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2011年、神戸のワンルームから始まった株式会社Cosmo Japan。英国を起点に、日本の中古車をヨーロッパ、アジア、カリブ海地域のディーラーへ輸出するBtoB企業として成長し、現在は約50名の組織となった。スウェーデン出身の代表取締役、ペッターソン・エミル氏は「会社は二つの山を登る」と語る。一つ目は、知られ、信頼され、利益を出せる会社になること。二つ目は、創業者の物語ではなく、全員の物語で動く会社になること。同社は今、二つ目の山の登り口に立っている。一台の車から始まった創業の軌跡と、未来に向けた組織づくりへの挑戦について、同氏に聞いた。

一つ目の山 「車を探してくれないか」 一台の車から始まった会社

ーーまずは、日本で起業されるまでの経緯を教えてください。

ペッターソン・エミル:
私は1970年にスウェーデンで生まれ、母国の大学ではコンピュータとビジネスを専攻していました。その後、卒業してからは一度コンピュータ関連の会社に就職したのですが、「もう少し勉強したい」と思い直し、交換留学生として関西外国語大学に入りました。弊社の原点は、まさにそこにあるのです。

事業のつながりより先に、人のつながりがありました。関西外大で出会ったのが、アメリカ出身のDon Sternbergと英国出身のHoward Listerです。当時3人で日本企業をリサーチして本を出版する活動に取り組む中で、一緒に学び、信頼し合い、何かができそうだと感じていました。

そして関西外大を卒業した1997年、3人共同の形で日本でのビジネスを始め、その第一歩として、知人が手掛けていた家具の輸入に協力することからスタートしました。ところが為替が急変し、一夜にして計画が消えてしまったのです。母国に帰国する選択肢もありましたが、そのときある一人のお客様から「車を探してくれないか」と声がかかりました。「君たちを信頼しているから」と、先にお金を預けていただき、専門のディーラーでもない私たちに正式に依頼をしてくれたのです。そこで私たちは日本で信頼できる仕入先を見つけ、そのお客様と日本の仕入先を一台の車でつなぎました。これが、Cosmoが仕入れから輸出までを手がけた最初の一台です。

そこにはすでに、この会社のすべてがありました。私たちを信頼してくれるお客様、供給してくれるパートナー、そして真ん中で二者をつなぐCosmoです。弊社には「Vehicles is what we do, Relationships is who we are, Connection is what we seek(車は仕事、関係性は私たち自身、つながりこそ求めるもの)」という合言葉がありますが、一番のキーワードは「パートナー」です。お客様と良い関係性を築きながら日本の車を紹介してつなぐという私たちの根本的な役割は、まさに最初の一台を手がけた時点で決まっていました。

こうした「人とのつながり」を重んじる姿勢は、お客様とのビジネスの場面に限ったことではありません。学生時代に日本で出会った私たち3人の絆も、当時からずっと続いています。2022年には、DonとHowardと私の3人で、学生時代に指導を受けた恩師の功績を称える植樹を関西外大で行いました。私たちにとっての「関係性」とは、ビジネスである以前に、人生をともに歩む大切な絆のことなのです。

ーー改めて、2011年の貴社設立にはどのような背景がありましたか。

ペッターソン・エミル:
1997年に最初の一台を輸出して以降、私たちは英国の企業とパートナーを組み、日本の営業担当のような形で事業を続けてきました。ところが2011年、それまでパートナーだった英国企業との取引が途絶え、足元の地面が消えるような思いを味わいました。しかし、何年もかけて築いたお客様と仕入先との関係は消えていなかった。そこでCosmo Japanを設立し、自ら飛行機に飛び乗って、パートナー一人ひとりとの関係を立て直していきました。

このとき学んだのは、「これは創業者だけで背負えるものではない」ということです。お客様との約束を果たし続けるには、私たちと同じ熱量で向き合ってくれる仲間が必要でした。個人の力に頼るのではなく、メンバー全員で助け合いながら成果を出していく。現在、弊社の最大の強みであり、私たちが何よりも大切にしている「One Team」という組織のあり方は、まさにこの時の経験から生まれています。

ーー現在の事業内容をお聞かせください。

ペッターソン・エミル:
日本国内の良質な中古車を買い付け、海外のカーディーラーへ輸出するBtoB事業です。仕入れは全国のオートオークションが中心ですが、ディーラーやリース会社など独自のルートも持っています。主力市場は創業時からつながりの深い英国で、そこを起点にヨーロッパ、アジア、カリブ海地域へ展開しています。

「悪いニュースほど早く伝える」 顧客にも仕入先にも選ばれるパートナーであること

ーー同業他社とは、どのように差別化を図っているのでしょうか。

ペッターソン・エミル:
車はどこで買っても車ですが、人との関係性は真似できません。海外のディーラーにとって日本の車を買うルートはいくらでもある中で、「Cosmoから買いたい」と思っていただけるかどうかは、すべて仕事への向き合い方で決まります。だから社内の合言葉は「It's not what we do, it's the way we do it(何をするかではなく、どうやるか)」なのです。

そうした仕事への姿勢を、私たちは「ASEC(Awesome Service with Exceptional Communication)」と呼んでいます。期待どおりの車を届けるのは当たり前で、そこに「答えの速さ」と「明確さ」を加える。たとえば船の遅延のようなネガティブな情報ほど、早く、正直に伝えます。悪いニュースを隠さない会社だと分かっていただければ「Cosmoなら安心だ」という絶対的な信頼につながり、それが紹介やリピートを生みます。2011年に関係が消えなかった理由も、結局はこれです。

さらに、お客様を一人の担当者ではなくチームで支えている点も私たちの特徴です。あえて担当者を固定せず、チームの誰が対応しても同じ水準のサービスを提供できる体制をつくっています。お客様ごと、市場ごとに違うニーズをチーム全体で理解しているので、誰かが休んでも商談や手続きが止まることはありません。いつでも安心して任せていただける環境を整えています。

ーー仕入れや物流の面ではいかがですか。

ペッターソン・エミル:
「選ばれるパートナー」は顧客に対してだけではありません。オークション、ディーラー、リース会社、船会社といった仕入先や取引先に対して「模範的な顧客であること」を大切にしています。相手が必要とするものを、必要なタイミングで確実に返す。そうした積み重ねで築いた関係があるからこそ、イレギュラーな事態が起きても優先的に出荷枠を確保できる。物流面の強さは、実は関係性の強さなのです。

「二つ目の山」 創業者の物語から 全員の物語へ

ーー貴社の組織としての特徴を教えてください。

ペッターソン・エミル:
弊社は従業員約50名のうち約6割が女性で、平均年齢は33歳です。中古車業界のイメージとは違う、従来の枠にとらわれない多様なチームだと思います。ただ、これは単に女性を多く採用しようとしたのではなく、「自分らしくいられて、最高の仕事ができる場所(Place To Be)」をつくろうとした結果です。パートタイムで入社したスタッフが現在は役員やマネージャーとして活躍している例もあり、実力があればどんどん重要なポジションを任せる文化が根付いています。社内の英語レッスンや手厚いトレーニングもその一環です。

ーー「二つ目の山」とは何でしょうか。

ペッターソン・エミル:
一つ目の山は、知られ、信頼され、利益を出せる会社になることでした。それは登り切りました。ただ、一つ目の山は創業者を中心に築かれたものです。二つ目の山は、会社を中心に築かなければならない。創業者がいなくても、同じ考え方で同じように動き、成長できる会社になることです。

1997年や2011年に危機に直面した際も、私たちは足元が揺らいでから慌てて道を見つけました。しかし今回は違います。何も崩れていないうちに自分たちで道を選び、創業29年にして初めてこれまで創業者の頭の中にだけあった会社のビジョンや大切な価値観、これからの組織体制などを明文化し、全社員と共有しました。そこで伝えたのは、「Cosmoの未来は創業者の手から、全員の手に渡る」ということです。

ーーその文化を支えているものは何ですか。

ペッターソン・エミル:
「Team Player(チームを第一に)」「ASEC Mindset(すべての接点で良い体験をつくる)」「Relationship First(目先の利益より長期的な信頼)」「Take Ownership(結果を自分のものとして引き受ける)」「Continuous Learning(問い続け、毎日改善する)」という5つのコアバリューです。これは新しく発明したのではなく、Cosmoの従業員がすでに持っているものの中から「掘り出した」ものです。5つの英雄的な行為ではなく、全員が毎日やる5つの普通のこと。それができれば、誰か一人が支えなくても会社は回ります。

あわせて、行動の基準として「RAO」という、Responsibility(任された仕事をやり切る)、Accountability(結果に責任を持つ)、Ownership(障害があっても成功させる)の3段階を明文化しています。役職の上下ではなく「どこまで当事者として引き受けるか」という成長の地図です。

ーー創業者に依存しない仕組みとして、具体的に何を変えたのでしょうか。

ペッターソン・エミル:
会社を6つのピラー(商業、物流、資本、人材、システム、実行)に分け、それぞれにリーダーを置いて、目標数値や成果にはすべて「名前のついた一人の責任者」がいる状態をつくりました。90日ごとに全社で進捗を確認し、各リーダーが自分の領域の判断を自分で下す。私の役割は「決める人」から「仕組みを守る人」に変わりつつあります。

その延長で、今後、私の後を引き継ぐ次世代のリーダーを外部からも迎えたいと考えています。組織全体を俯瞰してチーム間の連携を推進でき、将来的にはCOOとして会社の実行を担っていただけるような方です。これは私がCosmoから離れるということではありません。私に依存せず、自分たちの力で走り、成長できる組織をつくり上げること。それこそが、創業から今日まで私が会社を育ててきた最大の目標であり、「創業者の物語」を完結させて「全員の物語」へとバトンを渡すための、必然的なステップなのです。

ーー人事制度についても新たな取り組みがあるそうですね。

ペッターソン・エミル:
評価制度を「成果・バリュー・成長」の3つの軸で再設計しています。社員向けには一言で「成果は給与を、成長は等級を、バリューはチームの一員かどうかを決める」と説明しています。ポイントは、頑張りや意欲ではなく、本人がコントロールできる成果だけを見ることです。会社全体の数字は個人の評価には使わず、全社員を対象とした利益分配としてOne Teamで分かち合う。Cosmoが勝てば、社員も勝つ。このように誰もが納得できるフェアな評価と報酬の仕組みを整えることで、メンバー全員がモチベーションを高く保ち、安心して長く働き続けられる環境を目指しているのです。

ーー最後に、今後の展望をお願いします。

ペッターソン・エミル:
目指すのは、みんなが安心して長く働ける「サステナブルな会社」です。システムで楽にできることは自動化して、一人ひとりが関係性づくりという本来の仕事に時間を使い、その成果を社員の待遇にしっかり還元していく。

このように会社として最高の環境を整える一方で、自走する組織をつくり上げるためには、メンバー一人ひとりの強い当事者意識が欠かせません。だからこそ、社員には一つだけ「自分のベストを尽くし、自分の担当に完全にオーナーシップを持っているか」という問いを渡しています。One Teamは与えられるものではなく、選ぶものです。私たちが彼らを選び、彼らが私たちを選んだ。二つ目の山は、全員で登ります。

編集後記

「二つの山」という独自の哲学で、中古車輸出ビジネスに新たな地平を切り拓く株式会社Cosmo Japan。一台の車から始まった同社が世界中で選ばれ続ける理由は、「悪いニュースほど早く伝える」という誠実さと、ステークホルダーとの間に結ばれた強固なパートナーシップにある。そして現在、創業者の手から全社員へとバトンを渡すべく、6つのピラーや5つのコアバリューによる「創業者に依存しない自走する組織づくり」が着実に進んでいる。「One Team」で二つ目の山を登り始めた同社の、サステナブルな未来が非常に楽しみである。

ペッターソン・エミル/1970年、スウェーデン生まれ。1995年にマラルダーレン大学を卒業。関西外国語大学に交換留学生として在籍。GBR(Guided Business Research)に取り組む中で、Howard Lister氏およびDon Sternberg氏と出会う。1995年より日本に滞在し、自動車輸出事業を開始。これらの経験をもとに、2011年株式会社Cosmo Japanを設立。