【ナレーター】
その後、メーカーとしての力を身につけていった正田醤油は、新たな発想を取り入れた商品を次々に開発・販売。商品開発で重要視していることについて、正田は次のように語る。
【正田】
キーワードはやはり簡便性です。おいしいのは当たり前で、使いやすくて、時間を短縮できるものが喜ばれるのかなと。
当社は商品開発の人員が豊富ですので、商品開発部隊が顧客の希望をいかに具体化するか。その力量やノウハウが当社の生命線でもあります。
開発のステップのなかでも、相手の注文を聞いて具体化することはベースにある作業です。もう少し膨らませることも、やや上級者コースとしてあります。
そのためには、依頼を受けた顧客の未来を見据えて、商品をどういうところにマッチさせたいのかを、もうちょっと捻ってみようという話はしていますね。
【ナレーター】
今後、ものづくりを通じて人材育成に注力していきたいと語る正田。求める人材像とは。
【正田】
「誠実な人」というのが一番です。経営理念にもありますが、当社の根幹は誠実さ。全ての人に対して誠実であろうというのを大切にしています。これは外せません。
自分の幸せは人の幸せ。利己的にならず、多利を尊ぶような人であってほしいですね。
【ナレーター】
海外展開について、今後はヨーロッパを中心に販路を拡大していく方針だ。
【正田】
当社はイギリスのウェールズに工場があり、そのネットワークを活用して、さらに拡大していこうと考えています。とくにお寿司はカロリーも低いですし、サンドイッチを食べるよりは、お寿司の方が健康だというような感じで広がっていっています。
無形文化遺産に和食が選ばれて、もう5、6年経ちますかね。それが契機になって、日本食が再評価されており、海外の業績が良くなってきています。
【ナレーター】
ヨーロッパに注力する理由について、正田は次のように語る。
【正田】
アメリカにはキッコーマンやヤマサなどの会社が既に進出していて、アジア系には中堅の日本のメーカーが何社か進出しています。もともと醤油系の調味料、たとえば魚醤や発酵調味料があるのはアジアです。
日本の醤油を受け入れやすいようで、受け入れる上での障壁がまだあると感じています。その中で、他社が比較的手をつけていないのがヨーロッパでした。当社は先んじて進出しました。
しかし、現地の食文化が根付いている国、たとえばフランスやイタリア、スペインなどでは醤油を中々受け入れてもらえませんでした。
おいしいものがある国にはあまり出番がありませんでしたね。北欧やドイツ、オランダなど多様な食文化を有する国から醤油の普及をスタートさせました。
【ナレーター】
地元群馬県に根ざす企業として、地域への貢献についても大切にしている要素のひとつだという。
【正田】
群馬県前橋市にあるサッカー場のネーミングライツを持っていること。個人的には地元の商工会議所の会頭や観光協会の会長など、地元のさまざまな役職を委嘱されています。
社会における立ち位置は小さな町ならではのものがあり、従業員を始めとした地元の方々に助けていただいている面もあります。地域との関わりや地域へ貢献することは、当社では大切にしていることです。
―視聴者へのメッセージー
【正田】
やりたいことをどうやって実現するかは、やはり結局は自分の中で解決していかなければならないことです。色々な人と関わりながら、自分の方向性を出していったらいいと思います。
やはりお天道様に申し訳ないようなことだけはしてはいけないのではないかなと。そのような基本的な倫理感などがある前提ですが、最終的には自分の人生は自分が決めていくことだと思うので。妥協もときには良いかもしれませんが、若いうちからは妥協しない方が良いと思いますね。