株式会社イワキ グループ会社は世界に20社。自動車から食品、医療、映画館等、あらゆる産業を支える製品を展開するプライム上場企業 株式会社イワキ 代表取締役社長 藤中 茂  (2025年1月取材)

インタビュー内容

【ナレーター】
自動車から食品、医療、映画館などのエンターテインメント施設まで、多岐にわたる領域にポンプ製品を提供するプライム上場企業「株式会社イワキ」。

主に化学薬液を移送・注入する「ケミカルポンプ」を始めとした流体制御機器を取り扱う同社は、徹底した品質管理と技術力を武器にグローバルに事業を展開し、現在、国内外にグループ会社20社を有している。

2025年5月には、新長期ビジョンを発表。さらなる成長に向け、その歩みを着実に進めている経営者の軌跡と、思い描く成長戦略に迫る。

【ナレーター】
自社の強みについて、藤中は幅広い分野のニーズに応える豊富な製品ラインナップだと言う。

【藤中】
さまざまな市場に向けた多彩なポンプをつくってきました。その展開力は強みです。

たとえば産業的な化学ケミカル分野では、最近は水素発生装置にケミカルポンプを使用したり、化学薬品を合成する際に使っています。

近年流行しているフロー精密合成という技術では、非常に小さな流体回路の中で液体を混合させて必要とする薬をつくるのですが、そこで当社の精密ポンプが使用されることがあります。

そして、介護風呂。お風呂のお湯をきれいにしなければならないため、滅菌剤(細菌を繁殖させない薬)の注入や、適正濃度の測定にも用いられます。

また、生産ラインを止めないために、ポンプの不具合はすぐに復旧させることが必要なので、そのような場面での対応力こそが、イワキの強みです。

ポンプの選定から、購入、据え付け、そしてオーバーホール(整備)から緊急対応まで。こういった一連のプロセスをイワキが担っていると認識しており、その一貫したサービスが差別化になると考えています。

【ナレーター】
藤中とイワキの出会いは、ある偶然から始まった。自動車に関心があったことから、自動車雑誌の編集者を志し、就職活動に励んでいた中で別の選択肢として大学の教員から勧められた企業がイワキだった。

会社見学でものづくりへの関心も高めた藤中は、二つ返事で入社。2年目を迎えたときのあるエピソードが、今でも印象に残っているという。

【藤中】
1989年に入社し、技術部門で半導体の製造に使われるポンプの開発をしていました。技術センターのような研究施設で、部品の発注や組み立て、試験、商品の提供までを担当していました。個人的に開発は好きなのですが、スケジュール通りに進めることが得意ではありません。

協力工場で部品をつくっている段階で、納期がとても迫ったとき、工具や組み立てる道具を積み込んで工場に行き、ポンプを組み立てたことがあったのです。

最終的に、九州に納品をしなければいけない状況でしたが、偶然、その日は、東京に来ていた九州の支店長が帰る日。東京駅で待ち合わせ、支店長にポンプを渡して「届けてください」とお願いしたこともありました。ギリギリ間に合ったことは、今もよく覚えています。

【ナレーター】
その後、技術本部企画推進部長、常務取締役・経営企画室室長、専務取締役と順調にキャリアを重ね、2009年代表取締役社長に就任。同年にはリーマン・ショック、2011年には東日本大震災と、立て続けに危機に直面した藤中が、これらの経験から経営において重要だと感じたこととは。

【藤中】
社長に就任して間もない頃は、アメリカの子会社の減損処理があり23億円の赤字決算。2011年の東日本大震災の際には、福島県にある三春工場が被災し、半年ほど正常な稼働ができない時期もありました。

それ以外にもトラブルや解決しなければならない問題はありましたが、パニックにならず冷静に対処しました。トップが泰然としていることは、チームがうまく働く第一歩だと感じたことが、大きな学びにつながっています。

また、社内には、特に会社がピンチな状況の際に、社長から全社員に向けたメッセージ(社長メッセージ)が掲示板に発信されます。通常のメッセージは掲示期限が過ぎると削除されるのですが、社長メッセージは無期限。危機的な状況で発信されたメッセージは、現在も掲示されています。

「このような問題は、このように対処する」という共通認識は重要ですが、その問題について「私たちはこうして乗り越えた」という成功体験の共有が、より重要であると考えています。

【ナレーター】
「常に最前線で産業を支え、社会の発展と人々の幸福に寄与する」を経営理念に掲げるイワキ。先端技術の研究開発だけではなく、現場も最前線だと語る藤中は、権限を現場に委譲し、判断を一任する方針に切り替えたという。その真意に迫った。

【藤中】
物事を動かす際に、非常に時間がかかっていたことがありました。ごく安価なものを購入するにしても、係長のサイン、課長、部長の判子といったように、多くの手順を踏んでいたのです。そこで「その程度であれば現場で処理するように」と変えました。

当時は、社長の承認がないと海外出張に行けないこともありましたが、2009年以降は各本部長の承認で可能とし、予算内であれば、「あなたの裁量でお金を使いなさい」としました。

スピードが速くなったのは当然ですが、自身で管理しなければならないことがあるため、マネージャークラスの管理能力が向上したのでは、と感じています。

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経営者プロフィール

氏名 藤中 茂
役職 代表取締役社長
生年月日 1964年12月20日
出身地 埼玉県所沢市
座右の銘 飄々
愛読書 雑誌「Racing on」、潜水艦モノや登山モノの小説
尊敬する人物 開高健と前原巧山
略歴
1989年4月当社入社
2009年2月代表取締役社長就任

会社概要

社名 株式会社イワキ
本社所在地 東京都千代田区神田須田町2-6-6 ニッセイ神田須田町ビル
設立 1956
業種分類 機械器具製造業
代表者名 藤中 茂
従業員数 1,124名(連結)788名(単体)(2024年3月31日現在)
WEBサイト https://www.iwakipumps.co.jp/
事業概要 ケミカルポンプをはじめとする各種流体制御機器の開発・製造・販売
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