【ナレーター】
与えられたミッションを着実に進めつつ、キャリアを積んできた天野は、取締役常務執行役員、取締役専務執行役員を経て、2023年に代表取締役社長に就任。前社長とのエピソードを交えながら、就任時の心境について次のように語る。
【天野】
成田前社長から呼び出され、「いろいろ考えた結果、天野君に社長を任せたいと考えている」と。その言葉には「すべて察しろ」「このままではダメだ」という意味が含まれていました。
前社長は「応用地質のサービスとは何か」という原点に戻って再整理をし、組織とサービスを全面的に見直す大改革を行っていました。その上で、「次は天野君にしようと思う」と言われたときには、「なるほど。この改革を引き継がなければいけないということだな」と。
もちろん、私でなければならないというわけではなく、タイミング的に私がその場にいたという側面もあったかもしれません。ですが、指名されたからには、しっかりと全うすると決めて「わかりました」と引き受けました。
【ナレーター】
今後、防災・減災をさらに高度化していきたいと語る天野。思い描く展望とは。
【天野】
私個人としては、国土モニタリングをはじめとして、さまざまなノウハウを持っている多くの民間企業が知恵を出し合い、リソースを共有して安全を維持しようとする。この取り組みを、もっと推奨すべきだと考えています。
もちろん、その上で収益が伴い、ビジネスとして成立させることは非常に重要なテーマです。そのうえで、皆が安心できる世界をつくることができないか。そのために、私たちはさらに研究開発を進め、リソースを提供することで、より安全な国土に貢献できるのではないかと考えています。当社としても、そうした部分にもっと強く関与していきたいです。
また、当社の事業は環境・エネルギー分野にも広がっています。現在、再生可能エネルギーの中でも、特に洋上風力発電が注目を集めています。
ですが、その実現のためには沖合の風車から、地上まで送電するための海底ケーブルを設置しなければいけません。ただ、港湾によっては過去の不発弾が残っているところもあるため、海底地盤調査用の足場が必要です。海洋環境における生態系や環境調査なども必要になります。
当社の応用地質グループでは、この一連の対応が可能であり、関連するグループ会社と共に、海洋関係の事業に関わっていけます。このコンサルタントファームがつくられていることは、他社にはない大きな強みです。ここまで一気通貫で地質調査ができるのは、国内で当社だけだと思っています。
【ナレーター】
求める人材像について、天野は次のように語る。
【天野】
社会課題は、時代とともに変化していきます。それをしっかりとキャッチできること。それがコンサルタントとして最低限必要な能力であり、求められる部分です。調査コンサルタント業務は人が資本。その意味では、やはり人格者であり、人柄が良いこと、そして良い人間であることが非常に重要です。
チームとして活動していく中で、現在ではデジタルやDXをはじめ、異業種の方々とも広く付き合っていくことが必要です。そのため、ポジティブで人柄の良い人が多く集まってくれると、ビジネスはさらに広がっていくのではないかと感じています。
【天野】
―大事にしている言葉―
「人生は運である。明るい、いい顔にのみ強い運勢が宿る」という言葉です。この言葉を、民事再生の最中にある人からいただきました。当時を振り返ると、大変なところに自分を置いてしまい「どうしよう」と思っていたものです。そのときに「常に笑顔でいろ」。そうしたら「みんなが助けてくれる」と。
そのときはよくわかりませんでしたが、悩んで苦しんでいる顔をしている人よりも、楽しんで笑顔でいる人に「声をかけてみたい」と思うものです。ですから、辛いときであろうと何であろうと、常にいい笑顔でいようと心がけています。
これまで苦しい場面を乗り越えられてきたのも、やはり、みなさんの助けがあり、支援があり、言葉があったからこそ、今の自分があるといえます。自分ひとりの力は、たいしたことがないのです。
いかに周りの方々と意思疎通をしながらひとつの方向に向かっていけるか。その力を結集できるか。これに尽きます。その先頭に立つ人間が、明るくいい顔でいることの重要性を感じ、この言葉を選びました。