のビジネスの原点であり、現在の経営ポリシーにもなっています。

震災を機に起業 孫正義氏の言葉を胸に未開拓の領域へ

ーーその後、独立・起業を決断されたきっかけは何だったのでしょうか。

上ノ山慎哉:
30歳くらいまでには起業したいと漠然と考えていましたが、決定的な転機となったのは2011年の東日本大震災です。あの未曾有の出来事を目の当たりにし、「今決断しなければ、一生何かと言い訳をして起業しないまま終わってしまうのではないか」「このまま挑戦しなければ、人生の最後に絶対に後悔する」と考えた末、会社へ退職と起業の意思を伝えました。そこから約1年かけて引き継ぎを行い、2012年にスタークスを創業したのです。

ーー起業に向けた準備期間中、事業内容はどのように決めていったのですか。

上ノ山慎哉:
起業の意思は固めたものの、最初はどんなサービスを展開すべきか悩んでいました。いろいろな方に相談する中で、ある先輩経営者から孫正義さんが28歳の時に語られた講演のCDをいただいたのです。当時の私も偶然28歳で、その内容に非常に感銘を受けました。私がその講演から学んだのは、「成長領域であること」「売上高に限らず、何かでナンバーワンになれること」「自分が情熱を持って取り組めること」の3つです。この教えは、私が何をすべきかを導いてくれる大きな指針となりました。

ーーその3つの条件から、なぜEコマースや定期販売型の支援を選ばれたのでしょうか。

上ノ山慎哉:
事業を構想していた当時、大手ECモールはすでに存在していましたが、市場全体としてはまだまだ成長領域でした。しかし、後発として大手のプラットフォームと同じ土俵で戦うのは得策ではありません。そこで目をつけたのが、リピート通販やサブスクリプションの領域です。この領域に特化することで、独自の強みを築き、トップを目指せると考えました。何より、同じお客様が何度も買ってくださるリピートモデルは、企業の売上高を安定させ、消費者にも好きなブランドと長く付き合える価値を提供できます。まさに私の情熱の源泉である「三方よし」が叶う領域だと確信し、踏み出しました。

ファンをつくりLTVを最大化する「LTV-OS」の展開

ーー現在展開されている事業の具体的な内容と、強みを教えてください。

上ノ山慎哉:
私たちが展開しているのは、企業のLTV(顧客生涯価値)を最大化するためのマーケティング支援です。ロイヤル顧客やファンを増やすことで、企業にとっては長く安定したお付き合いができ、消費者にとっても上質な購入体験を得られるという相乗効果を生み出します。私たちは、AI・SaaS・コンサルティングを組み合わせた「LTV-OS」を提供しています。ツールの提供に加え、施策の立案・実行・改善まで支援し、LTVを重視する経営を現場で実装していきます。

ーー新規顧客の獲得ではなく、あえて既存顧客のLTVに注力する背景には何があるのでしょうか。

上ノ山慎哉:
日本の人口が減少していく中、新規顧客を獲得するための広告費などのコストは上昇傾向にあります。広告による新規顧客の獲得に過度に依存すると、持続的な成長が難しくなります。新規顧客の獲得効率だけでなく、購入後の体験を磨き、ファンを増やして長く付き合っていただくことが重要です。近年のAI技術の進化により、一人ひとりのお客様に合わせた施策を、より効率的に実行できるようになってきました。私たちは、テクノロジーと人の力を組み合わせ、質の高い購入体験を継続的に提供できるよう支援しています。

ーーEC業界以外への展開も進められているとうかがいました。

上ノ山慎哉:
LTVを重視する考え方は、あらゆる業種で必要とされています。現在ではECにとどまらず、定期的に通っていただくエステサロンやフィットネスジム、さらにはリユース業界など、リピート利用を大切にする多種多様な業界のお客様へ支援の幅を広げています。

理念への共感を軸に 共に「1兆円のLTV経済圏」をつくる仲間を求めて

ーー事業を拡大していく上で、現在どのような課題や注力テーマをお持ちですか。

上ノ山慎哉:
EC業界では長く事業を展開してきたため認知度も上がってきましたが、他業界への新規取引先の開拓が急務です。そのためには、現場の営業力を底上げしていくことや、将来的に会社を引っ張っていってくれるような人材を育てていくことが必要不可欠だと感じています。LTV経営の価値を経営者の方と共有し、各社の経営課題に合わせて具体的な施策に落とし込むことが重要です。そのため、エンタープライズ型の営業経験を持ち、経営課題を理解し、解決策を提案できる人材を求めています。

ーー採用活動において、重視されているポイントを教えてください。

上ノ山慎哉:
何よりも「理念への共感」を絶対条件としています。営業とは単に物を売ることではなく、人の心を動かす仕事です。LTVを重視した経営やマーケティングの重要性を心の底から信じ、情熱を持って広めてくれる方と一緒に働きたいと考えています。中途採用であれば、EC以外の分野やリユース業界などの知見をお持ちの方が来てくだされば嬉しいですね。また、創業1年目から新卒採用も続けていますが、ここでもスキルより価値観を重視しています。新卒で入社したメンバーが、理念を軸にお客様の課題を解決できる人材へと成長するための教育の仕組みづくりにも力を注いでいます。

ーー最後に、貴社が目指す将来のビジョンをお聞かせください。

上ノ山慎哉:
私たちの目標は、自社の売上高を単に追うことではなく、「三方よしの経済圏」をつくり上げることです。売上高の規模だけでなく、社員やお客様をはじめ、関わる人々が豊かになる真の成長を重視しています。さまざまな規模や成長段階にある企業を支援し、その成長を積み重ねることで、「1兆円のLTV経済圏」を創出したいのです。規模のイメージでいえば、年商100億円の企業100社に匹敵する経済圏です。私たちは、事業戦略の構想から、マーケティング支援やデジタル化、組織づくり、成長を支える資金面の支援まで、企業の状況に応じて幅広く支える黒子でありたい。社会に不可欠な存在として、日本中に儲かるきれいごとを広げていきたいと考えています。

編集後記

震災を機に自らの人生を見つめ直し、「後悔しない選択」として起業の道を歩み始めた上ノ山社長。価格競争という消耗戦を避け、顧客にも企業にも真の価値をもたらす「三方よし」の哲学は、徹底した現場での原体験に裏打ちされている。人口減少社会において、新規顧客の獲得に過度に依存せず、ファンを育ててLTVを最大化するという視点は、日本企業の持続的な成長を考える上で、一つの道標となるだろう。「1兆円のLTV経済圏」という壮大なビジョンに向け、理念に共感する仲間たちと共に歩みを進める同社の今後に期待したい。

上ノ山慎哉/1983年新潟県生まれ。2006年大学卒業後、株式会社ファインドスターに新卒入社。新規事業の立ち上げ、マネージャー、グループ会社役員を経験。2012年にスタークスを創業し、代表取締役に就任。現在は、AI・SaaS・コンサルティングを組み合わせた「LTV-OS」を通じて、企業のLTV経営の実装と事業成長を支援している。