株式会社ティーケーピー 「貸し会議室」事業国内シェアトップ。国内外合わせて230施設以上の直営会議室を運営する、グロース上場企業 株式会社ティーケーピー 代表取締役社長 河野 貴輝  (2023年10月取材)

インタビュー内容

―ティーケーピー誕生秘話―

【ナレーター】

2005年、河野はティーケーピーを創業することになるのだが、どのような道筋で貸会議室ビジネスにたどり着いたのか。

【河野】

私としてはきちんとした事業をして、そしてその事業を世の中に根付かせて、会社というのは成長させて大きくするべきだという持論を持っていました。ですので、本物の会社をつくろうと、自分でやらなければダメかなというくらいに、当時使命感を持って会社をつくったのを覚えています。

ネット証券とネット銀行をつくっていったのですが、インフラビジネスでしたのでお金がかかります。しかし自分個人でやる場合は大企業の裏があるわけでもありませんので、やはり自分が持っている資金の範囲内でしかリスクを取れません。そうすると、小さく生んで大きく育てるしかなかったのです。

その時に私が持っていた武器というのは、まだ32歳でしたので、何でも挑戦できるといった若さと、自分が経験してきたインターネットと金融的な考え方の2つが武器でした。その武器を持ってやるとなると、やはり世の中の隙間を見つけるしかなかったのです。

その時、たまたま見つけた隙間が、六本木にあった取り壊しの決まっているビルでした。3階建ての1階にレストランがあって、2階と3階が立ち退きで空いていました。このスペースを取り壊されるまで使わないのはもったいないということで、ここがはじめの一歩でした。そこを一点突破して、貸会議室のビジネスを始めたということです。

ただ、貸会議室だけではビジネスは難しいだろうという思いもありましたし、色々な方から「3つは柱を持たなければいけない。会議室だけではだめだよ」というアドバイスをありがたく頂戴していましたので、常に会議室をやりながらもほかにビジネスチャンスはないのかというのは、本当に色々と考えていましたし、試してみました。

しかし結論から言うと、この貸会議室ビジネスだけがどんどん大きくなっていき、あとのビジネスはなかなかうまくいかなかったのです。そういうところで、このビジネスを伸ばすことがたぶん私がやるビジネスなのだと気づかされました。本当に最初のころから雪だるま式に大きくなっていきました。その時に自分でつくったインターネットを見たり、通帳記帳をして入金確認をしたり、使っているお客様の姿を見たりすると、やはりすごくこれはニーズがあるのだと感じました。ならばもっともっと良いものをつくろうと思って、大きくしていきましたね。

―社名に込めた思いと次の一手―

【ナレーター】

ティーケーピーという社名には、数々の思いが込められているという。

【河野】

もともとは私の名前で、「Takateru Kawano Partners」(タカテル・カワノ・パートナーズ)から始めたわけですが、その後、貸会議室が東京で広がりましたので、「Tokyo Kashi Place」(東京・貸し・プレイス)という形で、ティーケーピーとしました。そうこうしているうちに、やはりティーケーピーの源は、情熱と革命だということで、情熱革命企業ということで、「Team Kakumei with Passion」(チーム・革命・ウィズ・パッション)という名前でティーケーピーと呼ぶようになりました。ティーケーピーのマークはフランス革命の革命旗のマークにしたのです。

そして今年になり、上場をするので、より馴染む名前はないのかと考えまして、正月に考え付いたのが、「Total Kukan Produce」(トータル・空間・プロデュース)ということで、我々は空間を再生して、それをまた新しく流通させる企業なのだと思い至り、空間再生流通企業という思いを込めて、トータル・空間・プロデュースという名前にしました。

【ナレーター】

情熱と革命を源に空間を再生させ、新たに流通させる。河野が次のステージに見据えるのは世界だ。

【河野】

私は12年前に自分で会社をつくって、1代目でこれを大きくしてきたわけです。そうなるとやはり1代目というのは、私が思うにこれをどこまで成長させられるかということにすごくこだわりを持っています。生涯現役でいるのかなと思っていますし、やはり私がつくったビジネスモデルをどのように応用させてBtoBからBtoCへ、そして日本から世界へ、どこまで展開できるのだろうかということにわくわくしています。

サラリーマンを辞めてベンチャーの世界に入ったのも、レールを敷かれたくなかったというのが一番大きな思いでした。ですので、これから先もレールなく、どこまで成長できるかというのを、人生を賭けてやっていきたいという思いです。個人でやることには限界がありますから、この企業の法人格を使って、世界に挑戦していきたいと考えております。

―1億円の損失から手繰り寄せたチャンス―

【ナレーター】

大学在学中は株式投資に熱中。財務会計や株式に関する勉強を重ね、大学卒業後大手商社の為替証券部へ就職した。

【河野】

個人ポジションで株式の売買や債券、為替の売買ができましたので、損をすると辛いんですね。一番辛かったのは、当時、相場を張っていまして、夜、食事をして帰宅した時、アメリカの雇用統計が出たのですが、自分が考えていたのと反対の結果になりまして、いきなり1億円程損をしてしまったことです。翌朝会社に行くと、1億円損をしていたのです。これは本当にショックでした。しかも上司からも怒られ、始末書まで書かせられて大変でしたね。結果が出るのはいいのですが、悪い方に転がると本当に心苦しくて、それからもう朝から夜まで皆のために働いていたような気がします。しかしそういった形で、本当に色々な経験をして、どうすればマーケットは反応するのかなど、様々な勉強をさせてもらいました。

【ナレーター】

その後、インターネットの可能性にチャンスを見出した河野は、インターネットの証券会社の設立に参画。当時をこう振り返った。

【河野】

成功するかしないかで、全て変わりますからね。お金を集めて、事業に投資をして、きちんと稼いでいかなければならないですし、日銭が入ってこないとなりません。これは本当にしんどいなと思いました。特にネット証券や、その後私はネット銀行の立ち上げもしましたが、やはりイニシャルの投資に対して本当に回収ができるのかと、毎日が不安でした。しかし何とかしなければならないですし、お金も集めて事業もやらなければいけない。そしてきちんと社会に必要な事業に持っていかなければいけない。本当に毎日が緊張の連続だったというふうに覚えています。

やはり新しいものをつくっていきたいということです。好奇心旺盛ですが、でもやはり、新しいものを世の中に出していきたいという気持ちがありました。新しいものをクリエイトするという気持ちでやっていたのかなと思います。

―急成長を実現させた2つの転機―

【ナレーター】

その後、業績は順調に伸び続けたが、2008年、リーマン・ショックという大きな試練がその勢いを阻んだ。

【河野】

貸会議室が、本当に一瞬のうちに5億円くらいキャンセルが出まして、1か月に1億円の赤字が出ました。初めての赤字がいきなり1億円の赤字だったのです。株主も株の買い取り請求をしてくるくらいで、これはもう耐えきれないという体験をしました。その時にアメリカのニューヨークに行ったところ、やはり資本市場の厚さを感じて、マーケットも戻るだろうし、勝負は東京以外にもあるということに気付かされたのです。そこで海外を意識するようになりました。

【ナレーター】

苦境を乗り越えた河野は2011年、新たに2つの事業を展開。この2つの事業がティーケーピー急成長の足掛かりとなる。

【河野】

まず1つは、東京以外、海外にもマーケットがあると思っていましたので、ニューヨーク、そしてアジアの市場に参入すると決めたのが震災の後になります。そしてもう1つは、震災があったので、イベントがどんどん自粛し、イベントホールやホテルの宴会場などがあまり稼働しなくなったのです。そこをティーケーピーが企業専用の会場、バンケットホールに変えていくというところに、私は着眼しまして、そこに進出をしていきました。

今まで我々は貸会議室をお貸しして、弁当やケータリングといったサービスは外注していたのですが、その時にホテルの厨房や料理人、音響、映像のサービス、そういうサービスマンも内製化することができましたので、単なる貸会議室ビジネスから、付加価値を付けた料理や弁当、ケータリング、音響、映像、レンタルといった事業への展開が可能になりました。

ここ数年はさらにそこに宿泊施設を付け加えて、ティーケーピーがトータルで会議をプロデュースする、そういったところに出ていくことになりました。最近ではイベントプロデュースの会社もM&Aさせていただき、とにかく会議、イベントに関わる全てのことをティーケーピーは提供できると、そういったソリューションを持つということに至っております。

―求める人物像と視聴者へのメッセージ―

【ナレーター】

ティーケーピーを人種のるつぼにしていきたいと語る河野。求める人物像とは。

【河野】

貸会議室から始まったBtoBのビジネスですけども、最近では郊外、リゾートの研修、そして旅館をハイブリッドな研修旅館とリゾート旅館と一緒にしたような建物に変えていくという形で事業を展開しています。ティーケーピーが持っている約9万社のお客様、BtoBから広がるBtoCのビジネスと、そして実際のBtoCのビジネス。このハイブリッドなビジネスで展開をしていきたいと思っていますので、範囲が非常に広がっていきます。

そのためには、やはり色々な経験をされた方にティーケーピーに入っていただいて、皆さんの領域を合わせて新しいものをつくっていきたいと思っています。ですので、貸会議室をやっている人、というわけではなく、新しい経験、「自分はBtoCでこんな経験をしてきたんだ」「BtoBでもこんな経験をしてきたんだ」と、とにかく今あるもの、自分が今まで経験してきたものをさらにティーケーピーと合わせることで化学反応を起こしていける。そういった環境を用意できますので、そういう意味ではティーケーピーで今までの経験をさらに革命的に化学反応を起こして、新しいビジネスにチャレンジしていきたいと、こういう思いがある方にぜひ、入っていただきたいと思っております。

【ナレーター】

2017年8月、河野は著書『起業家の経営革命ノート』を出版。ティーケーピーの全てが詰まった渾身の1冊だ。

【河野】

私が12年間、ティーケーピーを興してつくってきた、メソッドや考え方を全て濃縮したものが、エピソードとともに入っています。4ページ読み切り型で、どこから読んでも本当に面白い内容になっています。例えばこの中には、どのように交渉するのかといった交渉術など、おそらく普通の本には書いてないようなことが書いてありますので、河野貴輝式の切り口ですね。こういうのを通じて、やはり同じものを見るにしても、こんな見方があるのだと、多面的に見ていくことがこの『経営革命ノート』に載っています。とにかくバランスが大事であり、多面的に物事は見るのだと、そして、情熱でモノは動かすのだということが熱く書いてあると思いますので、ぜひご覧になっていただければと思います。

―視聴者へのメッセージ―

【河野】

ティーケーピーは変化についていって、そして新しい価値観、新しいものをつくっていこうと、こういう思いで12年前に私が作った会社です。会社はどんどん成長していって、小さく生んで大きく育てました。これから、日本から、そして世界に出ていきたい、もっともっと世界に通用する会社を日本企業としてつくっていきたいと、こういう思いで会社を成長させていきたいと思っています。そういう中で、ぜひ自分に新しい価値観、自分の持っているものを全部ティーケーピーにぶつけて、そして化学反応を起こして、新しい事業を一緒につくっていきたい、毎日をわくわく生きていきたい、こういう人たちと一緒に仕事をしていきたいと思っております。ぜひ、ティーケーピーで一緒に仕事をしましょう。

【ナレーター】
貸会議室や宿泊施設など、企業向けの空間シェアリングサービスを展開する株式会社ティーケーピー。

主力事業である貸会議室は、国内231拠点、総室数1900室以上と、業界シェアトップを誇り、2017年には東証マザーズ市場(現:東証グロース)へと上場を果たす。

近年では、公園や不動産の再生事業にも積極的に取り組んでおり、その事業領域を拡大させている。

革新的ビジネスモデル誕生の軌跡と、躍進の裏側に迫る。

【ナレーター】
自社の強みについて、河野は次のように語る。

【河野】
当社の強みとなる部分が“持たざる経営”です。これにより、事業への投下資本やイニシャルコスト(初期費用)を非常に低く抑えています。その結果、事業の立ち上がりがやはり早くなります。

逆に資産の保有に重点をおいた経営を行うと、やはり、支出がとても大きくなってしまいます。また、(資産が現金以外の形で動かせないまま長期間保有されているという)いわゆる「お金が寝ている」あるいは「お金が塩漬けになっている」状態にもなってしまいます。

常にスピード感を持って成長するための“持たざる経営”(アセットライト経営)が我々の特長だと考えています。

【ナレーター】
河野の原点は幼少期にある。海の家や祖父が経営するスポーツ用品店などを手伝い、その経験から自分も経営者になりたいと思うようになったという。

大学卒業後は大手商社に就職するも思いは消えず、ビジネスを模索していたときに偶然見たあるものが、後の貸会議室事業の着想につながったと振り返る。

【河野】
当時は六本木にある「東京ミッドタウン」が開発されている最中で、そこには、すでに取り壊しが決まったビルがたくさんありました。

そのうちの1棟に3階建てのビルがあって、1階ではイタリアンレストランが営業を続けていましたが、2階と3階はもう立ち退きが終わった状態でした。とはいえ、1階のレストランが立ち退くまでは、このビルを取り壊すことはできないわけです。

このビルを見て、私は「もったいない」と思いました。2階と3階はすでに立ち退いているため明かりはついていませんでしたが、営業中の1階には電灯がともっているんです。

そこで「電気自体はこのビルまで来ているのだから、取り壊されるまでの期間、2階と3階のスペースを貸し会議室にしたらよいのではないだろうか」と思いついたことが、現在の貸会議室事業を始めるきっかけになりました。

そして、3階のワンフロアは近隣の工事現場の事務所として貸しましたが、2階フロアは時間貸し会議室(タイムオフィス)というものを試しにつくってみたんです。

利用料金は1時間1人100円とし、インターネットのみで集客してみたところ、大きな反響がありました。2~3時間の利用が最も多く、収益は大きくて、まさに直感通り、手ごたえ十分でした。

【ナレーター】
2005年に株式会社ティーケーピーを創業し、わずか2年で年商20億円を突破するなど、順調なスタートを切った。その理由について、河野は次のように語る。

【河野】
この貸会議室事業の成功の秘訣は「利は元にあり(利益は上手な仕入れから生まれてくる)」ということだと思います。

(先程お話しした六本木のビルのように)諸事情を抱えた物件を低コストで仕入れ、それを“時間貸し”という形でリーズナブルに提供することで、利用者の皆様に喜んでいただきました。

当社が事業を行う上で大切にしているのは、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の“三方よし”の精神です。

そのままでは1円も利益を生まないような空きスペースを、コストをかけずに当社が仕入れて貸し出すという「売り手よし」。利用者の皆様も1時間単位で時間借りができ、借りた分だけお金を払えばよいという「買い手よし」。

その結果、当社に利益が生まれ、その中から支払った税金が社会に還元される「世間よし」ということです。

【ナレーター】
しかし2020年、コロナショックが発生。一転して窮地に陥ることとなる。

【河野】
「緊急事態宣言」の話を聞いた時には、「もう、どうしよう」という思いでした。

貸し会議室のキャンセルが嵐のように相次ぎましたが、家賃と人件費にかかる毎月30億円の支払いは減免されないわけです。

当時、当社には現金で60億円の資産がありましたが、仮に1ヶ月30億円の赤字が出れば、2ヶ月でそのお金は尽きてしまいます。「倒産」の2文字が脳裏にはっきりと浮かびました。

「2005年に会社を設立し、リーマン・ショックや東日本大震災もどうにか乗り越えて上場まで果たしたのに、ここに来て、この人生はもう終わってしまうのか」という思いでいっぱいでした。

【ナレーター】
このまま倒産するわけにはいかないと、河野は資金の確保に奔走し、何とか窮地を脱することに成功。しかし、2021年も依然として新型コロナウイルスは猛威をふるっており、このままでは会社がもたない。そこで河野は、前代未聞の行動に出る。

【河野】
「総理大臣に会おう」と思いつきました。そして、当時の菅(義偉)総理に直談判をしに行ったわけです。

これが何とか功を奏して、「(新型コロナワクチンの)職域接種」を、全国にある当社の貸会議室を会場にして行うことが決まりました。

この期間中には、当社の会場で約150万人の方にワクチンを打つことができました。その結果、お客様との関係性はより深く、強いものとなりました。

そして、翌年の春の新入社員研修から、再び元のように、当社の貸会議室をご利用いただけるようになったのです。

またコロナ禍以前より当社の経営も筋肉質なものに変わっていましたので、売上が上がった際の利益率が高まりました。そして事業をさらに拡大していった結果、過去最高利益を出せるまでに業績を回復することができました。

コロナ禍の辛さを武器に、ピンチをチャンスに変えて、何とかまた、コロナ前の状態まで業績が戻ってきているという現状です。

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経営者プロフィール

氏名 河野 貴輝
役職 代表取締役社長
生年月日 1972年10月13日
出身地 大分県
略歴
1996年慶應義塾大学商学部卒業後、伊藤忠商事株式会社為替証券部を経て、日本オンライン証券株式会社(現auカブコム証券株式会社)設立に参画、 イーバンク銀行株式会社(現楽天銀行株式会社)執行役員営業本部長等を歴任。2005年8月当社設立、代表取締役社長就任、現在に至る。

会社概要

社名 株式会社ティーケーピー
本社所在地 東京都新宿区市谷八幡町8番地 TKP市ヶ谷ビル2F
設立 2005
業種分類 不動産業
代表者名 河野 貴輝
従業員数 1,612名(2024年2月末現在)※時給社員・パート等臨時雇用者を含む
WEBサイト https://www.tkp.jp/
事業概要 フレキシブルスペース事業、ホテル・宿泊研修事業、イベントプロデュース事業、BPO事業、料飲・バンケット事業
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