【ナレーター】
事業は軌道に乗り始めたが、当時は住宅のリノベーションは依頼がほとんどなく、店舗に関する仕事が中心となっていた。店舗設計に対してはやりがいを感じていたものの、やはり住宅のリノベーションへの思いは消えず、熟考の末、当時36歳の山下がたどり着いた結論は2回目の起業だった。
【山下】
これをこのままやっていても、たぶん大きなインパクトを与えられないと思って。
イメージ的には人の心に深く刺さるようなものをつくろうと思って、自分たちでやっていたんですが、尖らせば尖らせるほど深くは刺さるものの刺さる人が少なくなるといいますか。
球体みたいなものがあって、そこにたくさんトゲが付いていると刺さりやすくなるようなイメージのものができないか、みたいなことを考え出して。仕組み化みたいな形で今の「リノベる」の前身を2009年ぐらいに事業計画書をつくって、東京に単身で来て起業したという経緯です。
【ナレーター】
そして、2010年にリノベる株式会社を創業。中古マンション購入とリノベーションをワンストップで提供する事業を中心に展開し、ワンストップリノベーションにおいて、国内トップの施工実績を誇るまでに成長。テクノロジー活用が遅れていると言われている建設・不動産・金融領域でデジタルトランスフォーメーションを積極的に推進している。
【山下】
例えば14階建てマンションをつくるときにエレベーターがまだ動いていない。
そうすると、14階にいる職人さんのために、携帯電話が当時なかったので、1階から走って行って伝えて、また現場に戻ってということを繰り返し、足腰が強くなっていくというようなエピソードがありました。
コミュニケーションの手段というのがもっともっと円滑にできるようになると思っていて、僕たちは工事管理のアプリだとか設計者とお客様とコミュニケーションツールだとかそんなものを色々つくっているんですよね。
もうひとつはその現場管理をやっていた中で思ったことがありまして、日本の監督のレベルはとても高いんですよ。
海外の一流ホテルに行っても、何かあまり収まりというかきれいにされてないなと思うことがあるんです。その部分というのは監督や職人の仕事なんですよね。
ですので、日本の技術みたいなものを遠隔から管理できるようなことも可能なのではないかなと。今、そういう技術などに投資をして実用化しようとしています。
【ナレーター】
しかし、成長を続ける一方で、その成長に合わせたマネジメントができず苦悩したことも少なくなかったという。過去の経験から、山下が得た気づきとは。
【山下】
組織を大きくするために変えなければいけない。変えることによって人が離れていく、みたいなことがやはりあって。ですので、組織の力を強くしていこうということを覚えていくようになりましたね。
そういう意味でいうと、ラグビーでの経験が結構活かされていて。15人、人数が多いスポーツというのはまさにその通りなのですが、やはり想いを1つにしなければいけないわけですね。
「One For All All For One」というラグビーでは有名な言葉があり、一つになって戦うわけなんですが、企業も一緒で、あまり昔はそうやって考えていなかったんですよ。
ミッションのような、ここに行くぞというものがあれば人はついてくるものだろうと思っていたんですが、実はこういうミッションやビジョンはこんなことを掲げていると説明を続けていかないと人の心は離れていきます。
ですので、もう何回も何回も言う。これを繰り返しています。
【ナレーター】
求める人材像とリノベるに向いている人材の特徴について、次のように語る。
【山下】
一言で言うと“明るいバカ”なんですね。行動指針にもある“明るいバカ”。
なぜかというと、僕たちはスタートアップなので色々なことに挑戦するんですが、ほとんど失敗するんですよね。
その失敗が多いときに、僕の心の中として「失敗した」と報告が来た時に「こいつに任せて失敗してしまった」と思うと、とても不健康じゃないですか。
でも「明るいバカ」の人たちは「失敗しました!次行きます!」と言える人たちなので「わかった。お前に任せて無理だったらしょうがないよ」というように、すぐスッキリできるんですね。
ラグビーでいうとタックルをされてもすぐに立つというのを繰り返す。それができるのはやはり“明るいバカ”の人たちだなと思っていて、そこはこだわってやってます。
ものづくりみたいなことが好きな人は、当社はすごく向いていると思います。
その中でも僕は「課題を価値に」と言っていまして。この古い業界が進んでこなかったたくさんの課題・理由があるわけなんですが、できないわけではないんですよね。
そういったところで、「すぐに立つ精神」で課題を価値に変えていくような精神を持っている方にとっては、挑戦しがいのある業界なので面白いと感じるのではないかと思います。
【ナレーター】
今後の展望として、年間1万件の住まいづくりを追い求めていきたいと語る山下。この目標を達成したときに見える世界とは。
【山下】
1万件に行くと、新築マンションの中でもトップの部類に入ってきます。
新築と中古の市場を引っくり返すということを考えている僕らからすると、その1000件、1万件という数字はまずやらなければいけない数字なので、それをやろうと思っています。
日本のストリートファッションはよく世界一オシャレだと言われるんですよね。パリよりもニューヨークよりも、東京の青山を歩いている人のほうがみんなオシャレだと思うんです。
なぜかというと、毎日鏡の前に立って練習するじゃないですか。住まいに関しては、日本人は恐ろしいほど練習しないんですよ。
中古物件を活用してうまく仕組みをつくっていくことができればどんどん自分に合わせて試せる。シングルの人、20代の人も家を買ってみて自分なりに好きにやってみる。そして、結婚したらまた新しい家を買う。
このようにどんどん試していけるような、そういう絵ができるのではないかなと思っています。
-視聴者へのメッセージ-
【山下】
色々な変化が多い時代で、どんどんどんどん自信を失っていくような状態に日本人もあるなと思っているんですけど、日本人で僕たちのおじいちゃんにあたる世代は高度経済成長と言われる、すごい成長を遂げてきていて、人種として素晴らしいと思っているんですね。
その時にやはり倒れてもすぐに立つ。僕がラグビーから学んだ精神なんですが、倒れたことに気づかないぐらいの瞬く間に立っていく。これができれば、新しいものが生み出していけると思います。
倒れることを恐れず、倒れてもすぐに立つんだという精神を持って、色々なことに挑んでもらえれば、新しいものが見い出せるのではないかなと思います。
経営者プロフィール
氏名 | 山下 智弘 |
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役職 | 代表取締役 |
出身地 | 奈良県 |
座右の銘 | 「明るいバカ」「課題を価値に。」 |
愛読書 | 『ビジョナリーカンパニー②飛躍の法則』(日経BP) |
尊敬する人物 | 影響を受ける人は本当に沢山いますが、 生意気を言うようですが、尊敬する人物はあえてつくらないようにしています。 自分が人生の主役であると考えるからです。 |
著書 | 『「明るいバカ」が最高のチームを創る―本気で語り続けて実践した全員前進経営』(日経BP) 『リノベーションのススメ』(住宅新報社) |
建築・建設業に携わる中で、建てては壊す「スクラップ&ビルド」を繰り返す日本の現状を目の当たりにし「自由な空間をもっと手に入れられるような世の中をつくろう」と独立を決意。
2010年、拠点を東京に移し、リノベる株式会社設立、代表取締役就任。
2020年4月、LIVING TECH協会 代表理事に就任。
会社概要
社名 | リノベる株式会社 |
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本社所在地 | 東京都港区南青山5丁目4‐35 たつむら青山ビル |
設立 | 2010 |
業種分類 | 建設業 |
代表者名 |
山下 智弘
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従業員数 | 250 名 |
WEBサイト | https://renoveru.co.jp/ |
事業概要 | マンション・戸建てのリノベーション、一棟リノベーション・店舗・オフィス・商業施設の設計施工及びコンサルティング |