【ナレーター】
変化を嫌う企業風土を変えるべくキャリアを重ねた井村は、2013年に代表取締役社長に就任。当時のイムラ封筒は2008年のリーマン・ショックの影響が尾を引いており、業績が低迷していた。その状況を打破すべく、井村は抜本的な改革へと踏み切る。
【井村】
それまでに温めていたアイデアを、社長に就任してから自分で一気に実現させました。ただ、やはり冷えてしまっていた当時の社員の心に訴えかけても時間を要すると思い、改善をする上で「ヒト」「モノ」「カネ」の「ヒト」についてはあえて後回しにしていました。「モノ」と「カネ」を先に動かすことで、ある程度の利益は出るという確信を持っていました。
そのため、約3年間は「モノ」と「カネ」に集中して経営の改革を推進していました。たとえば、含み益・含み損のある資産の売却や、使われてない倉庫の返却など。経営の改革はとても早く進みましたね。
【ナレーター】
モノ・カネの改革は順調に進められたが、温度差があったヒトにおいては改革が難航。しかし、変えなければイムラ封筒の未来はない。決死の思いで試行錯誤を繰り返した井村がたどり着いたのが、外部講師によるコーチングの導入だった。
【井村】
どうやって伝えていこうか考えたときに「自分じゃ無理だ」と思ったんですね。コミュニケーション能力の高い人を外部で探し、人伝いに紹介を受けたのが、元日本航空のキャビンアテンダントに従事していた2名の方でした。2016年からコーチングの外部講師をしてもらい、結果、社員とのコミュニケーションが活性化できました。
社員も一生懸命やっていることは言葉ではわかっていたものの、やはり立体的に講師の方が話してくださることで、社員の頑張りについてより理解を深められました。その結果、様々な提案ができ、経営のテーマにおいても自然と社員に浸透させることができたと思います。まだ100%できているとは思っていませんが、これが前に進んでるという状況は、とてもいいことだと思ってます。
【ナレーター】
多くの壁を乗り越え組織風土の改革を推し進めた井村。商品開発においても新たな活路を見出しているという。
【井村】
紙ではなく物を入れる封筒。つまりダンボールの代わりになる封筒です。ダンボールが封筒に変わることで、CO2の削減効果が期待できます。使ったダンボールはリサイクルされてもCO2が発生するもの。環境保全への取り組みは当社としてあるべき姿だと思い、お客様にもそれを訴えているところです。
【ナレーター】
業界の第一線で活動し続けられる要因のひとつとして品質へのこだわりを挙げた井村。そのこだわりの強さを感じたというあるエピソードとは。
【井村】
7、8年前にインドのある会社から、インドで封筒を生産してほしいという話がありました。生産にあたりどのくらい機械が必要か提案すると、相手からはなにも持ってこないでくださいと。機械ではなくインドの人に封筒をつくらせてくださいと言われました。
このとき「人でつくる」と言われたことから、海外では封筒の“質”はそれほど求められていないと実感しました。そこまで当社が封筒の質を上げてしまったんだと。でも、質を上げたことで社員のレベルも上がり、仕事も増えました。結果、成長してきたと考えると、これはすごいことだと思います。
さらに言うと、日本の文化では1枚でも封筒が多く入っていたら責任を問われます。これが封筒文化の違いです。当社には封筒の文化で勝負してきた過去の歴史があって、やはり変えてはならないものです。
【ナレーター】
人材に求める要素について、井村は次のように語る。
【井村】
やはりチャレンジ精神ですね。エネルギーやスピリット。これを持ち続けている人はすごいと思います。
チャレンジ精神を持ち続けている人は、問題解決しようというエネルギーも高いし、人を巻き込もうというコミュニケーション力も高い傾向にあります。すると、気がつけば結果もついてくる。これは今も30年前も、忘れてはいけない考えであり、人材に求める要素だと思いますね。
-大事にしている言葉-
【井村】
ずっと社員に言い続けているのは、ギブ&ギブ&ギブ。全ての人に最高の付加価値を提供しましょうという意味をセットで伝えています。
1つ目の“ギブ”は、製品をつくってくれている全社員に感謝をすること。2つ目の“ギブ”は製品を購入いただいているお客様に感謝をすること。3つ目の“ギブ”は、自身がお世話になっている人に何ができるかを考えること。これらができなければ会社として成立しないため、私の社長就任時から今日まで言い続けています。