【ナレーター】
順調にキャリアを積んでいった成田は、2009年に代表取締役社長に就任。当時の心境と経営学を学ぶ中で印象に残ったことについて、次のように語る。
【成田】
25周年になったらみんなでハワイ旅行へ行こうというくらい儲かっていた会社が、赤字になるという状況が見えているときに、社長をやってくれないかと言われて当時はとても大変でした。
社長になるということは全く意識の中になかったです。従って社長というのは何をするんだ、どんなことをやらないといけないのかと考えるようになりました。
はっきり言えるのは、専門誌はほとんど読まなくなりましたね。当時は経営者の書籍や経済関係の書籍などばかり読んでいました。
その時に思ったのは、数字は人だということです。
要するに社員がちゃんと自分のやりがいを持って仕事しているところに数字が出る。ですから、いかにして社員にやる気を起こさせるか。これが難しいですけどね。
しかしそこに常に視点を持っていないと会社を上手く経営することはできないだろうということはとても強く印象に残っています。
【ナレーター】
赤字解消に向けて社内改革に取り組むことを決意した成田は、ビジネススタイルの変革を推進し、見事業績回復を実現。
そして近年、AIやICTなど最先端技術を積極的に取り込み、地盤3次元化技術を開発するなど、これまでにない、新たなビジネスモデルが確立されつつあるという。
【成田】
これはもう事業として始めているんですが、道路の下に入っているガス管や水道管、実はこれらはどこに通っているのか正確な位置は分かってないんです。
ですから、例えば大きなビルが建って、そこにガス管を引っ張らなければならない。そうすると地面を掘り返さなければならず、きっとこの辺りだということで掘り返した結果、誤って他の管を壊すというのが、年間で約1000件発生しています。
ところが3次元の世界ですと、管がどうやって、どの位置にあるかというのがわかるようになります。
それに加えて今まで地質調査で使った探査技術とAIを組み合わせることで、ここに入っている管がガス管なのか水道管なのか分かるようになるんです。
そうすればそのデータは調査の専門家でなくとも、すでにある管を傷つけないようにではここに新たな管を入れようという計画もできますから。少なくとも今まで地中の様子が分からなかった人でも、それを使って色々なことができるようになります。
【ナレーター】
元々は公共事業中心で、国の方針のもとで仕事をしており、社会から認知される必要性はなかった。しかしこれからは、自社の取り組みを社会に示すことが多様なニーズに応えるために必要になると成田は言う。
【成田】
この自然というのは社会の中で活用されていかなければならないし、とはいえ地球温暖化のようになることはこれから避けていかなければならない。加えて生物多様性を保全していかなくてはならない。
その中でどのようにやっていこうかと考えた時に、ニーズは単に国だけではなくて色々なところにあります。それに応えていこうとすれば、こんなことをやっている会社なんだということを社会にきちんとアピールして分かってもらえる。
そしてまた我々も、具体的に営業活動をやっていくことがこれから必要なことなのではないかなと思っています。
【ナレーター】
事業を拡大させていく上で、ビジネスモデルの変革をキーワードに挙げた成田。その実現に向け、求める人物像とは。
【成田】
ビジネスモデルを変えて、次は我々から何をやっている会社かを明確にし、発信していくと様々な人材が必要になります。
技術者でなければいけないようなニュアンスを持たれていらっしゃる方もいるかと思いますが、それが結局バブル以降、苦労した大きな元凶だったので、そうじゃないよと。
そういう人もいるんだけれども、そういう人たちをうまく管理している人材、そしてビジネスをプロモートしてやっていける人材も必要になります。
例えばさっき申しましたガス管の話、その中で次のビジネスチャンスが専門職ではないところから出てくることはこれからも沢山あると思うんですね。
そういう面でもやはり多様な人材、これが重要になってくるのではないかと思います。一色の会社では駄目だと思いますね。