【ナレーター】
そして2018年、サトーホールディングスの代表取締役社長に就任。知られざるその裏側に迫った。
【小瀧】
とても突然で、当時は非常に驚きましたね。覚悟を決めるまでに2週間程の時間を要しました。
今後も継承すべき大事なことは、3つに集約できると思ったんですね。それが「凡事徹底」「連携」「挑戦」。
これらの言葉を社員が実際に意識してこだわって行動してくれることで、結果的にクレドを体現していることにもつながるし、大事にしないといけない企業文化を継承しながら体現している状態がつくれると思いました。覚悟を決めたときに、その3つを考えました。
【ナレーター】
「あくなき創造」。1969年に創業者が制定して以来、サトーの根幹を成す社是だ。小瀧はこの言葉をどのように捉え、昇華させていこうと考えているのか。
【小瀧】
「あくなき創造」とはお客様や現場の営業など対象となる人たちの期待を超えること。いわゆるイノベーションだと思います。
部品を組み合わせて新しいものを生み出したり、お客様や社員ができないと思っていることを実現したりすること。新しいものを生み出す発想と気持ちを持って取り組みなさいというメッセージだと捉えています。
私も大事にすることはもちろん、経営方針の中にもその文言を入れて、社員に伝え続けていきたいと思っています。
【ナレーター】
サトーには、全社員が、毎日、社長に3行で提案や報告をする仕組み「三行提報」がある。この仕組みがもたらす効果について、小瀧は次のように語る。
【小瀧】
すでに43年以上、続けている仕組みです。この「三行提報」によって社員が常に自分の仕事の俯瞰的に見ることができ、改善したらより良くなるという発想や、お客様のニーズを他の社員に伝えなければという問題意識が醸成されます。
「三行提報」によって市場のトレンドや社員が考えていることが理解できる他、普段気づかないような改善提案にも気づくことができます。経営判断をしていく上で、非常に重要な報になっていますね。
私も逆に「三行提報」を見て改善や要望をかけることもあります。例えば、他の会社がやらないような手当。非喫煙手当を新たに加えました。社員の日々の業務の改善は「三行提報」をきっかけに、小さな変化を繰り返すことにつながっています。
【ナレーター】
小瀧が描く、サトーグループの未来像とは。
【小瀧】
当社の強みであるタギングの技術をより磨くことによって、新しい領域のビジネスを生み出したいですし、ここで得られた情報を価値のあるものに変えて、その情報を活用することで、また新しい価値とビジネスを創出していく。
今行なっている左右上下の幅を広げていくことは非常に重要なポイントであり、これをしっかり長期戦略として据えてやっていきたいと考えています。
【ナレーター】
描いている未来の実現に向けて求める人材像について、小瀧は次のように語る。
【小瀧】
自身で考えて行動して変化を起こせるような人材が「求める人材像」です。
ただ、これは求めているばかりではダメで、会社としてシステムや制度などの働く環境の整備をしっかりして、会社と社員がお互いに協力し合い、能力をストレートに発揮できる人材が増えていくことを期待して取り組んでいきたいと思います。
―大事にしている言葉―
【小瀧】
「利他」という言葉を大切にしています。
メンバーの方に自身の考えを伝える時間や、メンバーの方の話を聞く時間など、そういう気持ちを持って接することがチームワークを上げるためには大事だし、ビジネスにおいても大事です。
相手の立場に立ってものを考えて、相手の立場に立って発言し、相手の立場に立って行動するということがいかに大事かということに気づかされた。私はそんな年代でもあります。
一般的にはよく使われている仏教用語でもありますが、私は「利他」の気持ちを持って行動したり、考えたりすることは非常に大事だと思っていますね。