株式会社メガカリオン 「足りない」「もたない」血小板をiPS細胞で量産。輸血医療の常識を覆す前例無き挑戦の全貌 株式会社メガカリオン 代表取締役社長兼最高経営責任者 赤松 健一  (2021年8月取材)

インタビュー内容

【ナレーター】
2011年に創業した医療系スタートアップ、株式会社メガカリオン。

iPS細胞由来の血小板製剤を工業的に大量生産し、少子高齢化による献血不足が懸念される先進国や血小板製剤の不足が社会問題化している途上国の医療現場へ供給することを目指している。

現在は、iPS細胞から止血に必要な血小板を作り出し「血小板減少症」の患者に投与する治験計画を進めている。

57歳で新たな挑戦を決断した経営者の想いと、事業を通じて実現したい未来とは。

【ナレーター】
「安全な血小板製剤を世界に安定供給する」。このミッションの実現に向けた課題と、課題解決のために取り組んでいることとは。

【赤松】
世界に我々のiPS血小板を広げていくには、まずそれだけの生産量が必要になってくる。それとやはりコストですね。その2つが大きな課題です。

血小板というのは日持ちがしない。その日を含めて4日しかもたず、つくり置きができない。そのような状況で、いかに大量に、しかもコストを落として供給するかという課題に対し、色々な技術開発や技術を行い、製造技術を追いつかせる必要があると思います。

我々の血中を巡っているものは、日々入れ替わっています。できたての血小板は、長くて約10日間寿命があるといわれています。しかし、皮膚あるいは空気中には様々な雑菌があり、それがわずかでも混入するとねずみ算式に増えてしまいます。

ですので、4日以上放っておくと、わずかに入ってきた細菌やバクテリアが増えてしまうというリスクが高いということで世界中で保存日数が制限されています。当社が無菌的に製造しているということが完全に保証されれば、皆さんに提供する際には、本来血小板が持つ寿命を約4日間から10日間に伸ばせるのではないかと思い、研究を行なっています。

【ナレーター】
これまでの常識を覆す挑戦を続ける赤松は、少年時代から科学者になることを目指しており、大学は生物学科を専攻。その理由について次のように語る。

【赤松】
当時は「生物学科を出ても仕事がない」と結構言われていました。私の叔父などからも、「工学部が就職に一番有利なのになぜ行かないんだ」と言われました。しかし私は「自分が興味があることをやりたい。大学では生き物を学びたい」という想いを優先しました。

同じころ、製薬業界においても、細胞を用いた実験やバイオ医薬品、遺伝子組み換え技術の実用化などが進んでいました。これらが自分の就職活動の時期と重なり、製薬会社に就職できたのは、運が良かったと思います。

【ナレーター】
1980年に製薬会社へ入社後、仕事に打ち込み続け33年の時を同社で過ごす。その中でバイオ医薬品を製造する研究所へ配置転換されたことが、自身にとって大きな転機となったと赤松は振り返る。

【赤松】
医薬品の開発について決めたり、外部企業との交渉をしたり、という役割でした。しかし、当時の私にとって製造というのは全く知らない世界。しかも、海外のメーカーに出向き「これを作ってくれ」と製造委託の交渉をしなければならなかったのです。

日本語でも製造のことはよくわかっていないので大変なのに、しかも英語でのやり取りですから、始めのうちは本当にわからないことだらけでした。

その後親しくなったオランダ企業の人から「当時は何もわかっていなかったよね」と言われたこともあります(笑)。

実践も交えて約3ヵ月一生懸命勉強した結果、製造に関する言葉の意味がわかるようになりました。それが、会社人生の中では非常に大きな転換期だったかなと思います。

【ナレーター】
実はこの配置転換は、自身が望んでいたことではなかった。突然の異動となった赤松は、どのように思考を切り替えたのか。

【赤松】
違う世界に対する興味があったので、思い切って飛び込んでみようと思いました。

面白いかどうかは、やってみないとわからない。しかし、好奇心をもってやれば、どんな仕事でも面白い要素を見つけられると思います。

あまり腐らずに、先入観を持たずに、まず興味を持ってみて取り組んでみる。そうすれば何かしらの面白さも見つけられるし、自分を生かせる部分もきっと発見できるでしょう。

ただ自分の場合は、異動に関する話を受けたときは好奇心があったので「チャレンジしてみようかな」という気持ちが強かったのかなと。


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経営者プロフィール

氏名 赤松 健一
役職 代表取締役社長兼最高経営責任者
生年月日 1955年5月8日
出身地 岡山県
座右の銘 生涯現役
愛読書 フィクション・ノンフィクション含めて乱読
尊敬する人物 懸命に生きて人生を全うした全てのひと
略歴
1980年  岡山大学大学院理学研究科(生物学)修士課程修了
1980年  中外製薬㈱ 入社 研究部にて抗がん剤、造血因子(EPO, G-CSF)、
抗体医薬(アクテムラ)の開発に従事
2001年より バイオ製造研究のCMC薬事部長、生物技術研究所長など担当
2013年 株式会社メガカリオンCOOとして入社、2019年に代表取締役社長に就任
薬学博士(1993年7月京都大学薬学部)

会社概要

社名 株式会社メガカリオン
本社所在地 京都府京都市下京区中堂寺南町134 京都リサーチパーク2号館
設立 2011
業種分類 教育・学習支援・医療・福祉・複合サービス業
代表者名 赤松 健一
従業員数 30 名
WEBサイト http://www.megakaryon.com/
事業概要 iPS細胞株から高品質の血小板及び赤血球を産生し、①計画的安定供給が可能で、②安全性が高い、血液製剤を開発する。
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