【ナレーター】
そして2007年、55歳で代表取締役社長に就任。当時の心境と芽生えた想いとは。
【坂田】
当時の年齢ですと役員は皆さん私よりも年上でしたね。そういった意味では、気を遣うことにおいてはできる限り努力しました(笑)。
創業者一族だから社長になったのかと思われている方もいらっしゃるかもしれないし、経験がないのに、というように思われる方もいらっしゃるかもしれない。
ですから、みんなが一緒になってやれるようなことを常に考えていましたよね。世代を超えて、今一緒にやるというそういう雰囲気を何とかつくらなければいけないと思いました。
【ナレーター】
決意を新たに臨んだ坂田だったが、就任1年後に創業以来初となる赤字を計上。「一番の危機だった」と振り返る当時の状況をどのように乗り越えたのか。
【坂田】
私の経営姿勢というのをどう加えていくか考えていましたね。
当社の社是、あるいは経営理念である三位一体、三者共栄というのは不変なもの。ただ時代に則して経営というのは変えていかなければいけません。
そういった意味では私の経営姿勢というのを一番色濃く出ているのは、Passion(パッション)のPeople、Ambition、Smile、Sincerity、Innovation、Optimism、Never give up。これが私の経営姿勢だということを強く出していきましたね。
それと強く押し出したのは「現場」と「こだわり」という言葉。私は現場主義なので、子会社へ行ったらもうみんなに「現場」「こだわり」と言っていました。
「現場」というのはこういう意味であってと英語で説明をしました。英語の単語はないが、「現場」は重要で意味はこうだと。
「こだわり」、これも英語の単語はない。でもこだわるというのはこういう意味なんだということで伝えていきました。それによって当社のグローバル社員は増えたと思います。
【ナレーター】
自社の強みについて「オリジナリティー」を挙げた坂田。このオリジナリティーを追求するために、社員に伝えていることとは。
【坂田】
人それぞれいろいろなアイデアがあるし、そういったアイデアや発想を持ったチャレンジ精神を持った人を採用し、育てていくということが基本だと思いますが、それに加えて繰り返し繰り返しそういったことを事あるごとに皆さんに伝えていく。
あと自分自身も「こんなことどうだろう」「あんなことどうだろう」と常に言うことで社員も感じてくれると思うんですよね。
ブロッコリーでもなんでも、どうやって食べられているかというのは当社にとっては非常に重要で、食文化というのが当社の仕事に直結します。
どういうものが食べられているか、どうやって食べられているかという“文化”は常に見ていないといけないですよね。
【ナレーター】
今後は総合種苗会社を目指していると語る坂田。描いている展望とは。
【坂田】
ブロッコリーなどはおかげ様で非常に高いシェアをグローバルに持たせていただいていますけれども、それ以外のトマト、キュウリ、ナス、ピーマンなどの果菜類という実のなるもの。
そういったものは世界では主流で非常にボリュームもバリューも多いんですけれど、当社のシェアは低い。
まだまだやっぱり当社の競合他社が占めるところが多いので、そういうところを今後伸ばしていってシェアの高い総合種苗会社を目指しているというのが今もそうだし今後も目標のひとつですよね。
【ナレーター】
求める人材像について、坂田は次のように語る。
【坂田】
やっぱりパッションのある人間でしょうね。その中にはコミュニケーション能力もあれば協調性もあればリーダーシップもあれば、いろいろありますよね。それとグローバル性。
そういった点でグローバルにチャレンジしていこうという、そういう気概のある人材がやっぱり必要でしょうね。
-大事にしている言葉-
【坂田】
創業者は「成功の秘訣は?」と聞かれた時、(商材を)ひとつふたつを残して後は全部捨てるんだと言うんです。この捨てるということができないといくつも残ってしまい、そうすると成功しないという意味なんです。
しかし、そうはいってもブリーダーにしてみれば商品は可愛い子じゃないですか。これもいいね、これもいいねとなりがちなんで、そこは心を鬼にして、ひとつ、ふたつに絞る。
何百通りの中から絞るという勇気と捨てること。これはいろいろなことに通じるのではないかと思っています。