Mipox株式会社 逆境を乗り越えて。どん底から這い上がった経営者の成長物語 Mipox株式会社 代表取締役社長 渡邉 淳  (2023年3月取材)

インタビュー内容

【ナレーター】
2025年に創業100年を迎える老舗製造メーカー「Mipox株式会社」。

「塗る・切る・磨くで世界を変える」を使命に掲げる同社は、これらをコアとする事業を展開。研磨分野において、製品製造から受託加工、コンサルティングまでをトータルに手がけ、研磨やコンバーティングなど、幅広いニーズに対応する総合ソリューションカンパニーへと変貌を遂げた。

近年では、本社をアセットライト化し、研磨に関わるオウンドメディアをリリースするなど、製造業にとらわれない取り組みを推進し、成長を続けている。

どん底から這い上がった経営者の軌跡と思い描く未来像とは。

【ナレーター】
自社の特徴と強みについて、渡邉は次のように語る。

【渡邉】
当社は基本的に非常にニッチなところにフォーカスしています。そのニッチな分野のなかで世界で絶対的なシェアを取ることが当社の戦い方であり、特徴だと考えています。

もうひとつは、「製品」や「品質」です。ひとつのファクトだけで勝負せず、研磨の製品や技術、当社の品質などを掛け算していけることが、当社の大きな強みだと思います。

【ナレーター】
渡邉の原点は幼少期にある。父が経営していた現Mipoxの工場と自宅が一体化しており、毎日のように工場に出入りしていた渡邉は、物心がついたときには将来この工場を継ぐことを意識していたという。

その後、アメリカ留学を経て1994年にMipoxに入社。今でも印象に残っているという当時のエピソードについて、こう振り返る。

【渡邉】
面接をして「あぁ渡邉くん、働きたいか」と、わざとらしく言われたのですが、「じゃあまた連絡する」と言われて2日後ぐらいに連絡が来たんですね。そのときに何を言われたかというと、「渡邉くん、採用だ」と。

ですが、「君、英語ができるから、アメリカの子会社に行ってくれ」と言われたのです。私は当時、アメリカから帰ってきたばかりだったため、ショックを受けました。

しかも「アメリカで営業をやってほしい」という話だったので、「私は工場で働きたいです」「アメリカに行くのであれば、この会社の入社をお断りさせていただきたい」と言いました。

そして「できれば工場で採用していただけませんか」とお願いをしました。その後、いろいろ検討してもらった結果、工場で採用していただき、働き始めることになりました。

【ナレーター】
工場勤務後、アメリカ拠点にマネージャーとして赴任するなど、順調にキャリアを重ねる一方で、会社の業績は2005年をピークに悪化の一途を辿り、2008年に十数億円の赤字を計上する。どん底とも言えるなか、渡邉は父に代わり代表取締役社長に就任。当時の心境と就任時に取り組んだこととは。

【渡邉】
当時、当社の売上は100億円から30億円になり、今まで出ていた利益の約半分が赤字の状況でした。社員もどんどん辞めていくなかで正直、相当右往左往していたと思います。

特に就任直後は、どれだけマイナスのDecision Making(意思決定)ができるかが最も重要でした。

たとえば、「新しく工場を建てる」「投資をする」などはポジティブな言葉ですよね。このようなポジティブな意思決定は、決断する側にとっては非常に簡単だと私は思っています。

しかし当時一番行ったのは、「工場閉鎖」「不採算事業をやめる」などマイナスの意思決定でした。

売上や生産量を上げることができた最大のポイントは、スピード感をもって「やめる」「止める」「捨てる」の決断をしたことで、身軽になれたことだったと思います。

【ナレーター】
改革のために取り組んださまざまな施策が奏功し、2011年、見事に黒字化を達成。挑戦を成功させるために渡邉が大切にしていることとは。

【渡邉】
「失敗すること」ですね。

「成功させよう」「うまくいかせよう」と思って考え抜いて、「やってみる」ことが重要だと思います。

「失敗したらどうしよう」とか、「うまくいかなかったらどうしよう」とあまり考えすぎず、うまくいかなかったら成功へのヒントやフィードバックをもらえると思うことが大切です。

躊躇せずに、まずはアクションを起こして、「やり続ける」「チャレンジし続ける」こと。考えるだけじゃなくてやってみて、失敗したら失敗から学ぶことが一番重要だと思います。

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経営者プロフィール

氏名 渡邉 淳
役職 代表取締役社長
生年月日 1971年1月17日
出身地 東京都
愛読書 ストーリーとしての競争戦略、失敗の本質
略歴
日本とアメリカの大学で学んだ後、1994年日本ミクロコーティング株式会社(現Mipox株式会社)へ入社。製造現場でキャリアをスタートし、生産技術、国内営業、海外営業を担当。その後マレーシア駐在員、米国子会社赴任を経験。主にハードディスク業界向け製品の営業に携わる。その後半導体部門部門長、海外支援部門長に従事。2007年取締役、2008年に先代から引き継ぐ形で代表取締役社長に就任。

社長就任後は赤字からの脱却、クラウド型 顧客管理ツールを導入し、ITインフラ整備を通じて企業変革を行う。製造業としてのDXの取り組み強化でで更なる生産効率向上、課題の可視化・解決に取り組む。

会社概要

社名 Mipox株式会社
本社所在地 栃木県鹿沼市さつき町18
設立 1925
業種分類 ガラス・土石製品
代表者名 渡邉 淳
従業員数 368 名
WEBサイト https://www.mipox.co.jp/company/outline/
事業概要 研磨フィルムの製造販売事業、液体研磨剤お製造販売事業、研磨装置の開発販売事業、研磨関連製品の製造販売事業、受託製造事業(コーティング加工・研磨加工業務の受託)、機能性薄膜塗布事業
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