【ナレーター】
明治時代の創業から100年以上に渡り、ガスや水道などのインフラを支える「株式会社山田商会」。
ガス工事を中心に、住宅リフォームから太陽光発電、エネファームまで、幅広い領域で事業を展開。
直営の工事部隊や直属の協力会社を駆使して自社施工にこだわるほか、社員とその家族がそれぞれのライフステージにおいて、多様な働き方を選択できる職場環境を整備。
災害時のガスインフラ復旧にも注力しており、「ガス・水道工事を通じて快適な生活環境を提供する」という経営ビジョンのもと、人々の暮らしの「あたりまえ」を守る企業として成長を続けている。
愛知発の老舗企業経営者が語る、インフラを支える企業の在り方と見据える未来像とは。
【ナレーター】
山田商会の成長を支える要素のひとつに「自社施工へのこだわり」を挙げた山田。この施策に込めた想いに迫った。
【山田】
仕事がない時期に固定費を払う必要はないですし、仕事を受注できればある程度利益はこれだけ見込める、というのはわかりやすいのですが、「下請けとしてやっていくという経営方針でいいのか」と考えたとき、根本的な解決になっていないのではないかと感じました。
私は「そのような構造が嫌だな」と思い、今まで引き継いできたこのスタイルをこれからも続けていこうと考えたのです。
「当社が事業を継続できているのも職人のおかげだ」という声は、社員から自然とあがっています。そうすると、営業職の社員は一生懸命仕事を取ってこようという気持ちになり、反対に現場の人たちは仕事を取ってきてくれたことに対して応えようという、いい循環が生まれています。
【ナレーター】
山田商会をけん引する、山田のキャリアスタートは東京の同業会社への出向だった。主にガス工事の設計や見積もり作成業務に従事していたが、想定外に苦労をしたと振り返る。
【山田】
社会人になって知識や技術は自分で身につけていったとしても、実際仕事を進めていく上ではいろいろな人の協力や調整が必要です。
年代の違う方が幅広くいたため、最初はコミュニケーションを取ることに苦労しましたね。設計の基準書を読めば見積もりはできますが、実際の現場を見るとどうしたらいいか、打ち合わせ時は苦労しました。
【ナレーター】
その後、山田商会に戻り、キャリアを積んでいった山田。同社はガスインフラを扱う企業としてライフラインを守るという使命感から、震災や洪水といった災害時の復旧活動に創業以来注力してきた。
山田自身も復旧現場の最前線に向かうことがあったという。その中で意識したことについて、次のように語る。
【山田】
東日本大震災の際は自分も現地に赴きました。震度6の余震があり、「こういう中で皆さん苦労されているんだな」と思いましたね。
どのようなことで困っているのか、どんな環境で仕事をしているのかを、実際目で確認しました。基本的には、社員には自ら手を挙げて被災地に行ってもらうのですが、現場に行く人が偏ってしまうと経験や技能が継承されないため、ある程度ベテランから若手までまんべんなく行ってもらえるように、と考えていました。
人も交代させてあげないと疲労も溜まりますし、物資も送っていましたね。やはり不慣れな土地に行く社員への心のケアは必要だと思います。
【ナレーター】
そして2020年に代表取締役社長へ就任。かねてから季節による工事量の繁閑の差に課題を感じていた山田が、就任時から取り組んでいることとは。
【山田】
忙しくないときに違う仕事ができるように、「多能工」という、他のいろいろな工事ができるようにする、という取り組みをかねてから進めております。
例えば、ガス工事と似たようなところを配管していく工事などもあるわけですね。給排水設備、お湯周りの管工事などです。
これを同時に施工するというのも効率化の一つかもしれませんが、あるときは水、あるときは排水、あるときは床暖房の設置など、いろいろな種類の工事をいつでもできるように取り組んでいます。