【ナレーター】
地質・地盤調査において、国内トップクラスのシェアを誇る「応用地質株式会社」。
事業活動における取り組むべき課題として「スマートな社会インフラの整備」「自然災害の被害軽減とレジリエントなまちづくり」「脱炭素社会、持続可能な循環型社会の形成」「豊かな自然共生社会の実現」を掲げている。
課題解決に向け、地盤工学とデジタル技術を融合させた、地震や土砂災害などの被害状況の検証や被害低減に向けたサービスの開発・提供をはじめ、さまざまな社会課題の解決に取り組んでいる。
近年では、国内事業の「防災・インフラ」と「環境・エネルギー」、国際事業の「防災・インフラ」「資源・エネルギー」の3つの事業セグメントに再編し、洋上風力発電事業支援やアジア・中東市場の開拓、海外展開など、地質・地盤調査業から知的情報サービス業へと転換をするべく、挑戦を続けている。
「人と地球の未来にベストアンサーを。」持続可能な社会を目指すビジョンを胸に、躍動する経営者の波乱万丈の軌跡と、思い描く成長戦略に迫る。
【ナレーター】
自社について、天野は、防災・減災のために、なくてはならない会社のひとつだと言い切る。
【天野】
防災・減災によって、被害に合う方、亡くなられる方をいかに少なくするかは、最大のテーマです。それに対し「国土モニタリング」の構築を考えています。
たとえば、降雨によって土砂崩れや斜面崩壊が発生する際のスタート地点を特定すること。危険で不安定な場所がわかれば、そこにセンサーを設置する。それにより、災害発生前にアラートが出せるようになります。
アラートを聞いて、1分でも1秒でも早くその場から逃げることができれば、被害を軽減できるのではないかと考えています。そのような社会に貢献できるのが、当社が目指す「国土モニタリング」です。
私たちはハザードマッピングセンサーを開発し、国内での設置を進めています。この取り組みこそが、他社と差別化できる当社の強みだと認識しています。
【ナレーター】
天野のターニングポイントは、前職の企業で主導した経営再建の経験にある。大学卒業後、都市計画のコンサルティングを手がける企業へと入社。
キャリアを重ねた後、2003年に交通計画のコンサルティングを手がける企業へ転職し、中部支社の支社長を務めた。順風満帆な日々を過ごしていたが、1年半後、東京本社を訪れた際に、思いもよらぬ状況を目の当たりにした。
【天野】
当時の本社は非常に危うい経営状態でした。そこに関わり、調べていくうちに、破産か民事再生しかない、すなわち法的整理を行うか否かという選択しかないほどの危機に直面していることを知りました。
そのような状況下で、誰がリードしていくのか。たまたま私は社長室での秘書経験を持ち、グループ会社の再生・再建を少し手伝った経験がありました。そこで、「民事再生の手続きに主導的に関わってもらえないか」と話があり、私は「やるしかない」と決断したのです。
「民事再生」は、言い換えれば「倒産」です。その再建に携わったことは、人生の大きなターニングポイントとなりました。
まずは「改革委員会」を立ち上げ「とにかく集まってくれ」と社員に呼びかけました。そこでワークショップを行い、仕事の進め方、業務領域、技術領域、さらには人事、報酬、人事考課に至るまで、あらゆるものをゼロベースから検討し直しました。そして、少しずつ一体感を感じながらそれらを半年足らずの期間で実施しました。
経営とは非常に難しいものです。教科書にはいろいろ書かれていますが、「こういうところからスタートしていくことが重要」だということを身を持って感じました。
【ナレーター】
民事再生という先が見えない状況で、同様の経験をしていたある企業の考え方を知ったことが、後の大きな学びになったという。
【天野】
「プロフェッショナル 仕事の流儀」というNHKのテレビ番組で、星野リゾートの星野社長が旅館の再生に取り組む場面を見ました。その際も全く同じ状況で、いわゆるアウェーの状況で乗り込んでいく場面だったと記憶しています。
そこで星野社長が実践されていたのは、「人を信じること」です。「人を信じて任せる」とその人が「楽しみ」ながら働くことができるため、結果、企業の再生にもつながっていきます。
人のモチベーションをどのように上げていくか。一人ひとりとどのようにコミュニケーションを取るか、やり方は様々あると思いますが、「人を信じること」が原点です。自分がやっていることは間違いではなく、人と話すことは非常に重要である、ということを深く学んだのが民事再生でした。
その後、スポンサーを探すなかで、手を挙げた一社が応用地質だったのです。
【ナレーター】
その後、応用地質のグループ会社となり、成長軌道に乗せることに成功した天野は、2017年に、社内DXの推進をミッションに、応用地質へ入社。当時、行っていたことについて、次のように振り返る。
【天野】
応用地質は、知見やデータの宝庫でした。70年近い歴史の中で蓄積してきたボーリング結果や報告書が社内にたくさん存在します。外に向けての仕事も大事ですが、まずはこの蓄積された社内のデータと情報管理をしっかりと構築すること。そこから進めようというのが最初のスタートでした。
それから、方向性について整理しました。1つ目は、新たなビジネスをどのようにつくっていくか。2つ目は、現在取り組んでいる既存のビジネスを、どのように深めていくか。そして3つ目は新規ビジネスの立ち上げです。それは、外から来た人間だからこそできる仕事です。
そこから新たなビジネスをつくり、いくつかのサービスを展開することになりました。