株式会社イワキ グループ会社は世界に20社。自動車から食品、医療、映画館等、あらゆる産業を支える製品を展開するプライム上場企業 株式会社イワキ 代表取締役社長 藤中 茂　 (2025年1月取材)

【ナレーター】
2015年に、連結売上高400億円、連結売上高営業利益率10％を目標に掲げた2025年までの成長戦略「イワキグループ10年ビジョン」を設定し、2024年に1年前倒しで目標を達成したイワキ。挑戦を成功させるために藤中が意識していることとは。

【藤中】
技術的な好奇心や素朴な疑問を持つことが企業成長への第一歩であると考えているため、この点ではなるべく中学2年生くらいのシンプルな考え方でいいのではないか、と。紐解くと「難しく考えない」、「本質的なことを考える」という意味です。

大人になると、どうしても背景や影響度などを考慮しがちになります。しかし、本当に重要な問題は何か、という視点が大切です。

一方で、可能な限り俯瞰的に捉えることも重要です。一旦他人事のように見てみると解決の道筋が見えてくることがあります。

先日、技術部門の課長と言葉を交わした際、「開発が完了した製品が量産化され、達成感から涙するような仕事はなかなかない」という発言がありました。

技術に限らず、完了した際に涙するような仕事を積極的に与えていくこと。そして、挑戦が始まったのならば、過度に介入せずに現場に任せ、雑音を減らすことが私の役割ではないかと考えています。

【ナレーター】
次の10年ビジョンとして2026年3月期からの長期ビジョン「NEXT10」を策定しているという藤中。見据えている展望とは。

【藤中】
2022年より長期ビジョンの策定プロジェクトを立ち上げ、次世代のイワキを担う40歳前後のメンバーを全部門から集め、議論を重ねています。

まず、当社の「経営理念について現状維持でいいのか」という点から議論を始めました。結果として「常に最前線で産業を支える」という言葉で表現されるのですが、今後10年間も通用するものであり「変えたくない」ということで変えていません。

やるべきことが多岐にわたる中で、定量目標としては、2035年までに連結売上高1000億円。営業利益率15％を目指しています。今後10年間で売上を2倍以上に成長させるという目標は、ハードルが高く、決して容易ではありません。

しかし、既存市場を対象としたビジネスなので、現在展開しているビジネスを基盤として、グローバルな水処理や新エネルギーの分野をさらに拡大していく計画です。もちろん、当社独自のプロダクトアウト製品の開発も着々と進めています。大きなプロジェクトとしては、三春の新工場建設や世界各地での生産です。グローバルな調達、グローバルな生産体制についても、今後10年間で拡充していきます。

【ナレーター】
現在、人材採用にも積極的なイワキ。求める人材像について、藤中は次のように語る。

【藤中】
「何事も買って出る人」を求めています。

新長期ビジョンNEXT10の説明会を、半年かけて全国の拠点で実施しました。NEXT10のテーマとして「働きやすさ向上」という言葉を簡単に使っていたのですが、ある社員から「働きやすさの定義とは何ですか」と、聞かれたのです。その際、私はハッとしました。漠然と「働きやすさ」という言葉を使用していた、と。

休みが取りやすいことや作業が楽になることが、真の働きやすさではありません。私自身、未だ明確な回答を持ち合わせていませんが、「行ったことが適切に評価される」それが、働きやすい会社なのではないかと考えています。

次期長期ビジョンのNEXT10においては、人事評価制度の見直しを通じて、主体的に行動した人材と努力した人材が正当に評価される仕組みを構築する予定です。

■大事にしている言葉

【藤中】
「飄々（ひょうひょう）」という言葉です。ポジティブな意味としては「社会的基準を逸脱せずに、それでいて自由でいるさま」。これが近いと考えています。

対義語は「汲々（きゅうきゅう）」、「齷齪（あくせく）」です。汲々とせずに齷齪しないこととして「飄々」を用いましたが、本来表現したかったのは「のほほん」というニュアンスに近いですね。「さまざまなことを気にせず自身のペースで進んでいこう」という意味を込めて、「飄々」という言葉を大事にしています。