【ナレーター】
温室効果ガス排出量の算定から開示、報告、削減までを支援するソリューションを提供している「株式会社ゼロボード」。
同社が展開する『Zeroboard』は現在、2400社(※)を超える企業に導入され、国内上場企業におけるトップシェアを獲得。
※2023年5月時点。
2023年3月には約25億円の資金調達を実施し、初の海外現地法人をタイに設立した他、人事・労務関連やコーポレートガバナンスなども含めた、ESG全般の情報収集に向けたプロダクトの構想を発表するなど、創業からわずか2年余りでその事業領域を急拡大させている。
「気候変動を社会の可能性に変える」を企業理念に掲げ、挑戦を続ける経営者の軌跡と快進撃の裏側に迫る。
【ナレーター】
自社のビジネスモデルとその強みについて、渡慶次(とけいじ)は次のように語る。
【渡慶次】
当社では企業向けに、温室効果ガス排出量、また最近では温室効果ガス以外にも、水や土地の利用など、環境に対して企業が与えるさまざまな負荷のデータを集めて開示をするお手伝いをしています。
実は今、企業が開示を要求されるこれらの項目はますます増えていますし、関連する国際的なルールも次々に決まっています。
そのため、我々もそういったルールを注視しながら、企業に対するサポートの拡充を進めているところです。
専門人材による、それらのデータ算定の支援がしっかりと充実している点は、我々の大きな強みです。
「脱炭素」に向けた取り組みを一緒に進めていくパートナーのみなさん、たとえば、銀行、自治体、我々のお客様でもある各企業から温室効果ガス排出量のデータを集めてくることが、今後、当社の非常に重要な仕事になっていきます。
なぜなら、それらのデータの連携が発生するお客様、温室効果ガス排出量のデータを連携する先が多ければ多いほど、当社のサービスの利便性は高まっていくからです。
我々はこれを「ネットワーク効果」と呼んでいます。
この利便性を確保するために、パートナーのみなさんやお客様の獲得を非常に意識的に、先行して進められていることは、今後、当社のさらなる強みにつながっていくと考えています。
【ナレーター】
渡慶次の原点は転職で入社した総合商社にある。
外資系証券会社を経て、大手総合商社へ転職した渡慶次は、金融関連の部署に配属された後、ICTという情報通信技術に関する事業部へ異動。その中でエネルギー・ITといった領域にも携わるようになり、ここで得た経験が、後のゼロボードの事業着想につながったと振り返る。
【渡慶次】
以前から私に知見があった領域は、電力・エネルギー関連のデジタライゼーションやシステム化といったところで、起業前に勤務していた総合商社では、それらの領域をメインにさまざまな事業をつくっていました。
そんな中で自社のソリューションを独自につくろうと考えたとき、もともと知見があった「エネルギー・IT」と、私の最初のキャリアである「金融」という得意分野2つの中で起こせる事業ということで、企業向けに温室効果ガス排出量の算定をお手伝いするソフトウェアをクラウドサービスで提供する現在のビジネスモデルに行き着いた経緯があります。
【ナレーター】
その後、サービスの設計・開発を続け、2021年8月、株式会社ゼロボードを設立。ビジネスとして成立するのか、周囲からは疑問の声が上がったが、昨今、加速する脱炭素化の動きを見て、渡慶次はこのビジネスモデルに確信を抱いていた。
【渡慶次】
2021年の春にこのサービスを発表したときは「それはビジネスになるの?」とか「温室効果ガス排出量ってどうやって算定するの?」「煙突にセンサーでも付けて測るの?」といった懐疑的なご質問をいろいろと受けました。
ただやはり、私自身は、カーボンニュートラルに向けて世界中が動き出しているという大きな流れを感じていましたし、きっとこれがトレンド化し、必須のビジネスになっていくだろうという直感がありました。
そこで起業し、仲間を集めながら事業を拡大してきたのが、この2年間です。起業当時から「このビジネスモデルはきっと大きなマーケットに成長するため、うまくいくだろう」という確信はありました。
【ナレーター】
2021年7月にベータ版をリリースしたクラウドサービス『Zeroboard』は、わずか2年たらずで2400社を超える企業に導入され、順調に推移させることに成功した。
この成功をもたらした、渡慶次が意識している考えとは。
【渡慶次】
私自身の失敗談も踏まえてのことですが、「人と同じことをやっていても、なかなかうまくいかない」とは考えています。
これは私のような経営者に限らず、どのようなポジションや役回りの人であっても同じで、自らの仕事に自分のエッセンスや個性を注入し、パフォーマンスを最大限発揮することできっと良い仕事につながっていくと思うわけです。
人は人生の中で仕事に長い時間を割きます。せっかく多くの時間を使うのであれば、単に業務をやらされる、やらなくてはいけない業務をやって終わりということではなく、その中で自分の成し遂げたいことを実現したり、自分らしさのようなものを表現できたりしたら、きっとより一層面白く働いてもらえるだろうと思います。
ですから、会社の中でそれぞれの人が最大限のパフォーマンスを発揮でき、楽しく仕事をしてもらえるような環境づくりを最も意識して経営を行うように心がけています。