三立製菓株式会社 創業100年超の製菓メーカー ロングヒット商品を生み出した源泉 三立製菓株式会社 取締役社長 清水 康光　 (2022年11月取材)

【ナレーター】
2021年に創立100周年を迎えた老舗製菓メーカー「三立製菓株式会社」。

「お菓子を通して、お客様に安心と満足をお届けします」という経営理念のもと、『源氏パイ』『かにぱん』『チョコバット』『カンパン』などのロングヒット商品を生み出す。

近年では、商品企画を通じて、地域貢献や子どもたちへの食育・知育に携わる他、本社がある静岡県浜松市に新工場を竣工するなど、同社の新たな成長を担うブランドや事業づくりを推進している。

100年企業の次代を担う経営者の、伝統と変革に込めた想いと見据えている展望とは。

【ナレーター】
数々のロングセラー商品を生み出すことができた理由について「不易流行の精神」を挙げた清水。その真意とは。

【清水】
たとえば伝承で言いますと、当工場でつくっている『源氏パイ』は（当初から）卵と乳を使っていないんですね。もうひとつ『かにぱん』という商品も卵を使っていないんです。

やはりアレルギーのあるお子さんでも食べられるようにということで、現在も乳幼児などの食物アレルギーの原因となるものを使わないようにしているんですね。これがひとつ、お客様にご愛顧いただくうえで、大事にしていることかなと思います。

もうひとつ、戦時中は『カンパン』という商品を軍用食として使っていただいていたんですね。その後、『かにぱん』や『チョコバット』など、さまざまな商品を出してくんですけども、実はどれも原材料ってそんなに変わらないんです。どれも発酵技術を使った商品なんですね。

中身や配合は一緒でも、形や水分量、デザインも含めて色々な形に変わっていったということがあるんですね。

こういった発酵技術というものは伝承しながら、表面部分に関しては変革を繰り返しているという、この2つが重なり合ってロングセラー商品ができたのかなと思います。

【ナレーター】
三立製菓をけん引する清水は1996年に新卒で入社。企画開発部長、専務などを歴任し、2021年6月に社長へ就任した。当時、並々ならぬ想いを持ってあることに取り組んだと振り返る。

【清水】
私はもともと営業をやっていたんですけれども、商品の見本は発売する2～3ヶ月前に必要なんですね。しかし、当時はこの期限内になかなか見本を出してくれなかったんです。

「なぜ、このルールが守られないのだろう」と思い、誰がどういう工程で仕事をしているか調べ直したんですね。

開発部隊がものをつくって、それをラインに乗せて、開発から企画にバトンタッチされて、デザインを決めて食品標準を決めるという流れなんですけれど、どこの部分で遅れているのかっていうのをチェックするようにして、それを見える化したんです。

そうすることによって、従業員が迷わず行動できるようになりました。

【ナレーター】
挑戦に際し、清水は“4つの目”を大事にしているという。

【清水】
鳥の目、虫の目、魚の目、それからコウモリの目(※)。この4つの目を大事にしているんですね。
※
・鳥の目…対局を見る目
・虫の目…細部を見る目
・魚の目…タイミングを見る目
・コウモリの目…視点を変える目

ただ、4つの目をすべて持った人はいないので、それぞれの目を持った人材を集めて、組織して物事を解決していくことがやはり大事かなと。

その多様性が成長につながると思っています。

【ナレーター】
三立製菓の「三立」には、従業員、株主、経営者の3つと、製造者、販売者、消費者の3つがそれぞれバランスよく成り立つ経営を常に行うという思いが込められていると語る清水。この伝統を尊重しながらも、実現する方法は時代に合わせて変化させていく方針だ。

【清水】
従業員に関しては、やはりワークライフバランスですよね。

これから介護を含めて、ワークライフバランスが重要になってきますので、そこは力を入れてやっていきたいなということと。

あとはコンプライアンスをしっかり守っていこうということで、最近ですと、ESG推進部という部署を設けました。

どの部署にも属さない社長直轄の部署なんですけれども、社長も見られるということを認識しなければいけないということで、外部に監査役を置くなどして、今、進めております。