株式会社山櫻 紙×SDGsで新たな付加価値を。老舗総合メーカーの挑戦 株式会社山櫻 代表取締役社長 市瀬 豊和  (2021年12月取材)

インタビュー内容

【ナレーター】
その後、キャリアを重ね、2004年に代表取締役社長に就任。当時の心境と芽生えた想いとは。

【市瀬】
創業者の祖父の次に社長に就任したのが私の叔父でした。叔父や役員には「将来、会社を僕に譲る前提であるならばできる限り早くしてほしい。導入した基幹システムや会社の人事の仕組み、組織も含めて手遅れになる」という話をしました。

役員と現場の社員のコミュニケーションが増えないと、会社を変えられないと感じていました。今でもそこには苦慮しています。

【ナレーター】
社長就任から4年後の2008年、製紙業界における古紙偽装問題が発覚し、これまで経験した中で最も困難だったと市瀬は語る。どのように乗り越えたのか、当時のエピソードに迫った。

【市瀬】
古紙40%や古紙100%の名刺を販売し「環境に貢献しています」とアピールしていたのに、古紙が入っていなかったのです。

当時は名刺へのクレームが最も多く、お客様からは「偽物だから全部やり直してください」というお声をいただきました。

一方で、「名刺としては使えるから、『古紙○%』という文字を消すシールを作ってきなさい」というお声もいただきました。

環境を考えることとは「無駄に捨ててはいけない。使えるものを使う」ということであると、改めて勉強になりました。

【ナレーター】
古紙偽装問題をきっかけに、様々な挑戦を経て真の環境保全に寄与する企業へと成長した山櫻。挑戦を結実させる秘訣について、市瀬は次のように語る。

【市瀬】
時代が変わる中、新しいことにチャレンジしないと未来はつくれない、経営者としてこうした思いを強く持っています。

これを支えているのが、ラグビーの経験でしょうね。努力すれば突破できることを知りました。本当に努力すれば報われますし、努力は裏切りません。

努力をすれば、100点満点ではないにしても、80~90点は絶対取れます。このことをあきらめずに社員に伝え、一緒に取り組んでいく。もう、それしかないですよね。

【ナレーター】
今後、取り扱っている約3500点の製品の95%をエシカル製品に変えることを目指す、山櫻。見据えている展望とは。

【市瀬】
お客様が山櫻の商品を買ったら、知らないうちに社会に貢献している。こんな商品群にしたいですね。

世界的な脱プラの流れを捉え、プラスチックに代わる紙の製品をつくっています。これは『rik skog(リークスクーグ)』というスウェーデン語で「豊かな森」という意味なのですが、こういったプラスチックの代替品をいろいろ企画しています。

また、メモやノートを中心とした『プラスラボ』という文具製品もすでに18カ国ぐらいで販売がスタートしています。

ちょっとした変化ですけれど、世にないメモやノートを世界で販売していきたいと思っています。

【ナレーター】
求める人材像について、自身と意見をぶつけ合うほどの気概があることを挙げた市瀬。その理由について次のように語る。

【市瀬】
仕事仲間で「目標を一緒に到達しよう」というとき、社員それぞれに自分の強い思いが生まれるはずなんですよ。それが正しいかそうでないかは別にして、ぶつけ合いたいですよね。

「会議で発言できないのは今のテーマについて真剣に考えていない。だから自らの主体的な意見が出てこないんだ」と、社員にはときどき言います。

結局、仕事は自分の成長の場ですから。結果は自分に戻ってきますので、我慢するのはもったいないですよね。

-大事にしている言葉-

【市瀬】
「継続は力なり」です。ビジネスでも人生でも「魔法の杖」というのはないんですよね。努力し続けられることが成果や成長になります。

あきらめることは誰でも簡単にできます。少しずつでもいいから、前進し、努力し続けるということが大切だということを伝えていきたいですね。

すべて自分の成長であり、自分の人生なので、僕が社長でいる限りは社員に伝え続けたいと思います。

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経営者プロフィール

氏名 市瀬 豊和
役職 代表取締役社長
生年月日 1962年12月17日
出身地 東京都
座右の銘 継続は力なり
略歴
1985年 慶應義塾大学法学部法律学科 卒業
1985年 第一勧業銀行 入行(現みずほ銀行)
1991年 株式会社 山櫻 入社
2004年 同社代表取締役社長就任
現在に至る
【その他】
株式会社トータル保険サービス 社外取締役、一般社団法人エシカル協会 監事、慶應義塾體育會蹴球部 黒黄会(OB会)理事長、一般社団法人静岡県ラグビーフットボール協会 理事

10歳から社会人まで17年間にわたりラグビーボールを追いかけ、高校日本代表、関東代表、日本選抜にも選出される。 山櫻では『すべての出逢いを未来の豊かさへつなぐため、いまを大切に輝き続ける企業を目指します』という企業理念を掲げ、名刺や封筒などを始めとした製品やサービスを通して、人と人、人と企業、企業と企業の出逢いをつなぐ事業を展開しています。特に、『SDGs=社会の持続可能な繁栄』に少しでも貢献できるよう、ザンビア(アフリカ)のオーガニックバナナの茎から作るバナナペーパーなどのエシカル製品を普及させることに力を注ぎ、地球・社会・経済・人の豊かさの創出へ向けてチャレンジしています。

会社概要

社名 株式会社山櫻
本社所在地 東京都中央区新富二丁目4番7号
設立 1948
業種分類 木材・木製品、パルプ・紙・紙加工品製造業
代表者名 市瀬 豊和
従業員数 505名(2024年2月現在)
WEBサイト https://www.yamazakura.co.jp/
事業概要 紙製品の製造・販売と付帯する事業、Webサービス事業、名刺・はがき作成システムおよびプリンター等の開発と販売、オリジナル文具の製造・販売と付帯する事業、フルフィルメント事業
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